筆跡鑑定について

 偽造文書事件では筆跡鑑定が行われます。では、筆跡鑑定の鑑定結果はどれだけの確度があるのでしょうか。結論から言うと、鑑定結果の確度はそれほど高くありません。特に、鑑定する文字数が少ない場合や、わざと似せた場合、特徴点が出にくい文字だけの場合などには、かなり低いものとなります。以前こんな事件を扱いました。告訴人が有印私文書偽造で告訴状を持ってきて、そこには民間の筆跡鑑定業者による鑑定書が添付されていました。鑑定書は、偽造とされる文書の筆跡は被告訴人のものと一致するとの内容でした。この鑑定には約30万円かかったとのことでした。告訴を受理し、偽造文書の原本を証拠として領置しました。偽造文書の鑑定には、必ず原本が必要です。何らかの理由で原本が地球上に存在しない場合、警察は告訴を受理しません。なぜなら、原本でないと指紋が採れませんし、筆記部の凹みによる筆圧の強さもコピーではわかりません。また、場合によっては紙質も異同鑑定することもあります。この原本を科学捜査研究所に持ち込み、鑑定を依頼しました。結果は、民間の鑑定結果とは反対に「被告訴人の筆跡ではないと思われる」とするものでした。そもそもですが、筆跡鑑定というのは、鑑定官が文字の跳ねや止め、払いといった部分部分に特徴を見いだしてそれが似ているかどうかを主観で判断するものです。血液検査や微物鑑定のように、成分について数値がデータとして現れて客観的に判断できるものではありません。なので、科捜研の鑑定結果の末尾は毎回必ず「~と思われる。」となっています。つまり鑑定官の感想・意見に過ぎないのです。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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