こんな行為、あんな行為が意外と犯罪になってしまうかもしれない例を元刑事が解説

 刑法38条の規定により「故意のない行為は罰しない」とされていますが、犯罪になるとは思っていなくても、行為自体に認識があれば犯罪になることがあります。

1.釣銭の間違い・忘れ

 コンビニなどで店員が間違えて釣銭を多く渡してくることがあります。全く気付かずに受け取ってそのまま財布に入れたのなら「故意がない」ので犯罪にはなりませんが、気付いていながら店員に教えてあげずにそのまま受け取ったり、受け取った後に気付いたのに返さなかった場合、いずれも不作為による詐欺罪となります。
 自販機の釣銭出口に、前に買ったお客さんが釣銭を取り残していることがあります。これを知っていて持ち去った場合は、窃盗罪になります。

2.銀行口座誤振込

 ごく希にですが、誰かが他の口座と間違えてお金を振り込んでくることがあります。そのことに気付いていながら、銀行に連絡等せずに、そのお金をATMで引き出した場合、窃盗罪に問われます。

3.コップの水をかける

 映画やドラマなどで、口論となって怒った女性がグラスに入った水やお酒を相手にあびせるシーンがありますが、これは暴行罪になります。着ていた衣服に大きなシミが残って消えないような場合は、同時に器物損壊罪が成立する可能性もあります。

4.借りた物を返さない

 人から預かった物、借りた物を所有者に無断で売却すれば横領罪になることはわかると思いますが、期限を過ぎたりして返還要求があるのにこれを無視して返さないだけでも抑留による横領罪になることがあります。

5.お金を返さない相手に裁判をする気がないのに「裁判所に提訴するぞ」と何度も言う

 こうした正当な権利行使や公権力に訴え出ることの予告であっても、「そのつもりがなく」「濫用」して脅せば、脅迫罪になり得るとした裁判例があります。

6.家族や友人のクレジットカードを名義人の了承を得て買い物に使う

 クレジットカード会社は、カードを貸し借りして名義人以外が使用することを禁じています。そして、カード加盟店もこのことは知っており、通常、名義人以外の者がカードを提示して商品の支払いに使用しようとした場合、取引を断ります。したがって、名義人本人になりすましてカードを提示する行為は、詐欺罪の欺罔行為に当たり、詐欺罪に問われる可能性があります。

7.マイナスドライバーをバッグや車のドアポケットに入れておく

 マイナスドライバーは、住宅などへの侵入用具として使うことができるため、「正当な理由がなく」「隠し持っている」場合に、軽犯罪法違反に問われる可能性があります。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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