もし告訴されたらどうしたらよいか
私は行政書士であり、弁護士ではないので、告訴(告発)された方の弁護をすることは当然にできません。これまで刑事として数多くの被告訴人を取り調べてきました。犯罪は憎むべきですが、被告訴人も同じ人間です。人間間違いを起こしてしまうことはあります。何かの犯罪を犯して被害者に告訴(告発)されてしまった場合、どうすべきかをアドバイスしてみます。
自分が告訴されたかどうかは、被害者と面識がある場合には、被害者から聞くことが多いと思われます。間に弁護士が入っている場合は、弁護士から聞くことになるでしょう。では、被害者と直接面識がなく、弁護士との接触もない場合には、どうやったら知ることができるでしょうか。事件の発生場所が明らかであるなら、発生場所を管轄する警察署の刑事課に行って直接尋ねる方法があります。教えてくれるかどうかは、その事件次第ですが、呼び出す手間が省けたとそのまま取調べになるかもしれません。取調べになれば、事前に「言いたくないことは言わなくていい権利があります」と供述拒否権の告知を受けますから、自分が被疑者(被告訴人)であることがわかります。そのまま取調べを受け、事実関係について正直に話し、告訴人の供述内容と概ね一致するなら、そのまま任意捜査で逮捕されずに書類送致(法的には送付といいます)されるかもしれません。
つまり、自分が告訴されたことがわかったなら、自ら警察署に出頭して刑事の取調べ受けることが有利に働く可能性があるということです。刑事も人間ですから、やってしまった犯罪を反省して素直に認める供述をするなら「こいつ、悪いやつかと思ったら意外と素直なやつだな。逮捕しようかと思ってたけど、任意捜査にしてやろう」と思うことだってあります。ただし、事件内容によります。1000万円を超える業務上横領や、被害者が大けがをした傷害事件などでは、任意捜査は難しく逮捕される可能性が高いです。
お金があるなら可能な限り告訴人に対して返済または弁済をすべきです。お金を払ったからといって罪が無くなるわけではありませんし、受理された告訴が消えて無くなるわけでもありませんが、刑事の逮捕判断、検察官の起訴判断、裁判官の判決内容に影響することは間違いありません。告訴人が必ずしも示談して告訴を取り消してくれるわけではありませんが、受け取ってくれば自分に有利に働きます。
仕事については、続けるしかありません。逮捕されてしばらく休職すると解雇となる場合もありますが、雇用主次第では釈放されるまで待っていてくれるところもあるでしょう。いつ逮捕されるかはわからないので、働けるうちは働いて少しでもお金を貯めておくべきです。
家族がいるなら内緒にしないで話しておきましょう。いずれバレますので、自分の口から説明しておいたほうが良いです。
私選弁護士を依頼できるだけのお金があるなら、刑事事件に詳しい弁護士を探して依頼することができます。示談の可能性があるならその相談もすべきです。示談が成立すれば告訴状は取消され、逮捕されることはまず無くなりますし、起訴もないでしょう。
事件の内容によりますが、スマホやPCは押収される可能性があります。いつ押収されてもいいように、こまめにクラウドにバックアップしておきましょう。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。