警察に告訴・告発相談する際の留意点(刑事の失言に注意)【元刑事が解説】
警察署に告訴・告発事件の相談に行った際、担当する刑事が概ね40歳代以上で巡査部長(主任)または警部補(係長)の階級にあれば、ベテランなので事実と異なる回答をすることはほぼ無いと思いますが、20歳代の若手巡査刑事だと経験不足から事実とは少々異なる言動をすることがあるかもしれません。刑事に事件相談する際は小まめにメモを取り、「おかしい」と思ったらその場で確認するか、後で調べる等することが重要です。納得いかない場合は、専門家に相談するなどした後、再相談に行くべきです。経験上、若手刑事が言いがちな失言を挙げてみます。
1.事務所が実際にあるなら詐欺じゃない
「計画的に詐欺をやるなら会社事務所が存在するはずがない」という誤った先入観からの失言です。「取り込み詐欺」や「副業詐欺」などで、詐欺師が会社組織を作り、実際に事務所を開設して看板を掲げて営業していることは珍しくありません。騙し取ったお金が目標額に達したり、警察や弁護士、消費者センターなどの追及が厳しくなってくるとある日突然事務所を畳んでどこかに逃亡します。事務所が実在することと、詐欺事件の成立には何の関係もありません。私自身、詐欺会社の事務所に何十回とガサに入ったことがあります。
2.一部でもお金を返しているなら事件じゃない
人を騙してそれにより財物または財産的利益を得たならその時点で詐欺罪は既遂(きすい)で完成しています。その後に謝罪して返金しても犯した罪は消滅しませんし、無かったことにもなりません。窃盗罪や横領罪、恐喝罪でも同じことです。したがって、犯人が被害金の一部を返金していたとしても、告訴状を不受理にする理由にはできません。ただし、被害額の全額以上を返済済みの場合、可罰性に乏しいため、検察官が起訴する可能性がほぼ無く、これを理由に事件受理を断られるでしょう。※経験上、全額以上が返金された事件で訴えたいと言ってきた方はほとんどいませんでした。
3.(発生から)時間が経ちすぎて捜査できない
公訴時効が過ぎているなら告訴状が受理されないのは当然です。しかし、刑事によっては「どうして1年以上も経ってから訴えると言ってきたんですか? 時間が経ちすぎてもう捜査できませんよ。」などと言う者がいるかもしれません。公訴時効は、暴行で3年、単純横領で5年、窃盗、詐欺、業務上横領は7年、傷害で10年です。発生から1~2年程度なら、まだまだ捜査できる期間はたっぷりあります。受理を断る理由にはできません。
4.(物的)証拠が無いから捜査できない
詐欺罪で契約書や領収書、パンフレット、名刺などの物的証拠が無い、暴行罪や傷害罪で録画も録音も無い場合、「物的証拠が全然無いなら捜査しようがありません」という刑事がいるかもしれません。「証拠が無い事件は受理しなくて良い」とは、刑事訴訟法、犯罪捜査規範のどこにも書いてありません。そもそも証拠が全くない事件はあまりありません。詐欺なら、書類が無くても、犯人とやり取りしたメールやLINEがあれば立派な証拠ですし、事件について証言してくれる協力者がいれば、その人の供述も重要な証拠になります。暴行や傷害であれば、殴られたり蹴られたりした場所が赤くなっていたり、内出血や外傷の状態も証拠ですから、消える前に写真を撮っておきましょう。ケガがあるなら医師の診断書を取っておくことはもちろん必要です。
5.○○警備で人がいないので対応できない
何年かに一度、国内でサミット(主要国首脳会議)が開催される際などには、大規模な警備体制が敷かれ、警察官は開催場所都府県に派遣されるなどして、警察署の警察官の人数が大幅に減っていることがあります。このような時期に告訴相談に行くと、タイトルのようなことを言われ、提出を待たされることがあります(実際は単なる時間稼ぎの場合が多いです)。このような場合には、警備体制がいつ終わるかを聞いて、終わったときに再訪して同じ刑事に相談してください。前回警備を理由に断られたわけですから、警備が終われば断る理由はなくなるはずです。
警察に詐欺の相談をする際に知っておくべきこと
詐欺や横領、暴行などの被害に遭った場合、まずは最寄りの警察署へ相談に行く方が多いでしょう。
しかし、相談時に対応する刑事が若手である場合、事実とは異なる発言をされたり、告訴状の受理を拒否されたりするケースもあります。
これは経験不足からくる誤解であることも多く、しっかりと準備をして臨む必要があります。
ベテラン刑事と若手刑事の違い
40代以上で巡査部長(主任)や警部補(係長)などの階級を持つ刑事は、経験豊富で対応も正確なことが多いです。
一方で、20代の若手巡査刑事だと、経験不足により誤解を招く言動が見られることがあります。
相談時には、発言内容をメモすること、「違和感」を覚えたらその場で質問するか後で確認をとることが重要です。
納得がいかない場合は、弁護士などの専門家に相談した上で、再度警察署に相談するのがベストです。
若手刑事がしがちな「誤解を招く発言」5選【詐欺相談時のトラブル回避のために】
1.「事務所があるなら詐欺じゃない」
これは誤解です。
詐欺グループは「取り込み詐欺」や「副業詐欺」の手口で、実在する事務所を構えて営業しているように見せかけることがあります。
しかし、目標金額に達したり、追及が厳しくなった途端に、突然事務所を閉鎖して逃亡します。
事務所がある=詐欺ではないという理屈は成立しません。
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「詐欺 会社 実在」「詐欺師 事務所 撤収」
2.「お金を一部返したなら事件じゃない」
詐欺罪は、**財物や財産的利益を騙し取った時点で既遂(きすい)**となります。
その後に返金があっても、罪そのものが消えることはありません。
全額以上返金された場合には、検察が起訴を見送る可能性が高いため、警察も受理を控えることがありますが、一部返金で事件にならないというのは誤りです。
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「詐欺 一部返金 罪にならない?」
3.「時間が経ちすぎて捜査できない」
たとえ被害から1年以上経っていても、公訴時効が過ぎていなければ捜査は可能です。
代表的な公訴時効は以下のとおり:
- 暴行罪:3年
- 横領罪:5年
- 詐欺・窃盗:7年
- 傷害罪:10年
発生から1~2年程度で「捜査できない」というのは誤った案内です。
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「詐欺 時効」「被害から1年 告訴できる?」
4.「証拠が無いから捜査できない」
刑事事件では物的証拠がなくても、LINEやメール、証言、写真などが立派な証拠となります。
たとえば、暴行を受けた直後の赤みやアザ、診断書なども重要な証拠です。
「証拠が無い=捜査できない」は誤った対応です。
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「詐欺 証拠 LINEのみ」「暴行 証拠 写真」
5.「警備の都合で対応できない」
国際会議(G7サミットなど)などの影響で、警察官が警備任務に派遣され、対応人員が減ることがあります。
その際に「今は人がいない」と言われる場合がありますが、それは一時的な理由であり、相談・告訴ができない理由にはなりません。
警備終了の時期を確認し、同じ刑事に再度相談するのが効果的です。
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まとめ|警察に詐欺被害を相談する際の心得
- 対応する刑事の経験や階級を意識する
- 発言はメモし、違和感があればすぐに確認
- 専門家の意見を参考にする
- 証拠が無くても相談を諦めない
告訴を断られた経験がある方も、この記事を参考に再度しっかり準備して警察に相談することで、適切な対応を得られる可能性が高まります。
被害に遭ったまま泣き寝入りせず、正しい知識と行動で自分の権利を守りましょう。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


