警察署の管轄地域【元刑事が解説】

 すべての警察署には、特定の管轄地域があります。例えば、A市全域を管轄する警察署は、A市内で発生した事故や事件を取り扱い、原則としてA市内のみをパトロールします。隣のB市内で発生した事件は原則として扱わず、B市を管轄する警察署へ引き継ぎます。

1. 警視庁の管轄区分の複雑さ

○○市内といった明確なエリア分けの警察署は分かりやすいですが、警視庁の管轄はより複雑です。一つの区に3~4の警察署が存在することもあり、区分は必ずしも明確ではありません。

  • 例: ○○区○○町1丁目~2丁目(15~20番を除く)はC署、それ以外はD署といった形で細かく分かれている
  • 道路の中央線で管轄を分けるのが一般的ですが、車道はE署、歩道はF署という例外も存在する
  • 駅のホームが区境をまたいでいると、ホームの位置で担当署が異なる場合もある

2. 署境で発生するトラブル

管轄が細かく設定されているため、境界線上で発生する事件や事故では、どの警察署が担当するかでもめることがあります。

  • 大きなビルが署境上に建設されている場合、ビルの東側と西側で異なる警察署が管轄することもある
  • 新設トンネル内で死亡事故が発生した際、どの署の責任となるかで議論が起こることも

3. 変死体や救急搬送時の管轄

川や海で変死体が発見された場合も、どの警察署が対応するかで問題が発生します。

  • 岸に漂着すれば、その側の警察署が担当
  • 水面を漂っている場合は、話し合いで決定することが多い

また、病院で死亡確認された場合でも、搬送元を管轄する警察署が担当するルールがあります。

  • 例: I市内で倒れた人がJ市の病院に搬送され、死亡確認された場合 → I警察署が担当
  • しかし、警察官によってはこのルールを理解していないことがあり、病院職員が管轄間でたらい回しにされることも

4. 電車内の事件の管轄

電車内での痴漢やケンカの管轄は、発生場所ではなく、関係者が降りた駅を管轄する警察署が担当します。

  • 例: 東京都内の警察署が埼玉県の迷惑防止条例違反で痴漢被疑者を検挙することがある
  • 上り電車で痴漢が発生した場合、触った場所が埼玉県内だったとしても、東京都の警察署が対応するケースも

まとめ

警察署の管轄は基本的には明確ですが、都市部や境界線上では非常に複雑になることがあります。事件や事故が発生した際には、どの警察署が対応するのかを把握しておくと、スムーズな対応が可能になります。警察署の管轄はネットで検索するとわかります。署境付近でどちらの署か不明な場合は電話をすれば教えてくれます。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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