よくあるご質問(Q&A)
(告訴状・告発状作成について)
-
告訴と告発と被害届の違いは何ですか?
-
被害届とは?
何らかの犯罪被害に遭い、警察に届け出る際によく使用されるのが「被害届」です。特に、自転車盗や置き引きなどの比較的軽い犯罪の場合、交番でも被害届を提出できます。地域課の警察官が被害者から事情を聞き、その場で作成してくれます。
警察署が被害届を受理すると、原則として捜査義務が生じますが、必ずしも事件を検察庁に送致する義務はありません。そのため、防犯カメラの映像がない、目撃者がいない、証拠がないといった場合、被害届はファイルに綴じられて倉庫行きとなります。盗まれた自転車や財布を持っている人物が職務質問などで捕まるか、自ら出頭しない限り、被害届は再び日の目を見ることはありません。
告訴・告発との違い
「告訴」や「告発」は、被害届とは異なり、警察は事件を必ず送致(または送付)する義務が生じます。当然、捜査義務も発生します。そのため、被害届が「こういう犯罪がありました」と届け出るだけなのに対し、告訴・告発は「この事件を捜査し、犯人を送致し、厳しく処罰してください」と強く求めるものとなります。これは、ある意味で警察に対する「捜査命令書」のような役割を果たします。
告訴と告発の違い
- 告訴:犯罪の被害者自身が行うもの。
- 告発:被害者以外の第三者も行うことができるもの。
例えば、AさんがBに殴られた場合、Aさんが暴行罪でBの処罰を求めるのが「告訴」です。一方で、この暴行を目撃していたCさんがBの処罰を求めるのが「告発」となります。
親告罪と一般の告訴
告訴には2種類あり、「一般の告訴」と「親告罪の告訴」があります。
- 親告罪の告訴 刑法上、「告訴がなければ公訴を提起できない」とされる犯罪が該当します。例えば、名誉毀損罪や器物損壊罪、過失傷害罪などが含まれます。これらの犯罪は、被害者が告訴しなければ、逮捕・送致されたとしても検察官が起訴できません。
- 一般の告訴 傷害罪、詐欺罪、窃盗罪など、親告罪以外の犯罪に対する告訴です。被害者が告訴することで、警察は捜査を進め、犯人を見つけ次第取り調べを行い、事件を検察庁へ送致します。
まとめ
被害届は犯罪の発生を警察に報告する手段ですが、必ずしも捜査が行われるわけではありません。一方で、告訴や告発は警察に対して捜査と送致を義務付けるため、より強い法的効果を持ちます。特に、犯罪の証拠がある場合や厳しく処罰したい場合は、被害届ではなく「告訴」の手続きを取ることが重要です。
-
告訴はどこに出したらいいのですか?
-
告訴の方法と提出先|警察と検察庁の違い
告訴は、警察署または検察庁に提出することになります。しかし、基本的に検察庁は、政治家や公務員による汚職事件や重大な犯罪など、マスコミで大きく報道されるような大型事件を除いて告訴を受理しません。例えば、一般的な暴行事件である「AさんがBに殴られた」といったケースで検察庁に告訴状を提出しても、「第一次捜査権は警察にあるため、警察署に行ってください」と案内されるのが通常です。
警察署に告訴を提出する際のポイント
告訴を行う場合、どこの警察署に提出すべきかが重要になります。基本的には、事件発生場所を管轄する警察署に提出するのが原則です。
法律上は、どの警察署でも告訴状を提出することが可能ですが、最終的に事件発生場所を管轄する警察署が捜査を担当するため、最初から管轄警察署に相談することが、告訴人と警察双方にとってスムーズな対応につながります。
インターネット上の名誉毀損など、発生場所が不明な犯罪の告訴先
インターネット上での名誉毀損や誹謗中傷など、物理的な事件発生場所が特定できないケースでは、告訴人が住んでいる地域を管轄する警察署に告訴状を提出するのが一般的です。
警察本庁舎への提出も可能
警察署だけでなく、各都道府県警察の本庁舎(例:警視庁なら霞が関)にも告訴状を提出できます。ただし、本庁舎は平日のみの業務対応であり、休日は最低限の人員のみが待機しているため、平日以外に訪問しても相談を受けてもらえない可能性があります。そのため、平日に訪問することが必須です。
まとめ
- 告訴は警察署または検察庁に提出するが、一般的な犯罪では警察署が対応する。
- 事件発生場所を管轄する警察署に提出するのが最もスムーズ。
- インターネット犯罪(名誉毀損など)は告訴人の居住地の警察署に提出する。
- 都道府県警察の本庁舎でも提出可能だが、平日のみ対応のため注意が必要。
- 賃金不払いなど労働基準法に関する告訴は労働基準監督署の扱いになります。
-
告訴状作成の依頼ができるのは弁護士、司法書士、行政書士と聞いたのですが何が違いますか?
-
告訴状の提出先と専門家の選び方
告訴状の提出先は「検察庁」または「警察署」のいずれかです。しかし、提出できる専門家には違いがあります。
告訴状の提出先と専門家の対応
- 弁護士:検察庁と警察署の両方に告訴状を提出可能。
- 司法書士:検察庁に提出可能。
- 行政書士:警察署に提出可能。
検察庁は、政治家の汚職、公務員の不正、脱税など特定の事件のみ受理します。例えば、ケンカで殴られた傷害事件の告訴状を持って行っても「第一次捜査権は警察にあるため、警察に提出してください」と言われることが一般的です。
弁護士が有利な理由
- どちらにも提出可能:検察庁・警察署のどちらにも対応。
- 法律業務の対応範囲が広い:司法書士や行政書士にはできない業務も可能。
- 検察官との交渉が可能:検察官は弁護士との協議には応じるが、司法書士・行政書士には対応しない。
費用の比較
弁護士に依頼すると、
- 告訴状作成費
- 受理報酬
- 起訴(有罪)報酬
などを含め、総額で100万円近くかかることもあります。
一方、
- 司法書士・行政書士に依頼すると、数万円~20万円程度で済みます。
告訴状の提出先と専門家の選び方のポイント
- 提出先の確認:事件の種類によって、検察庁か警察署かを判断。
- 予算に応じた選択:コストを抑えたい場合は司法書士・行政書士が選択肢。
- 確実性を求めるなら弁護士:専門的な対応が必要なら弁護士が適任。
告訴状の作成・提出を検討する際は、予算や事件の性質を考慮して適切な専門家を選びましょう。
-
知人にお金を預けていたところ持ち逃げされてしまったのですが何罪になるかわかりません。告訴できますか?
-
横領罪・詐欺罪・窃盗罪の違いとは?刑事事件の正しい判断基準
横領罪か詐欺罪か?判断に迷うケースとは
刑事事件において、横領罪か詐欺罪かで悩むケースは非常に多く見受けられます。また、横領罪と窃盗罪、窃盗罪と詐欺罪の違いについても、判断に迷うことが少なくありません。
例えば、いわゆる「詐欺盗」と呼ばれる犯罪では、加害者が被害者に話しかけ、嘘をついて注意を逸らし、その隙に金品を持ち去る行為が見られます。この場合、被害者が自ら加害者に財産を渡したわけではないため、詐欺罪ではなく窃盗罪が適用されます。
配達用バイクの持ち逃げは窃盗罪か横領罪か?
新聞販売店などで、配達用の原付バイクを従業員が持ち逃げするケースもよくありますが、これは状況によって窃盗罪か横領罪かが分かれます。
- 窃盗罪が適用されるケース:バイクが販売店内に厳重に管理され、配達専用としてしか使用できない場合、従業員がバイクを持ち逃げすると窃盗罪となります。
- 横領罪が適用されるケース:従業員がバイクを自由に利用でき、通勤や休日の移動手段として使える状況であれば、持ち逃げした場合は横領罪に該当します。
会社のお金を着服した場合の罪名
社員が会社のお金を着服すると、状況に応じて窃盗罪、横領罪、業務上横領罪、詐欺罪の4つの罪名が考えられます。
- 窃盗罪:経理担当ではない社員が会社の金庫から現金を抜き取った場合。
- 横領罪:一般社員がたまたま経理担当から夜間金庫への入金を頼まれた際、その現金を私的に使った場合。
- 業務上横領罪:会社資金を管理する経理担当者などが、自己の目的で資金を消費した場合。
- 注意:横領罪(5年以下の懲役)より業務上横領罪(10年以下の懲役)のほうが刑罰が重く、公訴時効も異なるため、罪の適用には十分な注意が必要です。
- 詐欺罪:一般社員が虚偽の支払伝票を作成し、事情を知らない経理担当者から現金を請求・受け取った場合。
- さらに、私文書偽造罪や同行使罪にも該当する可能性があります。
- 経理担当者が事情を知った上で加担した場合、一般社員は横領罪、経理担当者は業務上横領罪となり、共犯関係が成立します。
罪名の判断は当職にご相談を
一見単純に見える犯罪行為でも、適用される罪名が異なる場合が多々あります。刑事事件ではこうした判断が日常的に行われますが、一般の方にとっては判断が難しいことがほとんどです。
刑事事件の適切な擬律判断や告訴状の罪名特定についてお困りの際は、当職までご相談ください。長年の刑事経験を活かし、正確な判断をもとに適切な対応をサポートいたします。
-
親しくなったお医者さんから「新たに病院を開院するのに資金が足りない。僻地で困ってる患者さんのためなので開業資金を貸してほしい」と言われて1,000万円を渡したところ連絡が取れなくなり、調べたところニセ医者だとわかりました。しかし、何の文書も交わさず、録音もありません。告訴できますか。
-
物的証拠がなくても詐欺告訴は可能です
詐欺事件の告訴を考えている方にとって、警察が受理してくれるかどうかは大きな関心事です。一般的に「物的証拠がなければ警察は動かない」と思われがちですが、実際には証拠がなくても告訴が可能なケースがあります。
実際の詐欺事件:物的証拠なしで犯人逮捕・有罪判決へ
私が刑事時代に担当した詐欺事件では、物的証拠がないにもかかわらず、告訴が受理され、最終的に犯人を逮捕し有罪判決を得ることができました。
詐欺の手口
犯人は建設会社の社長で、被害者が経営するスナックに通いながら「国境なき医師団の医師」と偽り、海外での活動について語ることで信用を得ていました。そして、ある日「海外活動の資金が一時的に不足している。すぐに返すので1,000万円を貸してほしい」と持ちかけ、完全に信じ込んでいた被害者は、犯人の指定口座に1,000万円を振り込んでしまいました。
ところが、その後犯人は店に現れず、電話にも出なくなったため、被害者が調査したところ偽医者であることが判明。そこで警察に相談に来ました。
物的証拠なしでも告訴が受理された理由
犯人は医師の名刺を配ったわけでもなく、借用証や領収書もありませんでした。しかし、次のような捜査手法を用いることで証拠を積み上げ、告訴を成立させました。
- 関係機関への照会
- 日本医師会および国境なき医師団日本支部に確認し、犯人が医師免許を持っておらず、国境なき医師団にも関係していないことを証明。
- 証言の確保
- 常連客の中に捜査協力者を見つけ、犯人が「医師である」と発言していた状況の供述調書を作成。
- デジタル証拠の解析
- 被害者の携帯電話から犯人とのメールを抽出し、「医師としての話題」を含む内容を整理・解析して報告書を作成。
- 資金の流れの解明
- 振り込まれた1,000万円の行方を追跡し、ほぼ全額が下請け業者に送金されていたことを突き止め、金の使途を明確化。
犯人逮捕と有罪判決の経緯
こうした証拠をもとに検察と協議した結果、最終的に告訴が正式に受理され、警察は捜査を開始。住居不定の犯人を発見し逮捕しました。
犯人は当初「酔っ払っていたので医者だと言ったかどうか覚えていない」と否認。しかし、
- 被害者が記憶していた詐欺の手口
- メールのやり取り
- 目撃者の証言
などの証拠を積み上げた結果、ついに「医者と嘘をついて1,000万円を騙し取り、督促されていた下請け業者への支払いに使った」と自供。有罪判決へと持ち込むことができました。
物的証拠がなくても詐欺の告訴は可能!
この事例からわかるように、借用書や領収書がない場合でも、刑事の工夫と捜査次第で犯人を処罰することができます。
もし、警察の告訴相談で「物的証拠がないので受理できない」と言われたら、
- 関係者の証言を集める
- デジタル証拠(メール・LINEの履歴)を整理する
- 資金の流れを分析する
といった方法を駆使し、警察に具体的な証拠を提示することが重要です。諦めずに警察と協力し、詐欺犯を追及しましょう!
- 関係機関への照会
-
警察はなかなか告訴を受理してくれないと聞きますが本当ですか?
-
元刑事が解説!警察が告訴を受理したくない理由とは?
警察が告訴を受理すると、事件を必ず送致しなければならないため、大きな業務負担が発生します。これは刑事の現場にとって避けたい状況の一つです。以下、その具体的な理由を詳しく説明します。
告訴受理の義務と捜査の負担
警察が告訴を受理すると、時効が成立するまでに事件を送致する義務が生じます。つまり、告訴は「捜査(送致)命令書」のようなものであり、これを受けた警察は捜査を続けなければなりません。
例えば、犯人の身元や居場所が特定されており、逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合、警察は裁判所から逮捕状や捜索差押状を取得し、逮捕・家宅捜索を行い、検察庁に送致します。しかし、犯人が特定されていない、または所在が不明の場合、警察は時効が成立するまで捜査を継続しなければなりません。
時効は罪名によって異なり、
- 器物損壊罪:3年
- 詐欺・窃盗:7年
- 傷害:10年
これだけの長期間、犯人を追い続けることは警察にとって大きな負担となります。
告訴取り下げがあっても送致義務は継続
告訴事件では、告訴人と被告訴人の間で示談が成立し、告訴人が取消状を提出することがあります。しかし、告訴が取り下げられたとしても、警察の送致義務は消えません。
受理した以上、送致しないという選択肢はなく、「捜査を尽くした」上でなければ検察官は送致を受け付けません。そのため、告訴取り下げ後も被告訴人の取り調べなどの手続きを行う必要があり、警察の負担は軽減されることはありません。
告訴事件だけではない刑事の業務
刑事の仕事は告訴事件の捜査だけではありません。例えば、多忙な警察署では110番通報が一日何十件、多いときには数百件も発生し、日常的に犯人の逮捕・取調べが行われています。
逮捕後は48時間以内に送致する必要があり(実際には48時間もない)、事件の処理を迅速に行わなければなりません。さらに、送致後も検察官から追加の捜査指示が入るため、事件にかかりきりになることが多く、その間に告訴事件の処理が滞ることもあります。
変死事件の対応と刑事の負担
さらに、刑事の業務には変死事件の対応も含まれます。変死とは、病院で医師に看取られた場合を除く、すべての死亡事案を指します。
特に人口の多い地域では変死事件が頻繁に発生し、刑事は現場に急行して遺体の状況を詳細に調査します。その後、遺体を署に持ち帰り霊安室で見分を行い、状況によっては大学病院で解剖を実施します。解剖の結果、事件性が認められれば、殺人や傷害致死事件として捜査本部が設置されることになり、刑事課の人員が捜査に専従することになります。
こうした業務が重なると、普段告訴事件を担当する刑事が引き抜かれ、告訴事件の捜査が停止状態になることもあります。それでも新たな告訴事件の相談は続き、業務が積み重なっていきます。
なぜ警察は告訴を受理したくないのか?
以上のように、告訴を受理すると警察には莫大な業務負担がかかります。そのため、現場の刑事としては、なるべく告訴を受理したくないという心理が働くのです。
本記事では、元刑事の視点から警察の実情を解説しました。警察の対応に疑問を持つ方は、こうした背景を理解していただければと思います。
-
告訴にかかる費用は幾らくらいですか?
-
告訴状の作成を弁護士・行政書士に依頼する場合の費用と違い
告訴状の作成を専門家に依頼する場合、弁護士と行政書士では費用や対応範囲が異なります。それぞれの特徴を比較し、あなたに最適な依頼先を選びましょう。
弁護士に依頼する場合の費用
弁護士に告訴状の作成を依頼すると、一般的に以下の費用が発生します。
- 着手金:40万円
- 受理報酬:20万円
- 起訴報酬:20万円
さらに、交通費などの実費も別途請求されることがあります。弁護士は告訴状の作成だけでなく、示談交渉や裁判対応も可能なため、費用は高額になりがちです。
行政書士に依頼する場合の費用
行政書士に依頼した場合、数万円~20万円程度が相場です。一部の行政書士は受理報酬を設定している場合もありますが、それでも弁護士に比べれば費用を抑えられます。
ただし、行政書士には弁護士のような交渉権がなく、裁判所に提出する書類も作成できません。告訴状は警察署に提出する書類のため作成可能ですが、被告訴人との示談交渉は不可となります。
弁護士と行政書士、どちらを選ぶべき?
- 費用を抑えたい場合 → 行政書士がおすすめ
- 示談交渉や裁判も視野に入れる場合 → 弁護士が適切
ご自身の予算や依頼したい業務の範囲を考慮して、適切な専門家を選びましょう。当事務所では告訴状・告発状の作成を6万6000円からお引き受けしております。成功報酬や実費などは一切いただきません。
告訴状提出時の追加費用について
告訴状の提出に際し、警察署では印紙代などの費用は不要です。したがって、専門家への依頼費用以外の追加コストは一切かかりません。
-
告訴状は自分で作成できますか?
-
できますが、慣れていない人が作成した告訴状が警察棟に受理される可能性は非常に低いと考えられます。
告訴状の基本要件と警察の受理の厳しさ
告訴状には決まった書式はありませんが、告訴人の住所・氏名・年齢・連絡先電話番号、犯罪事実、被告訴人の人定事項(不明なら「不詳」でも可)、被告訴人に対する処罰意思を記載する必要があります。しかし、実際には弁護士が入念に作成した告訴状でさえ、受理されないことがあります。慣れていない人が作成するリスク
告訴状を作成したことのない方が、ネット上の情報を参考に自己流で作成した場合、プロの刑事から見ると内容に不備が多く、「あれがダメ」「これがダメ」と厳しい指摘を受ける可能性が高いです。その結果、警察から受理されず、捜査してもらえない事態に陥ることも考えられます。警察に告訴状を受理してもらうためには?
確実に告訴状を受理してもらうためには、刑事事件に詳しいl告訴のプロに依頼することをおすすめします。告訴のプロが作成する告訴状は、法的根拠が明確で、警察が受理しやすいように整理されています。まとめ
警察に告訴状を受理してもらうためには、適切な書式と内容の整備が必須です。ネット情報をもとに自己流で作成すると、警察に指摘され、受理されないリスクが高まります。確実な告訴を目指すなら、告訴のプロに相談し、プロの手による告訴状を作成してもらうことが最善策です。
-
受理された告訴を取消せますか?
-
できますが、親告罪と非親告罪とで少し異なります。
親告罪(名誉毀損罪、器物損壊罪等)は、公訴提起前までは取消しができます。非親告罪は公訴提起後でも取消しできます。また、一度取り消した後の再告訴は、非親告罪は可能ですが、親告罪の場合できません。この点、被告訴人が告訴の取消しを条件に示談を持ちかけてきた場合、いざ告訴を取り消したが示談金を払わないとなったら親告罪の場合は泣き寝入りするしかなくなりますので慎重な対応が必要です。
なお、親告罪を取り消した場合、被告訴人が公訴提起されることは絶対にありませんが、非親告罪の場合は事件の重大性等によっては取り消しても公訴提起される可能性があります。
-
告訴期間とは何ですか?
-
刑事訴訟法第235条による親告罪の告訴期限と時効の注意点
刑事訴訟法第235条に基づき、親告罪の告訴は「犯人を知った日から6か月以内」に行わなければなりません。この法律により、告訴ができる期間が厳密に定められているため、迅速な対応が求められます。
親告罪とは?
親告罪には、以下のような犯罪が含まれます:
- 過失傷害罪
- 名誉毀損罪
- 器物損壊罪
- 親族間の窃盗罪・詐欺罪・横領罪・恐喝罪・不動産侵奪罪・背任罪
これらの罪に該当する場合、被害者は告訴を通じて司法の手続きを進めることができます。告訴の期限を過ぎてしまうと、告訴が無効となり、犯罪者を追求することができなくなるため、注意が必要です。
「犯人を知った日」とは?
告訴期限の起算日となる「犯人を知った日」とは、以下のような場合に該当します:
- 犯人の氏名や住所がわかる場合
- 顔や身長、体格、年代などの特徴が明確に記憶され、後でその人物を特定できる場合
逆に、犯行時に犯人の顔が暗闇などでぼやけて見える程度であった場合、これでは「犯人を知った日」とは認められません。
告訴期間と公訴時効
告訴期限と同様に重要なのが、公訴時効の問題です。公訴時効を過ぎた場合、告訴は絶対に受理されません。犯罪が成立した時点から時効が始まります。
一部の犯罪(例:インターネット上での名誉毀損罪)では、犯行が継続的に行われていると見なされることがあります。例えば、名誉毀損罪においては、インターネットに掲載された誹謗中傷の内容が削除されるまで、犯行は「継続中」とみなされ、時効が進行しません。これにより、告訴期間も時効のカウントも開始されないため、掲載が終了した時点から時効が進行します。
まとめ
親告罪の告訴期限は犯人を知った日から6か月以内と定められていますが、時効の進行状況に応じて告訴のタイミングが影響を受けるため、慎重に対応する必要があります。特に、インターネットでの犯罪に関しては、犯行が継続しているとされ、時効が進行しない場合もあるため、注意が必要です。
-
郵送で告訴状を警察署に送ってもいいですか?
-
結論から言えばダメです。
刑事訴訟法第241条は、「告訴又は告発は、書面又は口頭でこれをしなければならない」と規定しており、書面による告訴状の郵送を明確に禁止する条項は存在しません。しかし、実際の運用においては、告訴状の郵送による提出は、いくつかの重要な理由から推奨されていません。
告訴状の郵送が推奨されない理由
- 本人確認の必要性:
- 警察は、告訴が告訴人本人によるものであることを確認する義務があります。これは、虚偽告訴罪の防止や、告訴の真正性を担保するために不可欠です。
- 郵送された告訴状だけでは、告訴人の本人確認が困難であるため、警察は通常、告訴人本人に身分証明書等を持参して警察署への来署を求めます。
- 告訴要件の確認:
- 告訴状の記載内容に不備がある場合や、告訴の要件を満たしていない場合、警察官は告訴人に直接説明や修正を求める必要があります。
- 郵送では、このような双方向のコミュニケーションが困難であり、受理までに時間がかかる可能性があります。
郵送した場合の流れと対応
- 告訴状を郵送した場合、警察署から電話連絡があり、「本人確認のため来署してください」と指示されることが一般的です。
- この指示に応じない場合、最終的には告訴状が返送される可能性が高くなります。
警察署への来署が難しい場合の対応
- 代理人による提出:
- やむを得ない事情で警察署への来署が難しい場合は、代理人に告訴状を提出してもらう方法があります。
- ただし、告訴受理後には、刑事訴訟法に基づき「告訴人調書」を作成する必要があるため、少なくとも一度は告訴人本人が警察署に出向く必要があります。
- 告訴人調書への協力:
- 告訴人調書は、告訴内容の正確性を確認し、捜査の基礎となる重要な書類です。
- 告訴人が調書作成に協力しない場合、警察は電話や手紙、場合によっては自宅や勤務先への訪問など、あらゆる手段で協力を求めます。
- それでも協力が得られない場合、「告訴人不協力」として、被告訴人を「相当処分」の意見を付して検察に送致することになります。
- この場合、検察官は被告訴人を不起訴とする可能性が極めて高く、告訴の目的が達成されない結果となる可能性があります。
結論
刑事告訴は、被害者が加害者の処罰を求める重要な権利です。告訴状の郵送は、手続き上の制約や本人確認の必要性から、推奨される方法ではありません。告訴を確実に受理してもらい、その後の捜査を円滑に進めるためには、警察署への来署と、捜査への積極的な協力が不可欠です。
- 本人確認の必要性:
-
告訴状が受理された後はどのような流れになるのですか?
-
告訴状が受理されると刑事が一番先にやらないとならないのが「告訴人調書」の作成です。
これは、告訴状の内容を元に、告訴人本人を取り調べて、事件内容等の詳細を供述調書に録取するものです。この供述調書は、その告訴事件を立件する上で極めて重要な書類ですので、刑事に呼ばれた際は、関係書類や日記帳など、関連する資料は全て持って行きましょう。なお、刑事の質問に対して正しく答えることはもちろんですが、わからないことを推測で話したり大げさに話してもいけません。証拠品となるようなもの(犯人がサインした書類・犯人が置き忘れた物など)は、指紋やDNAを採取することがありますので、なるべく触らず紙袋等に入れて持って行きましょう。また、物に限らず、犯人が送ってきたメールや画像なども貴重な証拠ですのでスマホやSDカードなどの媒体で持って行きましょう。
暴行罪や傷害罪、性犯罪などで現場確認が必要な事件では、実況見分又は検証が行われます。これは告訴人と警察官が犯行現場に行って、告訴人の説明によって犯行現場の状況を記録することです。位置を特定するためにメジャーで固定物からの距離を測り、写真を撮影します。遺留物等があれば押収します。防犯カメラが存在すれば設置者に協力を求めて画像データを入手します。
実況見分と併せて犯行再現も行われます。これは警察署内の会議室等で犯行現場と同じような環境を作り、警察官が告訴人役と被告訴人役に分かれ、告訴人の指示で犯行状況を再現し、写真撮影などを行うものです。(傷害罪など強行犯事件の場合です。詐欺罪や横領罪などの財産犯ではやりません。)
告訴人の聴取等が終われば、次は参考人聴取(いれば)となります。社内犯罪であれば被告訴人直属の上司や同僚など、飲食店内での犯罪であれば犯行を目撃した店員や客などです。
銀行口座を利用した詐欺罪や横領罪の場合は、犯行に関係する銀行口座の入出金明細が必要になるので、刑事は関係先銀行支店に捜査関係事項照会書を送って回答を求めます。この回答には1週間から1か月かかります。回答された入出金明細を解析し、さらに別の口座にお金が移っていればその口座の銀行支店にも照会書を送ります。被告訴人の銀行口座がわからない場合には、「全店照会」といって主要銀行や被告訴人が住んでいる近くにある銀行、信用金庫などに被告訴人との口座取引がないかを照会書を送って調べます。振り込まれたお金がATM等で引き出されていれば、その画像も入手します。
被告訴人の遺留物がある場合は、指紋採取と照合を行います、被告訴人の氏名等がわからない場合は、微物を採取してDNA鑑定を行います。ただし、指紋もDNAも全国民のものが警察に保管されているわけではありません。一度犯罪を犯して警察で何らかの処分を受けたことがなければ記録はありませんので照合・鑑定しても何もわからないことがあります。
ある程度捜査が終了し事件送致できそうだという段階になると、「検事相談」と言って地方検察庁の検察官にそれまでの捜査状況をまとめたチャートなどを持参して相談に行きます。刑事が告訴状を受理したがらないのと同様、検察官も警察からの告訴事件送致はなるべく受けたくないので、厳しい指摘や注文が来るのが通例です。特に検察官の異動時期である3月が近づくと(ひどい場合だと前年11月くらいから)、「僕もうすぐ異動なんで次の検事に申し送っておきますから4月以降にもう一度相談に来てください」と言って送致させてくれないことがあります。
検事の注文をクリアしていよいよ送致OKとなると、被告訴人を逮捕して身柄送致するか、逮捕しないで任意捜査で書類送付(マスコミ用語で言う「書類送検」)にするかを決めなくてはなりません。一般的に言えば、被害届の事件に比べて告訴事件は重い罪であることが多いので逮捕することが多いのですが、被告訴人に前科・前歴がなく、逃亡や証拠隠滅のおそれがなければ任意捜査で送付することもあります。
ここであまり重要ではないのですが、送致と送付の違いについて説明します。送致とは被疑者を逮捕して身柄と書類を一緒に検察庁に送る場合と、告訴・告発以外の事件を被疑者を逮捕しないで書類だけ送る場合とを言います。送付とは、告訴・告発事件の被疑者を逮捕せず、書類だけ送ることを言います。一件書類の一番上に綴る書類の名前がそれぞれ送致書と送付書で異なります。送付は、受け取った検察庁側で「あ、この事件は告訴か告発事件なんだな」とすぐわかる以外にこれといった意味も効果もありません。
話を元に戻します。被告訴人を逮捕するとなると裁判所に逮捕状の令状請求に行くことになります。この時点で被告訴人の自宅や関係先の捜索差押を実施していなければ捜索差押許可状も同時に請求することになります。告訴事件の場合、送致段階になると書類の量がかなり多くなっていることがあり、車から裁判所まで台車で運ぶこともあります。書類が多いと裁判所事務官も読むのに時間がかかるので、午前8時30分に受け付けしてもらい、令状が発付されるのが午後5時過ぎなんてことも珍しくありません。
無事令状が発付されると、関係先の捜索差押をして証拠資料を押収し、被告訴人に逮捕状を執行して逮捕し、警察署に引致して留置施設に入ってもらいます。被告訴人は、48時間以内に地方検察庁(告訴・告発事件は区検察庁ではなく地方検察庁送致)に送致され、送致された日から最大20日間留置施設に勾留されます。
この間、被疑者(逮捕後は被告訴人から被疑者と呼称が変わります)は刑事や検察官の取り調べを受け、被疑者供述調書の作成を受けます。否認する被疑者もいれば最初から認めてごめんなさいをする被疑者もいますが、告訴事件の多くは事前に入念に捜査を行い、検察官ともきっちり打ち合わせをしているため、否認しても黙秘しても公判請求(起訴)されることが多いです。
被疑者の供述内容によっては、検察官が告訴人を検察庁に呼んで、再度告訴人調書を作成する場合もあります。
公判請求されると被疑者は被告人という呼称に変わり、概ね1か月以内に拘置所に移送されます。ただし、共犯事件ではなく逃亡のおそれもなければ、通常数百万円の保釈金を払えば保釈してもらえます。
裁判が始まると、被告人が事実関係を認めている場合は告訴人が呼ばれることもなく2、3回の公判で判決が出ます。
否認や黙秘で事実関係を争うことになれば告訴人が公判に呼ばれて証言を求められることがあります。この場合、事前に公判担当検察官に呼ばれて公判対策レクチャーを受けることがほとんどなので、本番の公判で慌てなくて済むようになっています。余談ですが、東京地方検察庁では事件担当検察官(検事相談から起訴までを担当)と公判担当検察官とが異なりますが、他府県地方検察庁では事件と公判を同じ検察官が担当します。
刑事の仕事は起訴まででほとんど終わりですが、否認事件では公判担当検察官から連絡が来て補充捜査を下命されることがたまにあります。告訴人の方は裁判の傍聴に行かれることが多いと聞きます。刑事は担当した事件の公判に行くことはほとんどありません。これは刑事が傍聴席に座ることで被告人にプレッシャーを与えるのは良くないという意見があるためと、1件告訴事件が終わっても次のそのまた次の告訴事件が待っているので、傍聴に行っている暇がないということもあります。本当に1件送致するとまた1件告訴相談が来る感じで永遠に無くならないのです。
告訴人から電話が来て「相手に有罪判決が出ました。○○刑事さんに苦労してもらったおかげです。ありがとうございました。」こう言われると本当にうれしいものです。知能犯担当刑事をやっていて良かったと思えるのは数年に一度こんな電話があったときくらいです。
-
告訴状が受理されたことはどうやって証明できますか?
-
告訴状が受理されると告訴状一枚目に「受理番号」のゴム印が押され、「受理番号」の数字が記載されます。担当の刑事に問い合わせるとこの「受理番号」を教えてくれますので、これが受理の証明になります。
告訴状が受理されると、刑事課にある犯罪事件受理簿に登載され一連番号が付きます。犯罪事件受理簿は、「窃盗」「詐欺」「傷害」など、罪名によって項目が分かれており、通年使用なのでその年の1番目は1からスタートします。したがって年頭に告訴状を提出すると、受理番号が2とか4とかという少ない数字なので不安を覚える方がいらっしゃるのですが、実際には令和6年-詐欺-2番ということになるので他の告訴状や被害届とはかぶらないようになっています。なお、警察署によっては、罪名に「1」や「10」といった番号を付けて、受理番号を「10-22」などの表記にしているところもあります。
-
犯人が誰かわからないのですが告訴できますか?
-
できます。
この場合、告訴状の被告訴人欄は、犯人が全くわからなければ「不詳」とだけ記載すればOKです。また、犯人の一部情報だけわかっていれば
被告訴人
住居 不詳
職業 不詳
氏名 通称 山ちゃん
年齢 25から35歳くらい
携帯電話番号 090-0000-0000
特徴 身長175センチメートルくらい、体格痩せ型、髪黒色で短め、左頬にホクロがあり、黒縁眼鏡をかけ、関西弁を話す男性などと記載すればOKです。
-
刑事から「告訴じゃなくて被害届なら受理する」と言われましたがどうしたらいいですか?
-
「刑事から『告訴じゃなくて被害届なら受理する』と言われましたが、どうしたらいいですか?」という状況に直面した場合、まずは告訴を受理してもらえるように全力を尽くすことが重要です。告訴が受理されると、捜査が進展し、犯人の送致や処罰が期待できるため、告訴が最も効果的な手段と言えます。しかし、最終的に告訴を受理してもらえなかった場合は、被害届を提出することを検討することになります。
告訴と被害届の違い
告訴と被害届は、どちらも犯罪の通報手段として利用されますが、告訴には犯罪の加害者を特定し、その処罰を求める強い意志が必要です。被害届は、犯人が特定されていない場合や、捜査の範囲が広くない場合に使われます。被害届の場合、警察に捜査義務は生じますが、送致義務は発生しないため、犯人がわからない場合は捜査が進展せず、事件が放置される可能性があります。
どうしても告訴を受理してもらいたい場合
もし担当の刑事が「告訴ではなく被害届を受理する」と言った場合、まずはその刑事に「同じ捜査を行うのであれば、告訴を受けた方が評価が高いのではないですか?」と相談してみることをお勧めします。実際、告訴事件は捜査が難しく、処理が大変ですが、告訴が成功すれば刑事には評価が与えられます。例えば、警視庁の場合、被害額が1,000万円以上の詐欺や横領の告訴事件が送致されると、警視総監賞や刑事部長賞が授与されることがあります。このように、告訴事件を処理することは、刑事にとって大きな業績となり、場合によっては表彰されることもあります。
また、警察署には告訴・告発事件の年間送致目標(ノルマ)が設定されているため、告訴事件1件の処理は貴重な実績と見なされることが多いです。これを踏まえ、担当刑事に告訴を受理してもらえるよう働きかけるのが効果的です。
被害届を提出する場合のポイント
被害届が受理されると、警察は捜査を開始しますが、犯人がわからなければ事件は放置される可能性があります。犯人が特定できている場合、捜査は進み、犯人の取り調べが行われます。したがって、被害届を提出する際には、犯人に関する情報(氏名、住居、職業、年齢、電話番号、外見の特徴など)を詳細に記載することが重要です。この情報があれば、犯人を特定し、捜査が進展する可能性が高くなります。
最後に
告訴と被害届の選択は慎重に行うべきですが、犯人が特定できている場合、告訴を選ぶことが最も効果的な結果を生むことが多いです。もし告訴を受理してもらえない場合でも、被害届を通じて警察に捜査を依頼することは、被害者の権利を守るための重要な手段となります。
-
事件の被害者が被害届を出さないので、私が代わりに告発状を提出したいのですが警察は受理してくれますか?
-
犯罪被害における第三者からの告発状受理の可能性:法的側面と実務的課題
法的には、第三者からの告発状提出は可能ですが、実務上、受理される可能性は極めて低いと言わざるを得ません。その背景には、犯罪被害に遭われた被害者の方々の複雑な心理と、捜査機関が抱える現実的な制約が存在します。
被害者の心理的要因
犯罪被害に遭われた方の中には、以下のような心理状態に陥る方が少なくありません。
- 心的外傷(トラウマ)による回避: 事件を思い出すこと自体が苦痛であり、事件に関わることを極力避けたい。
- 経済的・時間的負担への懸念: 訴えても金銭的賠償が得られるとは限らず、時間と労力の無駄になる可能性を危惧する。
- 加害者からの報復への恐怖: 加害者やその関係者からの報復を恐れ、事件への関与を避けたい。
これらの心理的要因により、被害者の方々は捜査への協力を躊躇する場合があります。
捜査機関の実務的課題
犯罪の立件には、被害者の協力が不可欠です。しかし、上記のような心理状態にある被害者の方々が、捜査に積極的に協力してくれるとは限りません。
仮に第三者からの告発状を受理したとしても、被害者の協力が得られなければ、捜査は行き詰まってしまいます。捜査機関は、限られた人員と時間の中で、効率的に捜査を進める必要があり、被害者の協力が得られない事件に注力することは困難です。
結論
これらの事情から、被害者に訴え出る意思がない事件は、第三者からの告発があっても、受理されない可能性が高いと言えます。
よくあるご質問
(古物営業許可申請について)
-
古物営業許可申請が通らない欠格事由には何がありますか?
-
古物営業許可申請が通らない欠格事由とは?
古物商の営業許可を取得する際には、一定の欠格事由に該当すると許可が下りません。警察署の審査担当者が厳格に審査を行うため、該当する場合は必ず発覚します。以下に、古物営業許可申請が通らない欠格事由を詳しく解説します。
1. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
破産手続きを受け、その後復権を得ていない場合、古物営業許可は取得できません。
2. 刑事罰を受けた者
次のいずれかの刑事罰を受けた場合、刑の執行を終えてから5年以内、または執行を受けなくなってから5年以内は許可されません。
- 禁固刑や懲役刑を受けた者
- 古物商の無許可営業や名義貸しの罪で罰金刑を受けた者
- 窃盗、背任、遺失物横領、盗品譲受けなどの罪で罰金刑を受けた者
3. 暴力団関係者
- 現在暴力団員である者
- 暴力団員でなくなってから5年以内の者
4. 犯罪組織の構成員
暴力団以外の犯罪組織の構成員で、強い犯罪常習性が認められる者は許可されません。
5. 暴力団対策法に基づく処分を受けた者
以下の暴力団対策法の規定に基づく命令・指示を受けた者で、受けてから3年以内の者は許可を受けることができません。
- 第12条
- 第12条の4第2項
- 第12条の6
6. 住居不定者
住居が不定である場合、古物商の許可は取得できません。
7. 古物営業許可の取消を受けた者
過去に古物営業法第24条の規定により、許可を取り消された者は新たに許可を得ることができません。
8. 精神機能の障害により適正な営業ができない者
精神的な理由により適正な営業ができないと判断される場合、許可は下りません。
9. 一定の未成年者
未成年者であっても、一定の条件に該当すると許可が下りません。
10. 管理者の不在
営業所または古物市場ごとに管理者を選任しないと考えられる場合、許可を取得することができません。
11. 法人の場合の注意点
法人が古物営業の許可を申請する場合、役員のうち1~9のいずれかに該当する者がいると許可は下りません。
【解説】
ア. 執行猶予中の許可について
執行猶予中の方は、猶予期間が満了した日の翌日から許可申請が可能となります。
イ. 法人の役員が未成年者である場合
法人の役員が未成年者であっても、許可を取得することができます。
ウ. 管理者の未成年者制限
管理者として未成年者を選任することは認められていません。
-
法人の役員の範囲については?
-
下記の通り会社種類によって異なります。
- 株式会社の場合
取締役、会計参与、監査役 - 有限会社の場合
取締役、監査役 - 持ち分会社(合名会社、合資会社、合同会社)の場合
ア:定款で「業務の執行を行わない旨」定められている者を除き「社員に関する事項」に登記されている者全てを役員とする。
イ:合同会社で「社員」として「法人」しか登記されていない場合、「職務執行者」登記の者を代表者とする。
- 株式会社の場合
-
営業所はどのようなものでも許可されますか?
-
古物商許可に必要な「帳簿の保存義務」と「標識の提示義務」について
古物商許可を取得するためには、「帳簿の保存義務」と「標識の提示義務」を適切に履行できる環境が必要です。これらの義務を満たせる場合に限り、古物商許可が認められます。
バーチャルオフィスでは古物商許可は取得できない
バーチャルオフィスは、実際の営業拠点として適切ではないため、「帳簿の保存義務」や「標識の提示義務」を果たせません。そのため、バーチャルオフィスを利用した場合、古物商許可は取得できません。
レンタルオフィスなら古物商許可が取得可能
レンタルオフィスは、実際に営業所として機能し、必要な帳簿の保管や標識の提示が可能であるため、古物商許可を取得できます。ただし、契約内容によっては営業所として認められないケースもあるため、事前に確認が必要です。
自宅でも古物商許可の取得は可能だが注意が必要
自宅を営業所として古物商許可を取得することも可能です。しかし、古物営業法に基づき、警察官が業務内容を確認するために立ち入り調査を行うことがあります。この立入調査を拒否した場合、10万円以下の罰金が科せられる可能性があるため、十分な注意が必要です。
まとめ
- バーチャルオフィスでは古物商許可を取得できない
- レンタルオフィスは条件を満たせば許可される
- 自宅でも許可取得は可能だが、警察官の立入調査に注意が必要
古物商許可を取得する際には、営業所の選定が非常に重要です。適切な環境を整え、法令を遵守した営業を行いましょう。
-
インターネットで古物営業を行う場合ホームページに記載すべき事項はありますか?
-
「氏名又は名称」「許可をした公安委員会の名称」「許可証の番号」を表示しないとなりません。
この表示はサイトのトップページに表示するか、別ページに表示した場合はトップページ内にそのページへのリンクを設定しないとなりません。なお、リンクの場合は、「古物営業法の規定に基づく表示を行っているページへのリンクであることがわかる」ようにする必要があります。
-
変更届を提出しなくてはならないのはどういうときですか?
-
下記の事項に変更があった場合に必要です。
- 主たる営業所又は古物市場の名称及び所在地
- その他の営業所又は古物市場の名称及び所在地
- 氏名若しくは名称又は住所若しくは居所
- 法人の代表者の氏名
- 営業所又は古物市場ごとに取り扱おうとする古物の区分
- 管理者の氏名又は住所
- 行商をしようとする者であるかどうかの別
- ホームページ利用取引をしようとする者であるかどうかの別
- URL
- 法人の役員の氏名又は住所
無料ご相談はこちら
サービスに関するご相談やご不明点などございましたら、お気軽にお問い合わせください。