警察学校を「専門学校」と勘違いする若者が増えている理由
~採用試験と教育訓練の違いを正しく理解しよう~
ここ数年、「警察学校を受験したいのですが偏差値はどれくらいですか?」「警察学校ではなく、一般の大学卒の警察官もいるんですか?」といった質問を、インターネット上で頻繁に見かけるようになりました。
かつては常識だった「警察官採用試験に合格して初めて警察学校に入る」という流れが、若い世代の間で正しく理解されなくなっているようです。
なぜ、情報化が進んだ現代にこのような“逆行現象”が起きているのでしょうか。
1.進路が「学校中心」になった時代背景
現在の高校生や大学生の多くは、進路といえば「大学」か「専門学校」という選択肢の中で考えます。
「美容師になりたい→美容専門学校」「看護師になりたい→看護学校」というように、“職業=進学先”でつながる時代です。
その延長で、「警察官になりたい→警察学校という専門学校があるのでは?」と自然に考えてしまう若者が増えています。
しかし実際には、警察学校は就職後に入る訓練機関です。
まず、各都道府県警の「警察官採用試験」に合格して警察官として採用され、初任科教育を受ける場所が警察学校なのです。
2.ネット検索の“情報ノイズ”
インターネットで「警察学校」と検索すると、上位には「警察官を目指す○○専門学校」や「公務員予備校」の広告が並びます。
これらは民間の教育機関であり、実際の警察学校とは別物です。
ですが、検索結果だけを見ると「警察学校=進学先」と誤解しやすく、特にSNS世代ではその違いが意識されにくくなっています。
3.教育現場で公務員試験の説明が減った
近年の高校では、進路指導の中心が「大学進学」に偏っています。
そのため、「採用試験を経て職に就く」という公務員の仕組みを学ぶ機会が少なくなっています。
昭和・平成初期のように、「就職=採用試験」「警察官は試験合格後に学校で訓練」という構造を学校で教わることが、ほとんどなくなっているのです。
4.「学校」という言葉が招く誤解
「警察学校」という名称自体にも誤解の原因があります。
多くの人にとって“学校”は「入学して学費を払う教育機関」を指すため、
“採用後に国家公費で訓練を受ける施設”という本来の意味が伝わりにくいのです。
実際には、警察学校は大学でも専門学校でもなく、警察官として採用された職員の教育訓練施設です。
同様に「自衛隊幹部候補生学校」「消防学校」「税務大学校」なども“学校”と名がついていますが、いずれも採用後の職員教育機関です。
5.SNS動画の影響
YouTubeやTikTokなどでは「警察学校の一日」「警察学校での生活」といった動画が人気ですが、
採用試験や任命の過程はあまり紹介されません。
そのため、視聴者は「入学した学生たちが生活している場所」と誤解してしまうことがあります。
6.情報過多の時代に欠けている“体系的理解”
現代の若者は、情報の量には恵まれていますが、
「全体の仕組み」を体系的に理解する機会が少なくなっています。
その結果、「警察官になりたい=警察学校に入学すればいい」といった誤った結論にたどり着いてしまうのです。
まとめ
警察学校は「警察官になるために通う学校」ではなく、
「警察官として採用された後に、警察官としての基礎を学ぶ研修施設」です。
インターネットで情報が氾濫する時代だからこそ、
正確な制度や仕組みを知ることが重要です。
特に公務員を目指す方は、「進学」と「採用試験」の違いを正しく理解しておきましょう。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。


