決して他人ごとではありません。 犯罪被害者を支えるには?
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2024年7月17日
決して他人ごとではありません。 犯罪被害者を支えるには?
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(画像:犯罪被害者等支援シンボルマーク「ギュっとちゃん」)
もしも、自分自身や周囲の人が犯罪被害に遭ってしまったら…。犯罪の被害を受けた人は、犯罪によって傷つけられるだけでなく、事件が解決した後も様々な問題を抱えることになります。犯罪の被害に遭った人が一日も早く平穏な暮らしを取り戻すためには、周囲の人たちが、犯罪被害者等(※)が置かれた状況を理解することが大切です。
※犯罪被害者等基本法における「犯罪被害者等」とは、犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為により、害を被った者及びその家族又は遺族をいいます。
目次
コラム
1犯罪被害は自分に関係ない?
犯罪被害を受ける可能性は、誰にでもあります
犯罪被害に遭う人は特別な人ではなく、社会で普通に暮らしている人たちです。その平穏な暮らしの中で、犯罪は突然起きるのです。
犯罪被害者等が、その受けた被害を回復し、又は軽減し、再びそれぞれの平穏な暮らしを取り戻せるように配慮していくことは、誰もが犯罪被害者等になり得る中で、社会全体として取り組むべき課題です。そのためには、周囲の人たちが、被害者の置かれた状況をよく理解し、被害者に配慮した対応を心がけることが大切です。
2犯罪被害者等が受ける被害とは?
精神的ショックや経済的困窮、捜査・裁判の負担や、うわさ話・報道などによる被害
犯罪の被害者やその遺族・家族には、事件による直接的な心身の被害以外にも様々な被害が降りかかることが少なくありません。
一つは、精神的ショックや身体の不調があります。大切な家族を突然奪われた場合の衝撃については言うまでもありませんし、生命を失わないまでも、暴力などを受けたときの記憶は、その後も長い間、被害者を苦しめることになります。
そして経済的に困窮することも珍しくありません。家計を担う人を失った場合、遺族は深刻な問題に直面します。また、犯罪によってけがをした人や精神的な支援が必要になった人には治療費の負担がのしかかります。治療や療養が長引いて長期間仕事を休まなければならない場合もありますし、そのために失職や転職を余儀なくされる場合もあります。また、後遺症のために従来どおりの仕事ができなくなる場合もあります。
これらにより、ローンや家賃を払いきれなくなるために、不動産や自動車などの財産を売却したり、より安い住まいに引っ越したりするなど、これまでの生活を変えざるを得ないことがあります。
身体に危害を加えられなくとも、空き巣の被害者はいつまた住まいに侵入されるか不安に悩むことがありますし、詐欺の被害者は金銭的損害とともに自分自身を責めることが珍しくありません。また、性犯罪の被害者は、心に深い傷を負い、日常生活を送れなくなる人が少なくありません。
捜査や裁判の過程における負担もあります。その過程では被害を受けた際の様子を詳細に思い起こして語ったり、証拠物件があればそれについて説明したりすることが必要ですが、犯罪被害者等にとっては、大きな精神的負担となることもあります。
また、犯罪等の被害を受けたことが周囲に知られた場合、そのこと自体が犯罪被害者等の負担になることがあります。心ないうわさ話などで悩む人もいます。
「頑張って」や「早く忘れなさい」など、周囲の人にとっては慰めや励ましのつもりの言葉や行為でも、逆に被害者を傷つけてしまうことがあります。
犯罪被害による心身への影響
犯罪の被害を受けた後は、心や身体に変調を来すことが少なくありません。場合によっては日常生活に影響が出るほど深刻なこともあります。
心理面への影響の例 | 感覚や感情がまひする 記憶力、判断力の低下 恐怖感、不安感、自責感、無力感、絶望感、孤独感、疎外感、屈辱感、怒り、悲しみなどを抱く |
---|---|
身体面への影響の例 | めまい・過呼吸・動悸・下痢・便秘 不眠・悪夢 吐き気・食欲不振 |
心身への影響の具体例 | 人混みが怖くて外に出られず、自宅に引きこもる 何でもないのに涙が出るなど感情がコントロールできない こどもが親の後をいつもついてきて離れない |
トラウマによる症状の例 | 事件等の記憶が生々しく蘇ったり、その夢を見たりするなど、そのときの苦痛を繰り返し体験する 事件等のことを思い出せなかったり、必要以上に長く自分や他人を責めたりする いつもびくびくしたり、物事に集中できなかったりする |
※このような反応は、時間とともに軽くなっていく場合もありますが、日常生活に支障を来している場合は、医療機関等に相談することを勧めることも重要です。
3犯罪被害者等のために、どんな支援があるの?
経済面や住居面など様々な支援策があります。
犯罪被害者やその家族、遺族が再び平穏な生活を取り戻すことを助けるために、様々な支援策が設けられています。
まずは、犯罪被害者等が初めに関わる警察における支援をご紹介します。
警察における犯罪被害者等支援
犯罪被害者等への配慮及び情報提供
- 警察相談専用電話「#(シャープ)9110番」の設置
- 性犯罪被害相談電話
- 「#(シャープ)8103(ハートさん)」の設置
- 性犯罪相談窓口への女性警察職員の配置
- パンフレット「被害者の手引」(注1)の作成・配布
- 被害者連絡の実施(注2)
精神的被害回復への支援
- カウンセリングに関する専門的知識や技術を有する職員の配置
- 精神科医や民間のカウンセラーとの連携
- 犯罪被害者等のカウンセリング費用の公費負担制度
犯罪被害者等の安全の確保
- 再被害防止措置の実施(関連情報の教示・連絡体制の確立防犯指導、緊急通報装置の貸与等)
- 再被害防止に向けた関係機関との連携
犯罪被害者等支援推進のための基盤整備
- 被害者用事情聴取室や被害者支援用車両の活用
- 指定被害者支援要員制度(注3)の積極的活用
国民の理解の増進
- 犯罪被害者等支援に関する各種広報啓発活動の実施
- 教育委員会等の関係機関と連携した講演会「命の大切さを学ぶ教室」の開催
- (注1)刑事手続の概要、捜査へのご協力のお願い、犯罪被害者等が利用できる制度、各種相談機関・窓口等の情報を掲載しています。
- (注2)犯罪被害者等の意向等に応じ、捜査状況や逮捕被疑者の処分状況等を連絡しています。
- (注3)あらかじめ指定された警察職員が、犯罪被害者等支援活動を推進する制度です。
犯罪被害給付制度の概要
犯罪被害給付制度とは
この制度は、殺人などの故意の犯罪行為により不慮の死を遂げた犯罪被害者の遺族又は重傷病若しくは障害という重大な被害を受けた犯罪被害者のかたに対して、社会の連帯共助の精神に基づき、国が犯罪被害者等給付金を支給し、犯罪被害等を早期に軽減するとともに再び平穏な生活を営むことができるよう支援するものです。
犯罪被害者等給付金の種類
犯罪被害者等給付金には、遺族給付金、重傷病給付金及び障害給付金の3種類があり、いずれも国から一時金として給付金が支給されます。
支給額
給付金の支給額は、犯罪被害者の年齢や勤労による収入の額などに基づいて算定されます。
ただし、犯罪被害者にも原因がある場合や親族間での犯罪(親族関係が破綻していたと認められる事情がある場合等を除く)などには、給付金の全部又は一部が支給されないことがあります。また、労災保険などの公的補償を受けた場合や損害賠償を受けたときは、その額と給付金の額が調整されます。
遺族給付金 | 犯罪被害者の収入とその生計維持関係遺族の人数に応じて算出した額○一定の生計維持関係遺族がいる場合:2,964.5万円から872.1万円(生計維持関係遺族に8歳未満の遺児がいる場合は、その年齢・人数に応じて上限額に加算)○上記以外の場合:1,210万円から320万円 犯罪被害者が死亡前に療養を要した場合は、負傷又は疾病から3年を経過するまでの保険診療による医療費の自己負担相当額と休業損害を考慮した額の合計額を加算した合計額を加算 ※第一順位の遺族が二人以上いるときは、その人数で除した額 |
---|---|
重傷病給付金 | 負傷又は疾病から3年を経過するまでの保険診療による医療費の自己負担相当額と休業損害を考慮した額 上限額:120万円 |
障害給付金 | 犯罪被害者の収入と残った障害の程度に応じて算出した額○重度の障害(障害等級 第1級から第3級):3,974.4万円から1,056万円○上記以外:1,269.6万円から18万円 |
次に、裁判となった場合の支援は次のとおりです。
裁判における犯罪被害者支援
損害賠償命令制度
殺人、傷害などの故意の犯罪行為の被害者等から被告人に対する損害賠償命令の申立てがあったときには、刑事事件について有罪の言い渡しをした後に、当該損害賠償請求についての審理・決定ができる制度です。
被害者参加制度(犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度)
殺人、傷害など故意の犯罪行為や過失運転致死傷などの被害者等が、一定の要件の下で刑事裁判に直接参加することを可能とする制度です。そして、犯罪被害者等が日常生活を送るための支援です。
詳しくは、法務省「公判段階での被害者支援」
そして、犯罪被害者等が日常生活を送るための支援です。
地方公共団体における犯罪被害者支援
地方公共団体においては、犯罪被害者等からの問合せ・相談があった場合に総合的な対応を行う窓口(総合的対応窓口)を設置しています。
また、犯罪被害を受けたために、住まいを変えることになる犯罪被害者等も少なくなく、そうした人たちのために、公営住宅への入居を無抽選としたり入居要件を緩和したりする地方公共団体があります。
さらに、上限を30万円程度とする見舞金の支給制度や生活資金の貸付制度を設けている地方公共団体もあります。
詳しくはこちら
また、民間の団体も全国で活動しています。
民間の団体における犯罪被害者支援
ただ、こうした支援があっても、犯罪による被害者等のダメージの全てを回復できるわけではありません。犯罪被害によって大切な人を奪われれば、遺族はその人とともに歩めたであろう様々な未来を失います。犯罪被害によって心身に深い傷を負ったり障害が残ったりすれば、それらと向き合って生きていくことになります。
そうした被害者やその家族・遺族に寄り添い、彼らが平穏な生活を取り戻すためには、周囲の配慮も重要です。
4周囲の人はどのように接すればよい?
犯罪被害に遭った人が置かれた状況を理解して接することが大事
もしも、不幸にして自分の身近な人が被害に遭ったら、私たちはどのように向き合えばいいのでしょうか。
周囲の人の言動によって、犯罪被害者等は心が楽になったり落ち込んだりします。例えば、彼らを元気づけるために「がんばって」「忘れなさい」「運が悪かった」とかけた言葉も、励まされる人もいる一方で、逆に傷ついてしまう人もいます。
言葉で励ますよりも、ふだんどおりに接して寄り添うことが、彼らがゆっくりと心の傷を癒し、平穏な生活を取り戻す手助けになることもあります。
「もしも、自分や身近な人が被害に遭ったら?」。そんなことは考えたくないことですが、そんなふうに自分に置き換えて考えてみてください。残念ながら、どんな人でも犯罪の被害に遭ってしまう可能性があるのです。犯罪被害に遭った人に接するときには、彼らが置かれた状況や心情を理解し、その人の気持ちに寄り添って、配慮するようにしましょう。
犯罪被害者等支援のための施策や相談窓口などはこちらから。
警察庁では、ホームページ「犯罪被害者等施策」を通じて、犯罪被害者等やその支援者に向けて様々な情報を提供しています。こちらでは、被害者や支援者の声、支援のための主な施策、被害者の支援体制や支援団体などの情報が公開されています。
犯罪被害者等の支援にご関心のある人は是非ホームページをご覧ください。
また、犯罪被害者等施策に関する情報を発信するフェイスブックもありますので、そちらも併せてご覧ください。
警察庁「犯罪被害者等施策」ホームページ
コラム
11月25日から12月1日は「犯罪被害者週間」です
毎年11月25日から12月1日までの1週間は「犯罪被害者週間」です。この週間では、犯罪被害者等が置かれている状況、また、犯罪被害者等の名誉や生活の平穏への配慮の重要性などに対する国民の理解を深めるため、様々な啓発活動が全国各地で実施されます。
詳しくは、警察庁「犯罪被害者週間」をご覧ください。
(取材協力:警察庁 文責:政府広報オンライン)
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淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。