警察官の武器使用について【元刑事が解説】
警察官職務執行法第7条により、警察官は武器の所持と使用が許されています。外勤制服警察官(交番勤務員、パトカー乗務員等)が常に装備しているのは、けん銃と警棒、催涙ガスです。手錠も装備していますが、手錠は逮捕した被疑者の身柄を拘束するための器具なので武器ではありません。これ以外には、警杖(けいじょう)と呼ばれる長さ1.3メートルほどの木製の棒、盾、刺股(さすまた)などもあります。これらは常時持ち歩くのは不可能なので、交番やパトカーに準備してあり、必要なときだけ取り出して使用します。
刑事など、私服員は普段武器は持ち歩きません。ガサに行ったり、逮捕しに行くときだけ、状況に応じてけん銃や特殊警棒を持参します。
これらの武器ですが、私は32年間の警察人生で、一度も使用したことがありません。けん銃はもちろん、警棒もです。これは決して珍しいことではなく、私の知っている警察官の中で、けん銃を実際に犯人に向かって撃ったことがある人は一人もいません。警棒で犯人を殴ったという人も2、3人しかいません。正確な統計は知りませんが、定年まで勤めてけん銃を撃ったことがある警察官の率は、1000人に1人くらいではないでしょうか。警棒はそれよりはずっと多く数十人に一人くらいかと思います。警杖や盾、刺股は普段持っていないので、警棒よりもっと少ないと思います。
武器を使ったことがない警察官が多いということは、それだけ日本が諸外国と比べて治安が良いということであり、日本が誇っていいことだと思います。ネット上では、たまに「日本警察もアメリカのようにテーザー銃を使えばいいのに」という意見を目にしますが、日本の現場の警察官にそうした要望はありません。現状のけん銃、警棒、催涙ガスで十分対応可能だからです。むしろ、テーザー銃を使った結果、心臓病などの持病がある人が亡くなるようなことがあれば、世論の批判を浴びるでしょうし、撃った警察官は一生寝覚めが悪い思いをすることになるでしょう。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
