告訴事実の書き方17(信用毀損罪)【元刑事が解説】

 信用毀損罪とは?名誉毀損罪との違いや成立要件を解説

信用毀損罪とは、虚偽の風説(うわさ)を流したり、偽計を用いたりして、個人や法人の信用を傷つけた場合に成立する犯罪です。ここでいう「信用」とは、主に 支払能力・支払意思商品の品質 に関する社会的信頼を指します。

信用毀損罪と名誉毀損罪の違い

信用毀損罪と名誉毀損罪はよく混同されますが、保護法益が異なります。

  • 名誉毀損罪:名誉(社会的評価)を保護する
  • 信用毀損罪:経済的な信用(支払能力・商品の品質)を保護する

例えば、「○○社長は人使いが荒くて社員がかわいそう」という噂を流しても、経済的信用を直接損なうものではないため、信用毀損罪には該当しません。

信用毀損罪の成立要件

  1. 虚偽の情報であること
    • 名誉毀損罪は「真実か虚偽かを問わず事実の摘示が必要」ですが、信用毀損罪は 「虚偽」であることが条件 です。
    • 事実無根である場合はもちろん、部分的に虚偽の情報でも成立します。
    • 例えば、実際の製品の欠点を指摘することは虚偽ではないため、信用毀損罪には当たりません。
  2. 人または法人の信用を毀損すること
    • 「信用」とは、経済的取引や商取引に関わる社会的信頼を意味します。
  3. 非親告罪であること
    • 名誉毀損罪や侮辱罪は親告罪(被害者の告訴が必要)ですが、信用毀損罪は 非親告罪 であり、告訴がなくても立件される可能性があります。
  4. 未遂は処罰されない
    • たとえ信用を毀損しようとした行為が未遂に終わった場合、罪には問われません。

まとめ

信用毀損罪とは、経済的な信用(支払能力や商品の品質)に関する虚偽情報を流布し、個人や法人の社会的信頼を損なう犯罪 です。名誉毀損罪とは異なり、虚偽の情報であることが成立条件であり、非親告罪であるため告訴なしでも起訴される可能性があります。

 信用毀損罪の告訴事実記載例です。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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