国会議員による秘書給与詐欺について【元刑事が解説】
国会議員による秘書給与詐欺事件は、過去に何度も社会問題となってきました。有名な事例としては、辻本清美議員の秘書給与問題がありますが、その後も数年おきに同様の疑惑や事件が報じられています。にもかかわらず、現在でもこうした不正が発覚するケースがあることに驚かされます。
秘書給与詐欺はなぜ発覚しやすいのか
国会議員の事務所が入る議員会館の内部を見たことがある方は少ないかもしれませんが、実際にはホテルの客室のような構造になっています。通路を挟んで両側に議員事務所が並び、それぞれの事務所には窓もあります。
このため、日常的に勤務している人であれば、どの議員事務所に何人の秘書が出勤しているかは自然とわかってしまいます。
例えば、ある国会議員が公設秘書を6人登録しているにもかかわらず、実際に毎日出勤しているのが4人しかいなければ、「残り2人は実態のない“幽霊秘書”ではないか」と疑われても不思議ではありません。
特に、対立する政党の議員事務所が近くにあれば、その情報がマスコミや捜査機関への通報につながることも十分あり得ます。
元刑事が関わった秘書給与詐欺事件
私自身、警視庁勤務時代に一度だけ、国会議員の秘書給与詐欺事件の捜査に関わったことがあります。
被疑者は某主要政党の現職国会議員でした。当然ながら、通常の刑事事件とは異なり、取り調べの場所ひとつ取っても慎重な対応が求められました。
通常であれば警察署の取調室で事情聴取を行います。しかし、現職代議士を警察署で取り調べるのは適切ではないという判断から、千代田区にある警察関連施設の会議室が使用されることになりました。
また、通常の事件であれば警部補クラスの捜査官が担当するケースが多いのですが、この案件では「現職国会議員の取調べを警部補に任せるのは適切ではない」との判断から、警視庁捜査二課の警部が担当しました。
国会議員の取調べは一般事件とどう違うのか
実際に立ち会って感じたのは、一般的な刑事事件の取調べとは雰囲気が大きく異なることでした。
通常の詐欺事件の取調べであれば、厳しい追及が行われる場面もあります。しかし、このときは終始穏やかな雰囲気で進み、短時間で終了しました。いわゆる“取調べ”という緊張感はほとんどありませんでした。
これは、被疑者の社会的立場や事件の性質による特殊な対応だったと言えるでしょう。
結局、不起訴になった理由
問題となったのは、公設秘書として給与を受け取っていた人物が、実際には勤務実態があるのかどうかという点でした。
捜査の結果、その秘書は「全く勤務していない幽霊秘書」ではなく、月に数回は実際に出勤していたことが確認されました。
そのため、「完全な架空給与の受給」とまでは認定できず、詐欺罪としての立件は困難と判断され、最終的には不起訴となりました。
まとめ|秘書給与詐欺は政治不信につながる重大問題
国会議員による秘書給与詐欺や幽霊秘書問題は、単なる金銭トラブルではありません。税金が原資となる公設秘書給与に関する問題だけに、国民の政治不信を招く重大な問題です。
一方で、刑事事件として立件するには「実態が全くないこと」を明確に立証する必要があり、疑惑があっても必ずしも有罪や起訴につながるとは限りません。
元刑事として言えるのは、“怪しい”と“犯罪として立証できる”の間には大きな壁があるということです。
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淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
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「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
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