警視総監の息子が警視庁を数年で辞めた理由【元刑事のコラム】
「警察官になると寮に入らなければならないのか?」
「警視庁の独身寮は厳しいって本当?」
こうした疑問を持つ方は少なくありません。
結論からいうと、警視庁では警察学校を卒業して警察署に配属されると、妻帯者を除いて原則として単身寮(独身寮)に入る仕組みになっています。もっとも、その寮生活の実態は時代によって大きく変わっています。
私が警察学校を卒業した1992年当時の警視庁の独身寮は、現在の感覚ではかなり過酷な環境でした。
1990年代の警視庁独身寮は“集団生活”が当たり前だった
当時は、警察官の独身寮といえば2人部屋、3人部屋が当たり前でした。新人警察官、特に一番若い下っ端には、自分の布団を敷ける程度のスペースしか与えられないことも珍しくありませんでした。
しかも、寮には年齢制限がほぼなく、30代半ばの先輩警察官(いわゆる“大班長”クラス)が普通に居住していました。
そのため、新人警察官には次のような雑務が回ってくることもありました。
- 寮内の掃除
- 先輩の洗濯
- 制服のアイロンがけ
- 飲み会の買い出し
- 宴会後の後片付け
夜になるとどこかの部屋で宴会が始まり、若手警察官が駆り出されるのが日常でした。
ひどいケースでは、先輩から紙に「1万円」と書かれたものを渡され、
「これでビールとつまみ買ってこい」
と言われるような話までありました。もちろん紙切れでは買い物はできませんから、実質的には自腹です。
こうした昭和的・体育会系の空気は、漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所(こち亀)』の初期作品にも描かれており、当時を知る人には珍しい話ではありません。
警視総監の息子が退職…警視庁の寮改革のきっかけ
当時、私より1〜2年先輩だった警察官の中に、警視総監の息子がいたという話を聞いたことがあります。
その警察官も一般の新人警察官と同じように警察署勤務となり、独身寮で生活していました。
「警視総監の息子だから目をつけられたのではないか」との噂もありましたが真相は不明です。ただ、その警察官は寮での厳しい生活に耐えきれず、勤続2〜3年で退職したといわれていました。
この話をきっかけに、警視庁上層部が寮の実態を調査し、改革が進んだとされています。
警視庁の寮改革で何が変わったのか
寮改革では、主に次のような見直しが進められました。
- 概ね30歳を超えた警察官は退寮
- 一人部屋化の推進
- 新人への雑用押しつけ禁止
- 理不尽なしごき文化の是正
施設の都合もあり、一人部屋化はすぐには完了しませんでしたが、運用面の改革は比較的早く進みました。
現在の警察官の寮生活はかなり改善されている
現在の警視庁の独身寮は、私の時代とはかなり違います。
一人部屋化が進み、昔のような過密な相部屋生活は大幅に減りました。寮での強制的な宴会文化もほぼ消えています。
実際、警察学校卒業後まもない若い警察官に、
「寮では先輩と飲んでるの?」
と聞いたところ、
「一度も飲んでませんが?」
とキョトンとした顔で返されたことがあります。
時代が変わったことを実感した瞬間でした。
まとめ|警察官の寮生活は昔より大きく改善
警察官の寮生活というと、厳しい上下関係や理不尽なしごきをイメージする方もいるかもしれません。
確かに1990年代の警視庁では、そうした側面があったのは事実です。しかし現在はコンプライアンス意識の高まりもあり、環境はかなり改善されています。
「警察官になったら寮生活が地獄」というイメージは、少なくとも昔ほど当てはまらなくなっているといえるでしょう。
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淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
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告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
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