告訴状・告発状を受理できる者【元刑事が解説】
警察官の階級と告訴状の受理権限
警察官にはさまざまな階級がありますが、一般的に使われる「巡査」や「警部」などの呼称は略称であり、正式な階級名ではありません。
正式な警察の階級は以下の通りです。
- 司法巡査(受理不可)
- 司法警察員巡査部長(受理可能)
- 司法警察員警部補(受理可能)
- 司法警察員警部(受理可能)
※階級名の先頭に「司法」または「司法警察員」が付きます。
つまり、司法巡査以外の階級であれば、告訴状や告発状を受理できることになります。
しかし、例外的に捜査員(私服警察官)として刑事課や生活安全課で勤務する巡査は、特別に「司法警察員」としての権限を持ち、告訴状を受理できます。一方、交番勤務の若手警察官(巡査)は「司法巡査」に該当するため、告訴状を受理することはできません。
「巡査長」という階級は法律上存在しない?
「巡査長」という階級は、実は正式な警察階級ではありません。
例えば、漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両津巡査長は「巡査長」と呼ばれていますが、法律上の正式な階級は「司法巡査」となります。それでは、なぜ「巡査長」という階級が存在するのでしょうか?
この制度が誕生したのは、昭和40年前後(1960年代)。ある警察官の娘が警視総監宛に手紙を送りました。
「私のお父さんは何十年も警察官として働き、毎日遅くまで一生懸命勤務しています。でも階級はずっと巡査のままです。お父さんがかわいそうなので、何とかしてもらえませんか?」
この手紙を読んだ警視総監は感動し、一定期間巡査として勤務し功績を挙げた者が無試験で昇進できる「巡査長」という階級を創設しました。
しかし、警察の階級は**「警察法第62条」**によって定められており、警視総監の権限ではこの法律を改正することはできませんでした。そのため、現在でも「巡査長」は正式な警察階級としては存在しないのです。
特別司法警察員も告訴状・告発状を受理可能
警察官以外にも、「特別司法警察員」と呼ばれる公務員が存在し、一定の権限を持っています。例えば、以下の職種が該当します。
- 自衛隊の警務官
- 労働基準監督官
これらの特別司法警察員は、自身の所管する業務に関連する犯罪に限り、告訴状や告発状を受理できます。
例えば、労働基準監督官は労働基準法違反に関する告訴状を受理できますが、それ以外の刑事事件については受理することができません。
まとめ
- 告訴状は被害者が提出するもの、告発状は誰でも提出できるもの。
- 告訴状・告発状を受理できるのは「検察官」または「司法警察員」。
- 警察の階級によって受理権限が異なり、「司法巡査」には権限がない。
- 刑事課などの私服警察官(捜査員)は例外的に司法警察員扱い。
- 「巡査長」という階級は法的には存在せず、内部的な昇格制度としてのみ運用されている。
- 警察官以外の「特別司法警察員」も、所管業務に関する犯罪については告訴状・告発状を受理できる。
このように、警察の階級と告訴状・告発状の関係は少し複雑ですが、制度の背景を理解することで、より深く警察の仕組みを知ることができます。
告訴状は犯罪により被害を被った者が、告発状は誰でも、捜査機関に提出することができます。では、受理できるのは誰でしょうか? これは刑事訴訟法により、検察官または司法警察員と決まっています、検察事務官と司法巡査は受理することができません。ここで警察の階級の説明をします。よく言う、「巡査」「警部」などは略称であり、正式な警察の階級名ではありません。正式には、下から順に司法巡査、司法警察員巡査部長、司法警察員警部補、司法警察員警部(以上略)となり、頭に司法または司法警察員が付きます。司法は巡査だけなので、巡査以上の階級であれば誰でも受理ができることになります。少々ややこしいのですが、警察署の刑事課や生活安全課などで勤務する捜査員(私服員)は、巡査であっても例外的に司法警察員です。なので、告訴状を受理することができます。交番にいる若いお巡りさんは、司法巡査なので受理はできません。余談ですが、マンガの両津巡査長の「巡査長」ですが、実はこれは正式な階級ではありません。確かに制服には「巡査長」の階級章を付けているのですが、捜査書類を記載する際は、「司法巡査」と記載しないとなりません。「巡査長」という階級は法律上は存在しないのです。
この「巡査長」という変な階級が生まれたのにはこんな理由があります。昭和の中期頃(昭和40年前後?)、お巡りさんを父親に持つ小学生または中学生の娘さんが警視総監宛にこんな内容の手紙を書いたそうです。「私のお父さんは、何十年も警察官をやっています。毎日遅くまで一生懸命働き、休みも少ないです。でも、階級は一番下の巡査のままです。お父さんがかわいそうなので何とかならないでしょうか。」こんな内容の手紙だったそうです。これを読んだ警視総監は感動し、一定期間巡査として働いてある程度功労があった者が無試験でなれる「巡査長」という階級を鶴の一声で作ってしまったのです。しかし、さすがの警視総監も任期中に警察の階級を定めた警察法第62条を改正することまではできなかったため、未だに巡査長は法的には存在しない階級なのです。
警察官以外の特別司法警察員(自衛隊の警務官、労働基準監督署員など)も告訴状、告発状を受理できますが、あくまでも所管の取り扱い業務に関する罪だけです。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
