無銭飲食(食い逃げ)はすべて詐欺罪になる?飲食店が知っておくべき境界線【元刑事が解説】

飲食店経営者の方であれば、「無銭飲食=詐欺罪」というイメージをお持ちの方も多いかと思います。しかし実は、客が飲食した後に代金を支払わずに逃げたからといって、すべてのケースで詐欺罪が成立するわけではありません。

詐欺罪は、刑法犯の中でも構成要件の立証や判断が非常に難しい犯罪の一つです。

どのようなケースであれば詐欺罪として警察に立件を求められるのか、客の行動パターン(態様)別に4つの具体例を挙げて解説します。

ケース1.最初から支払う意思がなく、お金も持たずに入店した場合

  • 結論:詐欺罪(刑法246項1項)が成立する可能性が高い

客が財布やスマートフォン(クレジットカード、交通系ICカード等)を所持しておらず、最初から代金を支払う意思がないにもかかわらず、店員を欺いて注文・飲食した場合です。 この場合、「支払う意思があるフリをして注文した行為」そのものが欺罔行為(人を騙す行為)とみなされるため、基本的には詐欺罪が成立します。

ケース2.食べ終わった後に「今逃げれば払わなくて済む」と思いつき、無言で立ち去った場合

  • 結論:詐欺罪は成立しない

入店時には支払う意思があり、十分な所持金もあったものの、食後にレジが無人であることに気づき、「このまま店を出ればタダになる」ととっさに思いついて立ち去ったケースです。 詐欺罪の成立には「騙す行為(欺罔行為)」が不可欠ですが、このケースでは店員を騙すアクションがどこにもないため、詐欺罪での立件は困難です。

ケース3.「ATMでお金を下ろしてくる」と嘘をついて逃亡した場合

  • 結論:詐欺罪(2項詐欺罪・財産上不法利益取得罪)が成立する可能性が高い

入店時には支払う意思があったものの、いざ会計という段階になって「店員を騙して逃げよう」と思いつき、レジで「手持ちが足りないので、近くのコンビニATMで下ろしてくる」と嘘の理由を告げて店員の承諾(支払いの猶予)を得て、そのまま逃亡したケースです。 店員を騙して「一時的に店外に出る許可(財産的な利益)」を得ているため、詐欺罪が成立します。

ケース4.レジの隙を見て、無言のままダッシュして逃げた場合

  • 結論:詐欺罪は成立しない

入店時には支払う意思があった客が、レジの店員が目を離した隙や、高齢の店員であることを見て「今なら逃げられる」と判断し、無言のまま店外へダッシュで逃亡したケースです。 こちらもケース2と同様に、店員を「騙す」という行為が行われていないため、詐欺罪には該当しません。

まとめ:無銭飲食の立件が難しい理由

このように、結果として同じ「無銭飲食(食い逃げ)」であっても、客の「入店時の心理状態」や「逃げる際の言動」によって、詐欺罪になるケースとならないケースに分かれます。

詐欺罪が「刑法犯の中で最も立件(現行犯逮捕や被害届の受理)が難しい」と言われる理由はここにあります。さらに実際の現場では、犯人は身柄を確保された後に「財布を忘れただけ」「後で払うつもりだった」「友だちが後から来て払ってくれるはずだった」などと必ず嘘をつくため、事後的な判断はより一層難しくなります。

万が一のトラブルに備え、飲食店としては防犯カメラの設置や、不審な言動があった際のメモ(車のナンバーや特徴)を残すなどの初動対応が重要です。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。

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