よくあるご質問
(告訴状・告発状作成について)
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告訴と告発と被害届の違いは何ですか?
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何らかの犯罪被害に遭い、警察に届け出るときによく使われるのが被害届です。自転車盗や置き引きなど比較的軽い犯罪の被害届提出は交番でも可能で、地域課の警察官が被害者から事情を聞いてその場で作成してくれます。被害届を受理した警察署は、原則的には捜査義務を負いますが、送致(事件を検察庁に送ること)義務は負わないので、現場に防犯カメラがない、目撃者もいない、証拠となる物件もないといった場合、受理された被害届はバインダーに綴じられて終わりです。盗まれた自転車や財布を持っている人が職務質問等で捕まるか自ら出頭してこない限り二度と日の目を見ることはありません。
告訴と告発は、被害届と違い、警察に送致(又は送付、送致と送付の違いはあまり重要ではないのでここでは触れません)義務が生じ、当然に捜査義務も生じます。つまり、被害届は犯人が見つかりそうになければそのまま時効まで放置されて終わるのに対し、告訴・告発は事件を捜査して犯人を見つけ出して取り調べ(逮捕するかどうかは事件の重大性や犯人の逃亡可能性などで判断されます)、必ず送致しないとなりません。もしどうしても犯人が見つからなかった場合でも、それまでの捜査結果をまとめて時効前に送付しないとなりません。被害届が「こういう犯罪があったので届け出ます」というだけの意味合いであるのに対し、告訴・告発は「この事件を捜査して犯人を送致し厳重に処罰してください」というものになります。ある意味、警察に対する捜査(送致)命令書のようなものともいえます。
告訴と告発の違いは、告訴がその犯罪の被害者ができるのに対し、告発は被害者以外の人もすることができます。例えばAさんがBに殴られたとして、Aさんが暴行罪でBの処罰を求めて訴えるのが告訴です。この暴行の現場を見ていたCさんがBの処罰を求めて訴えるのが告発となります。
さらに告訴には2種類あり、一般の告訴と親告罪の告訴があります。親告罪の告訴とは刑法の条文に「この罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない」と書いてある犯罪で、罪名で言うと名誉毀損罪や器物損壊罪、過失傷害罪などがあります。「公訴を提起することができない」とは、犯人を処罰するための裁判が開けないということですから、逮捕して送致しても検察官は起訴できません。一般の告訴とは、傷害罪や詐欺罪、窃盗罪など親告罪以外の罪名の事件を訴え出ることを言います。
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告訴はどこに出したらいいのですか?
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告訴は警察か検察庁に出すことになります。ただし、基本的に検察庁は、政治家や公務員による犯罪や汚職に関する事件など、マスコミに大々的に報じられるような大型事件を除き受理しません。例えば前記Q&Aで例に挙げたAさんがBに殴られた暴行事件のような告訴を検察庁に持って行っても「第一次捜査権は警察にあるので警察に行ってください」と言われて受理されないのが普通です。
それでは、警察署はどこの警察署に出すのがいいかとなると、まず事件発生場所を管轄する警察署となります。原理原則としては、告訴はどこの警察署に提出してもいいのですが、最終的には事件発生場所を管轄する警察署が事件捜査を担当することになるので、時間と手間を考えれば最初から管轄警察署に相談に行くのが告訴人、警察双方にとって有益です。
ではインターネット上の名誉毀損など、発生場所が存在しないような犯罪の告訴はどこに出すべきでしょうか。この場合、告訴人が住んでいる場所を管轄する警察署になります。
また警察署の他に、各都道府県警察の本庁舎(警視庁なら霞が関)に提出する方法もあります。ただし、警察署と違って本庁舎は平日のみの業務で、休日は最低限の人数で電話番と門番だけしているような状況なので、平日以外に行くと相談すら受け付けてもらえないので注意が必要です。
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告訴状作成の依頼ができるのは弁護士、司法書士、行政書士と聞いたのですが何が違いますか?
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まず告訴状の提出先が違います。弁護士は検察庁と警察署どちらにでも提出できる告訴状を作成できます。司法書士は検察庁、行政書士は警察署です。
告訴状を提出する先は検察庁か警察署しかありません。ただし、検察庁は、政治家による犯罪や公務員の汚職事件、脱税事件など一部の事件しか受理してくれません。例えば路上でケンカとなって相手から一発殴られてケガをした傷害事件の告訴状を持って行っても「第一次捜査権は警察にあるので、警察に持って行ってください」と言われて告訴状を受け取ってくれません。その点、弁護士はどちらにでも提出できる上に、司法書士や行政書士にはできない法律業務を全て扱うことができます。また、検察官は弁護士との話し合いには応じますが、司法書士や行政書士が出て行っても相手にしてくれません。
しかし、弁護士に告訴を依頼すると告訴状作成一式、受理報酬、起訴(有罪)報酬等で100万円近くかかります。その点、司法書士と行政書士は告訴状作成数万円~20万円程度とかなりリーズナブルになっているので、まずは予算と提出先で選ぶと良いでしょう。
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知人にお金を預けていたところ持ち逃げされてしまったのですが何罪になるかわかりません。告訴できますか?
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横領罪か詐欺罪かで悩むケースはよくあります。また横領罪と窃盗罪、窃盗罪と詐欺罪でも悩むケースがあります。
いわゆる詐欺盗などと言って、被害者に声をかけて嘘を言い、被害者が気を取られている隙に金品を持って行ってしまう犯罪がありますがこれは詐欺罪ではなく窃盗罪です。また新聞販売店で配達用の原付バイクを従業員が持ち逃げしてしまうケースがよくあるのですが、これはバイクを貸与している状況によって窃盗罪か横領罪かに分かれます。例えばバイクは販売店にしか置けず、厳正に配達だけにしか使用できない状況の場合、バイクを持ち逃げすれば窃盗罪になります。反対にバイクを従業員に貸し与えて通勤から休日の足代わりなどに自由に使わせており、事実上本人の持ち物と大差ないような状態であれば、これを持ち逃げするのは横領罪になります。社員が会社のお金を着服した場合では、窃盗罪、横領罪、業務上横領罪、詐欺罪の4つの罪名が考えられます。お金を扱う部署ではない社員が会社の金庫から現金を抜き取れば窃盗罪になります。夜間金庫に入れるように経理担当からたまたま頼まれた一般社員がこれを使い込めば横領罪になります。経理担当社員など、会社資金や預金を占有・保管・管理する立場の者が資金を自己目的で消費すれば業務上横領罪になります。なお単純横領罪より業務上横領罪のほうが罪が重く(横領罪は5年以下の懲役、業務上横領罪は10年以下の懲役)、公訴時効も異なるため、適用には十分注意しなければなりません。一般社員が虚偽の支払伝票を作成し、事情を知らない経理担当に現金を請求して受け取れば詐欺罪になります(私文書偽造、同行使罪にも該当します)。もしもこの経理担当が事情を知っていて加担したならば二人は共犯関係となり、経理担当は業務上横領罪、一般社員は横領罪になります。
このように一見すると単純な犯行のようでも何罪に当たるのか微妙なケースは珍しくなく、判断に悩むことは刑事でも日常的によくあることです。一般の方ではなかなか判断が難しいことですので、当職にご相談くだされば、長年の刑事経験から適切な擬律判断をして告訴状の罪名を正しく特定いたします。
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親しくなったお医者さんから「新たに病院を開院するのに資金が足りない。僻地で困ってる患者さんのためなので開業資金を貸してほしい」と言われて1,000万円を渡したところ連絡が取れなくなり、調べたところニセ医者だとわかりました。しかし、何の文書も交わさず、録音もありません。告訴できますか。
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警察受理のハードルは高いと思われますが物的証拠が無くても告訴は可能です。
私自身、刑事時代にこんな事件の告訴を受け、犯人を逮捕して懲役に行っていただきました。犯人は建設会社の社長で、被害者が経営するスナックに「国境なき医師団の医師」だと言って通い、被害者や周囲の常連客に海外活動の自慢話をするなどしてすっかり医師だと思い込ませていました。あるとき犯人が来店した際、「国境なき医師団の海外活動での資金が一時的に不足して困ってる。すぐに返すので1,000万円貸してくれないだろうか」と言われ、本物の医師だとすっかり信じていた被害者は、犯人の指定した口座に1,000万円を振り込んでしまいました。ところがその後犯人は店に来なくなり、電話にも出なくなったので調べたところニセ医者だとわかり、警察に相談に来たのでした。
すぐに日本医師会と国境なき医師団の日本支部に照会したところ、犯人が医師免許を持たず、国境なき医師団の医師でも関係者でもないことが確認できました。そこで私は悪質な詐欺事件と判断して告訴を受理するとともに捜査を開始しました。しかし、犯人は医師の名刺を配ったわけではなく、借用証も領収書もなく、物的証拠と言えるものは何もありません。
幸い、常連客の中に捜査に協力してくれる方がいたので、その方から犯人が医師だと言っていた状況についての供述調書を作成しました。また、犯人は被害者に膨大なメールを送受信していたので、被害者の携帯電話機からデータを抜き取り、医師に関する話題を抽出して解析報告書を作成しました。
騙し取られた1,000万円については、犯人の口座からほぼ全額が下請け業者へ送金されていたことが判明し、使途先も明らかにしました。こうした捜査結果を持って検事相談に行ったところ最終的にゴーサインが出され、住居不定の犯人を探しだし逮捕して送致しました。当初犯人は、私の取り調べに対し、「酔っ払っていたので医者だと言ったかどうか覚えていない」などと否認しましたが、被害者が記憶していた騙しの文句やメールの文書などの証拠を徐々にぶつけていった結果「医者だと嘘を言ってお金を騙し取り、督促されていた下請け会社への支払に使いました」と自供させ、その供述調書に署名させることでき、公判請求から有罪へと持って行くことができました。
このように借用書や領収書のような物的証拠が全く無い詐欺事件でも、刑事のやる気と工夫次第では犯人の処罰は可能です。もしも告訴相談で刑事に「物的証拠がないので受理できない」と言われたら、このQ&Aを読んでもらってください。
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警察はなかなか告訴を受理してくれないと聞きますが本当ですか?
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元刑事としてお答えしにくいのですが事実です。以下に理由を説明します。
告訴を受理すると、警察はその事件の送致義務を負うので、捜査して時効成立までに事件を必ず送致しないとなりません。つまり告訴はある意味「捜査(送致)命令書」のようなものなのです。誰でも命令されるのは嫌なものだと思います。
犯人が誰でどこにいるのかわかっており、逃亡や証拠隠滅のおそれがあれば、裁判所に行って逮捕状と捜索差押状を取り、逮捕とガサをして検察庁に送致することになります。
「犯人が誰かわからない又は誰かはわかっているがどこにいるかわからない」こういう場合はどうなるでしょうか。時効成立近くまで、警察は犯人を探し続けなければなりません。時効は、罪名によって異なり、器物損壊罪のような比較的軽い罪で3年、詐欺・窃盗は7年、傷害は10年となっています。これだけの期間犯人を追い続けなければならないのはかなりの業務負担です。
受理した告訴事件で、告訴人と被告訴人とで示談が成立し、告訴人が取消状を提出することがあります。しかし、取消しがあっても警察の送致義務は消えません。受理した以上は何があっても送致しないとならないのです。しかも「捜査を尽くした」上でないと検察官は送致を受け付けてくれないので、取消しがあったとしても被告訴人の取調べなど、必要なことは全てやらなければなりせん。これは、取消しがあったからといって検察官が公訴提起しないとは限らないためです(親告罪除く)。取消しがあったからと言って楽になることは少しもありません。
告訴事件担当刑事の仕事は、告訴事件の捜査だけではありません。毎日110番が何十件多い署では何百件と入り、忙しい署では毎日のように犯人が逮捕されて刑事課に連れてこられます。逮捕した場合、48時間以内に送致しないとならない(実際には48時間もない)ので、大急ぎで事件をまとめないとなりません。そして送致で事件は終わりではありません。送致後は検察官から「あれやれ。これやれ。」の電話攻撃が入りますので、勾留満期までの約20日間その事件にかかりきりになることもあり、その間告訴事件の処理は停滞または停止します。
さらにここに変死が入ってきます。変死とは、ざっくり言うと、病院に入院中の患者が医師に看取られて亡くなった以外の死亡者の取り扱いになります。変死の扱いは管内住民の人数が多い署ほど多く、以前私が勤務していた23区内のある署では、1日24時間に9体の変死扱いがあったことがありました。変死が入ると刑事はまず現場に行って死体発見現場の状況を詳細に調べます。そしてご遺体を署に持ち帰り、霊安室で詳細に見分します。現場の状況やご遺体に不審な点があれば、ご遺体は大学病院等で解剖となり、刑事はこれに立ち会わないとなりません。大学病院によっては、解剖後に解剖道具の洗浄までやらされることがあります。解剖等の結果、殺人や傷害致死事件となれば、捜査本部が設置され、刑事課員の何割かが専従することになります。普段告訴事件を担当する刑事が捜査本部に引き抜かれると、その告訴事件を担当する者がいなくなり、捜査本部が解散されるまで放置されることになります。そしてその間にも新しい告訴事件の相談がやってきます。
いかがでしょうか、現場の刑事がなるべく告訴を受理したくない心理が幾らかでもおわかりいただけたでしょうか?
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告訴にかかる費用は幾らくらいですか?
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告訴状の作成を弁護士に依頼すると
- 着手金 40万円
- 受理報酬 20万円
- 起訴報酬 20万円
くらいかかります。さらにこれらとは別に交通費などの実費も請求されます。
行政書士に依頼した場合は、数万円~20万円程度となります。一部の行政書士さんでこれにさらに受理報酬を設定しているところもあるようですが、どちらにしても弁護士さんに比べればかなりリーズナブルではあると思います。ただし、行政書士には弁護士のような交渉権はありませんし、裁判所に提出する書類も作成できません(告訴状は警察署に提出する書類なので行政書士にも作成できるのです)。また被告訴人との示談交渉もできません。どちらに依頼するかはご予算と、どこまでをやってもらいたいかなどをよくお考えになって決められると良いでしょう。
なお告訴状の提出に当たって警察署では印紙等の必要はありませんので、これ以外の費用は一切かかりません。
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告訴状は自分で作成できますか?
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できますが、慣れない人が作成した告訴状を警察が受理してくれる可能性は相当低いと思われます。
告訴状は、決まった書式はなく、告訴人の住所、氏名、年齢、連絡先電話番号、犯罪事実、被告訴人の人定時効(わからなければ不詳でも可)、被告訴人に対する処罰意思が記載されていれば良いとされています。しかし、弁護士が入念に作成した告訴状でも警察は簡単には受理しないのが実状です。作成したことのない方がネット情報だけで作成しても、プロの刑事からすれば突っ込みどころ満載という感じで、あれダメこれダメの猛反撃を受けてあえなく敗退となる可能性が極めて大きいと思われます。
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受理された告訴を取消せますか?
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できますが、親告罪と非親告罪とで少し異なります。
親告罪(名誉毀損罪、器物損壊罪等)は、公訴提起前までは取消しができます。非親告罪は公訴提起後でも取消しできます。また、一度取り消した後の再告訴は、非親告罪は可能ですが、親告罪の場合できません。この点、被告訴人が告訴の取消しを条件に示談を持ちかけてきた場合、いざ告訴を取り消したが示談金を払わないとなったら親告罪の場合は泣き寝入りするしかなくなりますので慎重な対応が必要です。
なお、親告罪を取り消した場合、被告訴人が公訴提起されることは絶対にありませんが、非親告罪の場合は事件の重大性等によっては取り消しても公訴提起される可能性があります。
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告訴期間とは何ですか?
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刑事訴訟法235条により、親告罪の告訴は「犯人を知った日から6か月以内にしなければならない」ことになっています。
親告罪とは、過失傷害罪、名誉毀損罪、器物損壊罪、親族間の窃盗罪・詐欺罪・横領罪・背任罪などがあります(他にもあります)。
「犯人を知った日」とは、犯人の氏名や住所などがわかればその時点、そこまでわからなくても顔や身長、体格、年代などをはっきり見て記憶しており、後で本人又は写真等を見れば特定・抽出できるような場合でも「知った日」になります。暗闇の中での犯行で、犯人の顔は輪郭しかわからない程度であれば「知った日」にはなりません。
告訴期間とは少し話がずれますが、公訴時効が超過した場合も当然に告訴はできません。時効は、犯罪行為が終わった時点からスタートするのが普通ですが、インターネット上における名誉毀損罪のように、他人の名誉を毀損するような書き込み又は画像等が掲載され続けている場合、犯行は継続中ということになるので、掲載されている間は時効のカウントがスタートしないことになります。なお、この場合は告訴期間も同様に時計の針は動きません。掲載記事が削除され、犯行終了となった時点から進みます。
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郵送で告訴状を警察署に送ってもいいですか?
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結論から言えばダメです。
刑事訴訟法241条では「告訴・告発は書面又は口頭で行わなければならない」と規定されており、特に書面の郵送を禁じる規定はありません。ただし、告訴の要件を確認し、虚偽告訴罪を防止する点からも、警察官は告訴が告訴人本人によるものであるかを確認する必要があることから、告訴状の提出は告訴人本人が身分証明書等を持参して警察署に来署するように求めるのが普通です。
したがって告訴状を郵送した場合、警察署から電話がかかってきて「本人が身分証明書を持ってきてください」と言われます。これに応じないと最終的に告訴状はそのまま返送される可能性が高いです。
またどうしても警察署に行きたくない場合、代理人に提出してもらう方法もありますが、告訴受理後には刑事が「告訴人調書」を作成しなければならないので、どちらにしても最低1回は警察署に行く必要があります。
では、この「告訴人調書」にも応じなかったならどうなるでしょうか。おそらく刑事から執拗に電話や手紙で呼び出しがあります。それでも無視していれば直接自宅や勤務先に呼び出しに来ます。これにも応じなければ「告訴人不協力」ということで「相当処分」の意見を付けて被告訴人を送付することになります。これを受けた検察官は被告訴人を不起訴にする率が極めて高いので、被告訴人は何の処罰も受けないことになります。これでは何のために告訴したかわからなくなりますね。
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告訴状が受理された後はどのような流れになるのですか?
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告訴状が受理されると刑事が一番先にやらないとならないのが「告訴人調書」の作成です。
これは、告訴状の内容を元に、告訴人本人を取り調べて、事件内容等の詳細を供述調書に録取するものです。この供述調書は、その告訴事件を立件する上で極めて重要な書類ですので、刑事に呼ばれた際は、関係書類や日記帳など、関連する資料は全て持って行きましょう。なお、刑事の質問に対して正しく答えることはもちろんですが、わからないことを推測で話したり大げさに話してもいけません。証拠品となるようなもの(犯人がサインした書類・犯人が置き忘れた物など)は、指紋やDNAを採取することがありますので、なるべく触らず紙袋等に入れて持って行きましょう。また、物に限らず、犯人が送ってきたメールや画像なども貴重な証拠ですのでスマホやSDカードなどの媒体で持って行きましょう。
暴行罪や傷害罪、性犯罪などで現場確認が必要な事件では、実況見分又は検証が行われます。これは告訴人と警察官が犯行現場に行って、告訴人の説明によって犯行現場の状況を記録することです。位置を特定するためにメジャーで固定物からの距離を測り、写真を撮影します。遺留物等があれば押収します。防犯カメラが存在すれば設置者に協力を求めて画像データを入手します。
実況見分と併せて犯行再現も行われます。これは警察署内の会議室等で犯行現場と同じような環境を作り、警察官が告訴人役と被告訴人役に分かれ、告訴人の指示で犯行状況を再現し、写真撮影などを行うものです。(傷害罪など強行犯事件の場合です。詐欺罪や横領罪などの財産犯ではやりません。)
告訴人の聴取等が終われば、次は参考人聴取(いれば)となります。社内犯罪であれば被告訴人直属の上司や同僚など、飲食店内での犯罪であれば犯行を目撃した店員や客などです。
銀行口座を利用した詐欺罪や横領罪の場合は、犯行に関係する銀行口座の入出金明細が必要になるので、刑事は関係先銀行支店に捜査関係事項照会書を送って回答を求めます。この回答には1週間から1か月かかります。回答された入出金明細を解析し、さらに別の口座にお金が移っていればその口座の銀行支店にも照会書を送ります。被告訴人の銀行口座がわからない場合には、「全店照会」といって主要銀行や被告訴人が住んでいる近くにある銀行、信用金庫などに被告訴人との口座取引がないかを照会書を送って調べます。振り込まれたお金がATM等で引き出されていれば、その画像も入手します。
被告訴人の遺留物がある場合は、指紋採取と照合を行います、被告訴人の氏名等がわからない場合は、微物を採取してDNA鑑定を行います。ただし、指紋もDNAも全国民のものが警察に保管されているわけではありません。一度犯罪を犯して警察で何らかの処分を受けたことがなければ記録はありませんので照合・鑑定しても何もわからないことがあります。
ある程度捜査が終了し事件送致できそうだという段階になると、「検事相談」と言って地方検察庁の検察官にそれまでの捜査状況をまとめたチャートなどを持参して相談に行きます。刑事が告訴状を受理したがらないのと同様、検察官も警察からの告訴事件送致はなるべく受けたくないので、厳しい指摘や注文が来るのが通例です。特に検察官の異動時期である3月が近づくと(ひどい場合だと前年11月くらいから)、「僕もうすぐ異動なんで次の検事に申し送っておきますから4月以降にもう一度相談に来てください」と言って送致させてくれないことがあります。
検事の注文をクリアしていよいよ送致OKとなると、被告訴人を逮捕して身柄送致するか、逮捕しないで任意捜査で書類送付(マスコミ用語で言う「書類送検」)にするかを決めなくてはなりません。一般的に言えば、被害届の事件に比べて告訴事件は重い罪であることが多いので逮捕することが多いのですが、被告訴人に前科・前歴がなく、逃亡や証拠隠滅のおそれがなければ任意捜査で送付することもあります。
ここであまり重要ではないのですが、送致と送付の違いについて説明します。送致とは被疑者を逮捕して身柄と書類を一緒に検察庁に送る場合と、告訴・告発以外の事件を被疑者を逮捕しないで書類だけ送る場合とを言います。送付とは、告訴・告発事件の被疑者を逮捕せず、書類だけ送ることを言います。一件書類の一番上に綴る書類の名前がそれぞれ送致書と送付書で異なります。送付は、受け取った検察庁側で「あ、この事件は告訴か告発事件なんだな」とすぐわかる以外にこれといった意味も効果もありません。
話を元に戻します。被告訴人を逮捕するとなると裁判所に逮捕状の令状請求に行くことになります。この時点で被告訴人の自宅や関係先の捜索差押を実施していなければ捜索差押許可状も同時に請求することになります。告訴事件の場合、送致段階になると書類の量がかなり多くなっていることがあり、車から裁判所まで台車で運ぶこともあります。書類が多いと裁判所事務官も読むのに時間がかかるので、午前8時30分に受け付けしてもらい、令状が発付されるのが午後5時過ぎなんてことも珍しくありません。
無事令状が発付されると、関係先の捜索差押をして証拠資料を押収し、被告訴人に逮捕状を執行して逮捕し、警察署に引致して留置施設に入ってもらいます。被告訴人は、48時間以内に地方検察庁(告訴・告発事件は区検察庁ではなく地方検察庁送致)に送致され、送致された日から最大20日間留置施設に勾留されます。
この間、被疑者(逮捕後は被告訴人から被疑者と呼称が変わります)は刑事や検察官の取り調べを受け、被疑者供述調書の作成を受けます。否認する被疑者もいれば最初から認めてごめんなさいをする被疑者もいますが、告訴事件の多くは事前に入念に捜査を行い、検察官ともきっちり打ち合わせをしているため、否認しても黙秘しても公判請求(起訴)されることが多いです。
被疑者の供述内容によっては、検察官が告訴人を検察庁に呼んで、再度告訴人調書を作成する場合もあります。
公判請求されると被疑者は被告人という呼称に変わり、概ね1か月以内に拘置所に移送されます。ただし、共犯事件ではなく逃亡のおそれもなければ、通常数百万円の保釈金を払えば保釈してもらえます。
裁判が始まると、被告人が事実関係を認めている場合は告訴人が呼ばれることもなく2、3回の公判で判決が出ます。
否認や黙秘で事実関係を争うことになれば告訴人が公判に呼ばれて証言を求められることがあります。この場合、事前に公判担当検察官に呼ばれて公判対策レクチャーを受けることがほとんどなので、本番の公判で慌てなくて済むようになっています。余談ですが、東京地方検察庁では事件担当検察官(検事相談から起訴までを担当)と公判担当検察官とが異なりますが、他府県地方検察庁では事件と公判を同じ検察官が担当します。
刑事の仕事は起訴まででほとんど終わりですが、否認事件では公判担当検察官から連絡が来て補充捜査を下命されることがたまにあります。告訴人の方は裁判の傍聴に行かれることが多いと聞きます。刑事は担当した事件の公判に行くことはほとんどありません。これは刑事が傍聴席に座ることで被告人にプレッシャーを与えるのは良くないという意見があるためと、1件告訴事件が終わっても次のそのまた次の告訴事件が待っているので、傍聴に行っている暇がないということもあります。本当に1件送致するとまた1件告訴相談が来る感じで永遠に無くならないのです。
告訴人から電話が来て「相手に有罪判決が出ました。○○刑事さんに苦労してもらったおかげです。ありがとうございました。」こう言われると本当にうれしいものです。知能犯担当刑事をやっていて良かったと思えるのは数年に一度こんな電話があったときくらいです。
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告訴状が受理されたことはどうやって証明できますか?
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告訴状が受理されると告訴状一枚目に「受理番号」のゴム印が押され、「受理番号」の数字が記載されます。担当の刑事に問い合わせるとこの「受理番号」を教えてくれますので、これが受理の証明になります。
告訴状が受理されると、刑事課にある犯罪事件受理簿に登載され一連番号が付きます。犯罪事件受理簿は、「窃盗」「詐欺」「傷害」など、罪名によって項目が分かれており、通年使用なのでその年の1番目は1からスタートします。したがって年頭に告訴状を提出すると、受理番号が2とか4とかという少ない数字なので不安を覚える方がいらっしゃるのですが、実際には令和6年-詐欺-2番ということになるので他の告訴状や被害届とはかぶらないようになっています。なお、警察署によっては、罪名に「1」や「10」といった番号を付けて、受理番号を「10-22」などの表記にしているところもあります。
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犯人が誰かわからないのですが告訴できますか?
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できます。
この場合、告訴状の被告訴人欄は、犯人が全くわからなければ「不詳」とだけ記載すればOKです。また、犯人の一部情報だけわかっていれば
被告訴人
住居 不詳
職業 不詳
氏名 通称 山ちゃん
年齢 25から35歳くらい
携帯電話番号 090-0000-0000
特徴 身長175センチメートルくらい、体格痩せ型、髪黒色で短め、左頬にホクロがあり、黒縁眼鏡をかけ、関西弁を話す男性などと記載すればOKです。
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刑事から「告訴じゃなくて被害届なら受理する」と言われましたがどうしたらいいですか?
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まずは告訴を受理してもらえるようにがんばりましょう。ただし、被害届であっても、犯人が誰かわかっていれば、受理後には犯人の送致と処罰が期待できるので、最終手段としては選択すべきです。
まず、担当の刑事に対して「同じ捜査するなら、被害届より告訴で受けて処理したほうが評価高いのではないですか?」と言ってみましょう。これは事実で、告訴事件は処理が大変な分、まとめ上げて送致したとき、担当した刑事にはそれなりの表彰があります。例えば警視庁の例ですが、被害額が1,000万円以上の詐欺や横領の告訴事件を送致すると、警視総監賞か刑事部長賞がもらえました。私が受賞した15件の警視総監賞はほとんどがこのパターンです。また、こうした表彰がもらえない少額被害の事件であっても、各警察署刑事課には告訴・告発事件の年間送致目標件数(つまりノルマ)があるので、その目標達成のためにも告訴事件1件の処理は貴重な実績となるのです。
被害届は、警察に捜査義務は生じるのですが、送致義務は発生しないので、捜査しても犯人がわからない場合は塩漬け(放置の意)されてしまいます。ただし、犯人がわかっていれば、取り調べなくてはならず、被害者の勘違い等で犯罪が成立しなかった場合等除き、送致しなくてはならなくなります。よって被害届を提出する際は、被害届2枚目の真ん中やや下にある「犯人の住居、氏名」等とある欄に、犯人についてわかっていること(住居、氏名、年齢、職業、電話番号、外見の特徴など)を必ず記載してもらいましょう。
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事件の被害者が被害届を出さないので、私が代わりに告発状を提出したいのですが警察は受理してくれますか?
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法的には可能ですが、実務上受理されない可能性が高いです。
犯罪被害に遭った被害者の中には「思い出したくないのでかかわりたくない」「お金が返ってこないなら訴えても時間の無駄」「仕返しが怖いので一切かかわりたくない」このような考えの方もいらっしゃいます。
事件の立件には、被害者の協力が不可欠ですが、このように考えている被害者の方が犯罪捜査に協力してくれるでしょうか? いざ、告発状を受理しても、被害者の方が協力してくれなければ事件捜査は全く進みません。
このような事情から、被害者に訴え出意思のない事件は、第三者からの告発があっても受理されない可能性が高いと言えます。
よくあるご質問
(古物営業許可申請について)
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古物営業許可申請が通らない欠格事由には何がありますか?
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以下のとおりになります。なお、申請後、警察署の審査担当者は、全ての項目について厳正に審査しますので、該当する場合は必ず発覚しますのでお気を付けください。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 禁固刑や懲役刑に処せられ、又は古物商の無許可営業や名義貸し、窃盗、背任、遺失物横領、盗品譲受け等の罪で罰金刑に処せられ、その執行を終わりあるいはその執行を受けなくなってから5年以内の者
- 暴力団員
- 暴力団員でなくなってから5年以内のもの
- 暴力団以外の犯罪組織の構成員で強い犯罪常習性が認められる者
- 暴力団対策法第12条、第12条の4第2項及び第12条の6の命令又は指示を受けた者で受けてから3年以内の者
- 住居不定者
- 法第24条の規定により古物営業の許可を取り消された者
- 精神機能の障害により古物営業を適正に営業できない者
- 一定の未成年者
- 営業所又は古物市場ごとに管理者を選任しないと考えられる者
- 法人で、役員に1から9までのどれかに該当する者がいる場合
解説
- ア:執行猶予中の方は猶予期間が満了した日の翌日から許可が可能となります。
- イ:法人の役員が未成年者でも許可されます。
- ウ:管理者には未成年者は認められません。
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法人の役員の範囲については?
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下記の通り会社種類によって異なります。
- 株式会社の場合
取締役、会計参与、監査役 - 有限会社の場合
取締役、監査役 - 持ち分会社(合名会社、合資会社、合同会社)の場合
ア:定款で「業務の執行を行わない旨」定められている者を除き「社員に関する事項」に登記されている者全てを役員とする。
イ:合同会社で「社員」として「法人」しか登記されていない場合、「職務執行者」登記の者を代表者とする。
- 株式会社の場合
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営業所はどのようなものでも許可されますか?
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「帳簿の保存義務」と「標識の提示義務」が履行できるものであれば許可されます。
バーチャルオフィスでは履行できませんので許可されません。レンタルオフィスは許可されます。
自宅でも可能ですが、警察官による立入があり、拒否した場合は10万円以下の罰金の罰則があります。
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インターネットで古物営業を行う場合ホームページに記載すべき事項はありますか?
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「氏名又は名称」「許可をした公安委員会の名称」「許可証の番号」を表示しないとなりません。
この表示はサイトのトップページに表示するか、別ページに表示した場合はトップページ内にそのページへのリンクを設定しないとなりません。なお、リンクの場合は、「古物営業法の規定に基づく表示を行っているページへのリンクであることがわかる」ようにする必要があります。
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変更届を提出しなくてはならないのはどういうときですか?
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下記の事項に変更があった場合に必要です。
- 主たる営業所又は古物市場の名称及び所在地
- その他の営業所又は古物市場の名称及び所在地
- 氏名若しくは名称又は住所若しくは居所
- 法人の代表者の氏名
- 営業所又は古物市場ごとに取り扱おうとする古物の区分
- 管理者の氏名又は住所
- 行商をしようとする者であるかどうかの別
- ホームページ利用取引をしようとする者であるかどうかの別
- URL
- 法人の役員の氏名又は住所
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