警察官の深刻ななり手不足について【元刑事のコラム】
ここ数年、警察官採用試験の応募者減少および内定辞退者の増加が深刻な社会問題となっています。
すでに複数の道府県警で定員割れが発生しており、警察組織の基盤そのものが揺らぎ始めています。
特に注目されているのが、**警視庁**の待遇改善です。
警視庁では、
- 大卒モデル初任給を年収657万円規模へ引き上げ
- 学生時代の奨学金を肩代わりする制度を導入
といった、従来の「公務員」の枠を超える破格の条件を提示しています。
これは、警察官のなり手不足が一時的ではなく、構造的・危機的状況にあることを示しています。
警察官不足がもたらす社会的リスク
一般的な役所、たとえば市役所や県庁で人員不足が起きた場合、
- 窓口対応の遅延
- 申請処理の長期化
といった「行政サービスの低下」にとどまるケースが大半です。
しかし、警察官の人数不足は次元が異なります。
- 空き交番の増加
- 110番通報時の警察官到着時間の延長
- 現場対応力(執行力)の低下
といった形で、市民の生命・身体に直結する危険を生み出します。
「110番しても1時間来ない社会」の現実味
仮に、今まさに人が襲われている現場で110番通報をしたにもかかわらず、
警察官の到着まで1時間かかるとしたらどうなるでしょうか。
- 被害者は重傷を負う
- 所持金や貴重品を奪われる
- 犯人はすでに遠方へ逃走し、行方不明
――「本来なら助かったはずの市民が助からない社会」が現実になりかねません。
これは決して誇張ではなく、警察官不足が進行すれば十分起こり得る事態です。
合格率上昇による「質の低下」という別の問題
受験者数が減少すれば、警察組織は合格率を上げざるを得ません。
その結果、
- これまでなら採用されなかったレベルの人材も合格
- 人数だけでなく質も同時に低下
という悪循環に陥る可能性があります。
人数が減り、かつ質も下がれば、
犯罪者にとって有利な社会構造が出来上がってしまいます。
コロナ禍と警察官不人気の関係
報道によれば、警察官志望者が大きく減少した時期は、コロナ禍と重なっているとされています。
これは現場を知る立場から見ても、強く実感される点です。
多くの若者は、家庭内で
- 父母や兄姉が在宅ワークに移行する姿
- 「感染すれば死ぬ、重い後遺症が残る」と恐れられていた社会状況
を目の当たりにしてきました。
その中で、
- 在宅ワークが不可能
- 危険な状況でも必ず出勤しなければならない
警察・消防といった職業は、
「割に合わない」「リスクが高すぎる仕事」と映った可能性があります。
実際、コロナ禍においては、警視庁本部の一部職員が在宅勤務となった一方、
警察署勤務員では在宅勤務はほぼ皆無でした。
感染による欠勤者が相次ぎ、交番やパトカーの配置が組めない事態も発生していました。
少子化と警察官のなり手不足は長期化する
日本社会全体で少子化が進行している以上、
警察官のなり手不足は今後も長期化する可能性が高いと考えられます。
将来的には、
- 帰化した外国人の警察官採用
- 採用制度・職務内容の抜本的見直し
といった議論を避けて通れない時代が来るかもしれません。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。


