告発事実の書き方22(贈収賄)
私は、警視庁捜査第二課において、聴訴室で勤務する前に、短期間ですが贈収賄(汚職)事件を担当する部署にいたことがあります。贈収賄事件は、密室で行われる犯罪であり、かつ、被害者不在(国民全員が被害者とも言えますが)なので、認知することが極めて困難な犯罪です。当時、捜査第二課では、年に1、2件の贈収賄事件を検挙していましたが、そのほとんどがいわゆる「タレ込み」でした。これは贈賄側の業者が、現金等を公務員に渡してその見返りを期待していたのに、その公務員がもらうものだけもらって、見返りとなる行為をしなかったことから「仕返し」として警察にタレ込んでくるものでした。業者側も警察に捕まりたくはないので、自分たちが先に公訴時効が来るのを利用して(贈賄は3年、収賄は5年)、賄賂を渡してから3年が過ぎたタイミングでタレ込んでくるのです。そうなると、贈賄側業者は捜査に協力する単なる「参考人」ですが、公務員は収賄被疑者として逮捕されます。起訴、有罪となれば懲戒解雇となり、退職金はもらえません。数十万円から数百万円のお金を手にした代わりに、将来もらえただろう2000万円前後のお金を失うことになります。
単純収賄
告発事実
刑法第197条第1項前段 単純収賄
被告発人山元寛太は、東京都足立区都市建設部長として勤務し、同区における公共施設の建設や補修工事等の発注について業者の選定や決定についての事務を行っていたものであるが、令和6年5月7日頃、東京都荒川区荒川5丁目4番3号所在の「割烹富士」店内において、株式会社山元建設代表取締役鈴木義男から、これまで同社が足立区内の公共施設の建設請負受注に際し、被告発人に便宜を図ってもらったことへの謝礼の意味と今後も同様の便宜を依頼する意味で供与されるものであることを知った上で、現金200万円の供与を受け、もって自己の職務に関して賄賂を収受したものである。
単純贈賄
告発事実
刑法第198条 贈賄
被告発人吉野武雄は、造園工事を営む株式会社東洋造園の営業部長として同社の造園工事受注等の業務に従事しているものであるが、令和6年5月8日頃、東京都足立区足立1丁目55番55号所在の「小料理はな」において、同区立公園造成工事発注等の業務に就いている東京都足立区公園緑地課長磯部春男に対し、同人が令和3年に同区立舎人公園造成工事発注の際、同社に便宜を図ってくれた謝礼の意味と今後も同様の便宜を図ってもらう趣旨で現金300万円を供与し、もって同磯部の職務に関して賄賂を供与したものである。
受託収賄
告発事実
刑法第197条第1項前段 受託収賄
被告発人は、令和3年9月15日から警視庁足立警察署に勤務し、同署刑事組織犯罪対策課知能犯捜査係長として、犯罪捜査等を担当していたものであるが、令和4年5月8日、東京都足立区千住1丁目3番4号所在の日本料理店「出雲亭」において、探偵業を営む近藤春男から別表記載の携帯電話番号20件の使用者照会とその回答書写しの提供をしてほしい旨の請託を受け、その報酬の趣旨のもとに供与されることを知った上で、現金50万円の供与を受け、もってその業務に関して請託を受けて賄賂を収受したものである。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。