刑事と生活安全、なるならどっち?【元刑事が解説】

 警察学校を卒業すると警察署に配置され、全員交番勤務からスタートします。その後、実績を上げ、上司から認められれば、刑事や生活安全になるための講習に行かせてもうらうことができます。この二つの部署ですが、似ている部分もあれば全く異なる部分もあり、一概にどちらがいいと言えません。それぞれに長所と短所がありますので、両方経験した者として(生活安全は本部のみ)、解説したいと思います。

刑事
○長所
ほとんどの警察署で、生還安全課より課員数が多い。←何かあったときに人数が多いほうが楽
警察組織の中では花形的存在である。
扱う法令が刑法メインなので捜査手法などが確立されていることが多い。
○短所
変死を扱わないとならない。
解剖に立ち会わないとならない。
殺人事件があると捜査本部を立ち上げないとならないことが多い。
火災を扱わないとならない。
ケンカ・万引き・無銭飲食・DVなど現行犯逮捕事案が多い。
被害届・告訴状・告発状など被害申告を受ける数が多く、受理後はその捜査に当たらないとならない。
選挙があると捜査本部を立ち上げないとならない。

生活安全
○長所
変死・火災など「汚い」「危険」「臭い」取り扱いが刑事より少ない。
殺人・強盗・航空機や列車事故など凶悪・大規模事件を扱うことは少ない。
○短所
扱う法令数は何百とあり、中には検挙事例がほとんどないものもあり、違反になるかならないかの判断に手間がかかる上に捜査手法も確立されていないことがある。
刑事を花形とするとやや裏方のイメージがある。
刑事課に比べれば人数が少ないことが多く、一人あたりの負担が大きい。
暴れたり自死しようとする精神疾患者を扱わないとならない。
事件とならないDVを扱って、女性をシェルターに入れるなど何らかの結末を付けないとならない。
古物営業・風俗営業・銃砲所持などの許認可事務がある。
少年事件を扱わないとならない(同じような事件でも成人事件に比べて作成しないとならない書類が多い)。
電車内などで発生した痴漢事件を扱わないとならない。

総括
 このように刑事と生活安全とでは細かい違いが多数ありますが、あえて一言で違いをいえば、「変死(死体)扱いがあるかどうか」に尽きると思います。実際、生活安全に入った人の多くが「変死扱いがないから生活安全を選んだ」と言います。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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