告訴と告発の関係について【元刑事の意見】
「告訴と告発の違いがよく分からない」
「被害者でなくても警察に訴えることはできるのか?」
刑事事件に関する相談で、このような疑問を持つ方は少なくありません。
刑事訴訟法では、告訴と告発の両方が定められています。
- 刑事訴訟法230条:犯罪被害者は告訴することができる
- 刑事訴訟法239条:誰でも犯罪があると思うときは告発できる
一見すると、「誰でも告発できるなら、告訴制度は不要では?」と思うかもしれません。
しかし、実務の現場を経験した立場から見ると、この2つには重要な違いがあり、特に告発制度には現実的な問題点もあります。
告訴と告発の違いとは?
まず、基本的な違いを整理しましょう。
告訴とは
告訴とは、被害者や一定の関係者が、犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示です。
特徴:
- 被害者本人や法定代理人などが行う
- 処罰を求める意思が必要
- 親告罪では告訴がなければ起訴できない場合がある
告発とは
告発とは、被害者以外の第三者を含め、犯罪があると思った人が捜査機関に処罰を求めることです。
特徴:
- 被害者でなくても可能
- 原則として誰でもできる
- 犯罪の捜査と処罰をもとめる
つまり、
告訴=被害者側による処罰要求
告発=第三者を含む処罰要求
という違いがあります。
なぜ告訴と告発の両方があるのか?
刑事訴訟法239条では「誰でも告発できる」とされています。
そのため、
「それなら被害者による告訴制度はいらないのでは?」
と思えるかもしれません。
その理由の一つが、親告罪の存在です。
親告罪とは、被害者などの告訴がなければ検察官が起訴できない犯罪のことです。
もっとも、以前は性犯罪の一部が親告罪でしたが法改正で大きく変わりました。
そのため、昔と比べると、告訴と告発を厳密に分ける実益は減っている面もあります。
元刑事が感じる告発制度の問題点
現場経験者として、私が疑問を感じるのは、告発制度の自由度が極めて高いことです。
刑事訴訟法239条は、極めて広く告発を認めています。
つまり、理屈の上では、
- 近所から電波攻撃を受けている
- ネット記事を見て誰かが犯罪者だと思った
- 被害者が処罰を望んでいない事件
こうしたケースでも告発自体は試みられてしまいます。
もちろん、実際にすべてが正式な事件として進むわけではありません。
しかし、制度上の入口が広いことは事実です。
被害者が処罰を望まない事件で告発は意味があるのか?
ここは実務上、非常に重要なポイントです。
例えば、
- 被害者が「もう関わりたくない」
- 犯人の処罰を希望していない
- 捜査への協力を拒否している
このようなケースで第三者が告発しても、実際の立件は極めて困難です。また起訴される可能性も事実上ゼロです。
なぜなら、刑事事件では、
- 被害者の事情聴取
- 証拠提出
- 現場確認
- 供述の裏付け捜査
などが必要になるからです。
被害者が協力しなければ、事件化は難しくなります。
結果として、
「最初から成立困難な事件」に大量の捜査リソースが割かれる
という問題が起きます。
告発制度の悪用リスク
現実には、制度を誤解したり、悪用したりするケースもあります。
例えば、
- 週刊誌の記事だけで告発状を送る
- 根拠の乏しい思い込みによる申告
- 苦情や嫌がらせ目的の告発
こうした対応にも一定の人的コストが発生します。
警察や検察のリソースは無限ではありません。
本当に救済が必要な被害者の事件対応に影響する可能性もあります。
告訴・告発を検討している方へ
告訴と告発は似ているようで、実際には目的も意味も異なります。
特に、
- 確実に刑事手続きを進めたい
- 警察にきちんと受理してもらいたい
- 告訴状を適切に作成したい
という場合は、制度の違いを正確に理解することが重要です。
まとめ|告訴と告発の違い
告訴
- 被害者などが行う
- 処罰意思が必要
- 親告罪では重要
告発
- 第三者でも可能
- 犯罪の処罰要求
- 入口が広すぎて、実務上の課題もある
法律上の制度設計と、実際の捜査現場の運用にはギャップがあります。
元刑事としては、告発制度について、一定の条件や制限を課すべきだと思います。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


