遠方の警察署へ告訴状を提出する方法【元刑事が解説】
遠方の警察署への告訴状提出で困っていませんか?
詐欺や性犯罪などの被害を受けた際、告訴状を提出する必要があります。しかし、もし以前北海道で被害に遭い、現在大阪に住んでいる場合、大阪府警に告訴状を提出しようとしても「当署では管轄権がないため、発生場所である北海道警○○警察署に相談してください」と対応されることが一般的です。
告訴状は全国どこの警察署にも提出可能?
法律上、告訴状はどの警察署にも提出可能です。しかし、実務上は告訴状を受理した警察署が事件の捜査を行う必要があり、大阪府警が北海道で発生した事件を扱うのは負担が大きくなります。
告訴状を受理した警察署が捜査を担当する「受理処理の原則」や、事件が発生した警察署で捜査を行う「認知処理の原則」という警察の内部慣習があり、管轄外の警察署に告訴状を提出しても受理されないケースがほとんどです。
遠方の警察署に告訴状を提出する方法
告訴状を確実に受理してもらい、無駄な出費や労力を抑えるための方法をご紹介します。
① 事前に被害地の警察署へ電話相談
北海道警○○警察署に電話し、「詐欺(または性犯罪)の被害に遭い、告訴状を提出したいが、現在大阪に住んでいるため直接訪問が難しい」と相談しましょう。
② 告訴状のコピーを郵送
警察が対応可能なら、「まずは告訴状のコピーを郵送するので、内容を審査してもらいたい」と伝えます。警察の指示に従い、必要書類とともに送付します。
③ 受理の確認とスケジュール調整
郵送後、警察から「受理しますので原本と身分証明書を持参してください」との連絡があれば、「飛行機代の負担が大きいため、原本の受理と告訴人供述調書の作成を同時に行いたい」と伝えます。多くの場合、警察も柔軟に対応してくれるでしょう。
遠方への移動回数を減らす工夫
通常の手順では、北海道警に3回も出向く必要があります。
- 告訴状コピーの提出(1回目)
- 受理後、原本と証拠品を提出(2回目)
- 告訴人供述調書の作成(3回目)
1回の飛行機代が約5万円と仮定すると、合計で15万円もの交通費がかかります。しかし、事前相談と郵送を活用すれば、1回の訪問で済ませることができ、大幅な負担軽減が可能です。
まとめ|告訴状をスムーズに提出するコツ
- 事前に被害地の警察署に電話で相談
- 告訴状のコピーを郵送して審査を依頼
- 原本提出と供述調書作成を同時に行うよう調整
この方法を活用すれば、告訴状の受理をスムーズに進められるだけでなく、遠方への移動回数を減らし、費用と時間を節約できます。
告訴状の提出方法でお悩みの方は、ぜひこの手順を参考にしてください。
旧記事
仮に以前北海道に住んでいてそこで詐欺や性犯罪といった被害にあい、現在は大阪に住んでいるといった場合、告訴状を居住地を管轄する大阪の警察署に持って行っても「うちは管轄権がないので発生場所である北海道警○○警察署に相談してください」と言われてしまいます。法的には、告訴状はどこの警察署にも提出できることになっているのですが、実務上、告訴状は受けた警察署が処理しなくてはならず、大阪府警が受理してしまうと、発生場所の確認や、周辺の聞き込み、証拠の収集、防カメ画像収集、関係者の取調べなどの捜査を大阪から北海道へ逐次出張して行わなくてはならず、負担が大きすぎます。このような場合に、受けた告訴状を大阪府警から北海道警へ移送することも一応制度としては可能ですが、警察内部の慣習として「認知処理の原則」「受理処理の原則」という不文律があり、仮に大阪府警が告訴状を受理して北海道警に「移送してもいいですか」と聞いても「そっちで勝手に受理したんですからそっちで処理してください」と言われて拒否されてしまいます。では受理する前に電話して「こんな告訴相談が来てますが受理してそちらに移送してもいいですか」と聞いても「こっちで話しを聞きますから相談人に直接連絡させてください」となります。なので、最初に書いたように「うちは管轄権がないので発生場所である北海道警○○警察署に相談してください」となってしまうのです。
北海道警に直接行って相談すると一旦告訴状はコピーの預かりになるのが普通です。数日から1週間後に「受理」となれば告訴状原本と証拠品などを持参して再度北海道へ。その後数週間程度して告訴人供述調書の作成で呼び出され再再度北海道へ。これでは3回大阪と北海道を往復しないとならず1回の飛行機代が5万円とすれば合計15万円もかかってしまいます。そこで、告訴状を作成したなら、北海道警に電話して「こういう被害にあったので、告訴状を出したいのですが、飛行機代が高いので、一旦コピーを郵送するので内容の審査をお願いしたい」と相談してください。OKならばコピーを郵送して返事を待ちます。「受理しますので原本と身分証明書を持って来てください」と言われたら、「飛行機代が高いため1回で終わらせたいので、原本受理と告訴人供述調書の作成を同時にお願いしたい」と告げてください。おそらく応じてくれるはずです。これで1回の往復だけで済みます。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
