消防署内放火事件【元刑事のコラム)

私がF警察署に勤務していた頃の実話です。F警察署の隣にはF消防署があり、毎日のように消防隊員たちが厳しい訓練を行っていました。

一般の方はあまり知らないかもしれませんが、消防隊員の仕事は、火災や救助などの現場出動だけではありません。実際には、火災発生件数はそれほど多くなく、警察署のように毎日多くの一般市民が相談や届出で訪れるわけでもないため、消防署では日常的に厳しい訓練が大きな業務の一つとなっています。

そんなF消防署で、ある日まさかの事件が発生しました。

消防署内で火災発生…燃えたのは消防隊員のロッカー

ある日、隣のF消防署から大声で怒号のような指示が飛び交い、その声はF警察署内にもはっきり聞こえてきました。

「何事だ?」

そう思っていると、F消防署内で火災が発生したとの情報が入りました。

火元は、消防署の更衣室内にある個人ロッカーでした。幸い早期発見だったため、大規模な火災には至らず、ロッカー1台が焼けただけで消し止められました。

しかし問題は、「なぜ火が出たのか」でした。

警察と消防による現場検証…原因は放火の可能性

消防署から連絡を受け、F警察署の刑事課員が現場に臨場しました。

現場を確認しましたが、周囲に火の気はありません。電気系統の異常も見当たらず、自然発火の可能性も低い状況でした。

その後、警察と消防が合同で現場調査を実施した結果、結論は極めて重いものでした。

「放火の可能性が極めて高い」

という判断です。

消防には火災原因調査の権限はありますが、刑事事件としての捜査権はありません。そのため、消防側から警察に正式な捜査依頼があり、鑑識による指紋採取など本格的な捜査が始まりました。

消防署内の内部犯行か? 犯人は特定できず

問題だったのは、現場が消防署内部、それも部外者が簡単に立ち入れない更衣室だったことです。

つまり、放火犯がいるとすれば、消防署内部の関係者である可能性が極めて高いということになります。

捜査の過程で見えてきたのは、消防組織特有の厳しい上下関係でした。

当時の話では、日々の厳しい訓練の中で、いわゆる「しごき」のような人間関係のトラブルがあり、火をつけられたロッカーの使用者が周囲から恨みを買っていた可能性があるとの情報もありました。

しかし、最終的に犯人を特定する決定的証拠は見つからず、この消防署放火事件は未解決のまま終わりました。

消防署長が警察署長に平謝り…消防にとって最大級の不祥事

この件で特に気の毒だったのはF消防署長でした。

何度かF警察署を訪れ、そのたびにF警察署長に対して深々と頭を下げて謝罪していました。

当然です。

消防の使命は「火を消し、人命を守ること」です。その消防署の内部で、しかも消防隊員による放火の疑いがあるとなれば、組織として極めて深刻な不祥事です。

警察官による万引きや痴漢なども決して許されるものではありませんが、消防隊員が放火に関与するとなれば、社会的インパクトはそれ以上だったのかもしれません。

15年後も語り継がれていた消防の不祥事

この出来事から約15年後、私は他県の消防士にこの話をしたことがあります。

すると驚いたことに、その消防士は研修か教養の場でこの事件の話を聞いたことがあり、すでに知っていました。

それだけ、この消防署放火事件は消防の世界では衝撃的な出来事として広く共有されていたのでしょう。

まとめ|消防署で起きた信じがたい放火事件

消防署で起きた火災と聞けば、普通は事故や設備トラブルを想像するかもしれません。

しかし実際には、内部の人間関係が背景にある放火の疑いという、極めて異例の事件も存在します。

元刑事として数多くの事件を見てきましたが、「火を消す側の人間が火をつける」という構図は、今でも強く記憶に残っています。

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淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。

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