ガサ現場から犯人に逃走された話【元刑事のコラム】
O署刑事課で勤務していた頃、他の係の刑事たちが経験した、今でも語り草になっている出来事があります。家宅捜索(捜索差押)中に犯人が逃走した実話です。
その日、捜査員4名が、ある被疑者の自宅マンション(3階)へ向かいました。目的は捜索差押許可状による家宅捜索です。
警察の捜査では、証拠品の押収を目的に家宅捜索を行い、その後に逮捕状を執行して通常逮捕するケースもあります。この案件もまさにその流れでした。家宅捜索を終えた後、被疑者を警察署へ護送する予定だったのです。
ところが、捜索の途中で被疑者が突然こう言いました。
「刑事さん、もう観念しました。実は俺、チャカ(拳銃の隠語)を持っています。押し入れの天袋にあります」
その一言で、現場の空気が一変しました。
拳銃の所持は重大犯罪です。警察にとって違法拳銃の押収は非常に大きな成果であり、捜査員の評価にも直結します。
捜査員の一人が踏み台を持ってきて押し入れの天袋を確認すると――
「あっ!」
驚きの声が上がりました。
他の刑事も駆け寄って確認すると、そこには拳銃らしきものが次々と並んでいました。1丁どころではありません。7〜8丁もの拳銃が見つかったのです。
現場の刑事たちは一気に興奮状態になりました。
「これは大手柄だ」
そんな空気になったのでしょう。捜査員たちは次々に拳銃を取り出し、確認を始めました。
しかし、その直後――
また一人の刑事が叫びました。
「あっ!」
今度は何かと思えば、その刑事が青ざめた顔で一言。
「ホシがいない!」
被疑者が消えていたのです。
なんと、刑事たちが拳銃に気を取られている隙に、被疑者は静かに玄関から逃走していました。
慌てて窓から外を見ると、道路を全力疾走で逃げる犯人の姿。
刑事たちもすぐに追いかけましたが、間に合いません。完全に逃げ切られてしまいました。
さらに追い打ちをかけるように、押収した拳銃を詳しく確認すると――
すべて精巧に作られたモデルガンだったのです。
完全に犯人の作戦勝ちでした。
犯人の巧妙な逃走計画
当然、このままで終わるわけにはいきません。
その日から逃走犯の追跡チームが編成され、連日の行方追跡が始まりました。
幸い、約1か月後に犯人の居場所が判明し、無事に逮捕となりました。
その後の取調べで、犯人はこう供述しました。
「警察がいつか来ると思っていた。逃げるために、あらかじめモデルガンを買って天袋に置いておいた」
最初から警察の心理を読んで、逃走計画を立てていたのです。
刑事の鉄則「犯人から目を離すな」
刑事の世界には、こんな言葉があります。
「ホシは飛ぶもの、逃げるもの」
「ホシ」とは警察の隠語で被疑者のこと。
被疑者は逃げるだけではありません。
- 証拠を隠す
- 証拠を壊す
- 薬物などを飲み込む
- 共犯者へ連絡する
- とっさに暴れる
こうした行動は十分に想定しなければなりません。
だからこそ、犯人から絶対に目を離さないことが刑事の基本中の基本です。
それでも、ベテラン刑事4人が見事に引っかかってしまった。
警察の現場でも、こうした“まさか”は本当に起きるのです。
○警察への告訴状・告発状の作成は元警視庁刑事の行政書士にお任せください。こちら
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


