消防署内放火事件【元刑事のコラム)
F警察署に勤務していたときの話です。F警察署の隣にはF消防署があり、毎日毎日消防隊員が厳しい訓練を続けていました。話がそれますが、消防隊員の現場出動回数は警察の現場臨場回数に比べて極端に少なく(火災の通報は数日~週に1回程度です)、また消防署を訪ねてくる一般人の数も警察署のそれと比べて大幅に少ないことから、消防隊員の仕事のほとんどがひたすら訓練なのです。
そんなF消防署である日大騒ぎが起きました。消防隊員が大声で何か指示を出しているのがF警察署内にもはっきり聞こえてきました。F消防署内で火災が発生したのでした。燃えたのは、更衣室内の個人ロッカーでした。早くに発見されたので、個人ロッカー一つが燃えただけで消火されました。すぐにF警察署にも連絡があり、刑事課員が臨場しましたが、周囲に火の気はなく、原因がわかりません。その後の警察・消防による現場調査の結果、原因は「放火しかあり得ない」ということになりました。部外者が入れる場所ではないので、犯人は当然消防署内部の者ということになります。消防から警察に対して正式な捜査依頼があり(消防に捜査権は一切ありません)、指紋を採るなどの鑑識作業が行われましたが、結果的に犯人はわからずじまいで終わりました。一つわかったのは、毎日の厳しい訓練の中で、上下関係に伴うしごきがあり、火を付けられたロッカーの使用者がうらみを買っていたらしいとのことでした。
気の毒だったのはF消防署長で、何度かF警察署を訪ねてきては、F警察署長に対して平身低頭平謝りでした。火を消すべき消防にとって、署員が火つけをするというのは絶対にあってはならないことであり、しかもそれが消防署内であったことから、消防の世界では非常に大きな問題となったのでした。15年後、この放火の話を他県のある消防士に話したところ、何かの教養の際に聞いたということで既に知っていました。警察官が万引きしたり、痴漢をしたりというのもあってはならないことですが、消防隊員が放火をするというのは、それ以上に重大な不祥事だったようです。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
