被害届提出済み事件での告訴状提出は可能か?方法と注意点【元刑事が解説】

被害届提出済み事件の告訴状は提出できますか」という質問に対する答えは、「はい、可能です」
刑事訴訟法、犯罪捜査規範、警察庁通達・通知・例規、各都道府県警の通達・通知・例規には、「被害届受理事件は告訴状を受理しなくてよい」 という規定は一切ありません。


被害届提出後に告訴状を提出するべき場合

被害届を提出しただけでは、警察は検察庁への送致義務を負いません。たとえば、以下のようなケースがあります。

  • 被疑者を特定して被害届を提出したが、被疑者が犯行を否認している
  • 証拠不十分で事件が進展しない
  • こうした場合、警察の**裁量で「不送致」**処分となる可能性がある

このようなとき、告訴状を追加提出することで、事件が確実に検察庁へ送致されます。これは、告訴状を受理した警察には、事件を必ず検察庁に送致する義務があるためです。


実際の事例:被害届後の告訴状提出

私自身、現役刑事時代被害届提出済み事件で後から告訴状を受理したことが複数回あります。特に、詐欺事件などの知能犯での事例が多く、以下の理由で告訴状の受理を行いました。

  • 捜査の結果、被疑者の犯行が明らかになった
  • 被害届よりも告訴状の方が、警視庁本部刑事部の評価が高い
  • 被害者に依頼して、私が告訴状を作成し提出してもらった

被害届提出後に告訴状提出を検討すべき場合

被害届を提出しているのに、

  • 捜査が進展しない
  • 被疑者が検察庁へ送致されない

こうした状況が続く場合は、告訴状の提出を検討してください。もし、刑事から「被害届を受理しているから、重ねて告訴状を受理する意味がない」と言われた場合は、上記の理由を説明してみてください。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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