親族相盗例と相対的申告罪
刑法244条(親族相盗例)により、
窃盗、不動産侵奪、詐欺、恐喝、横領、背任
の罪(未遂を含む)は、夫婦間、直系血族(親子、祖父と孫など)、同居の親族との間で行われた場合は、刑が免除されます。つまり、直接の規定はありませんが、刑が免除される以上、逮捕も送致も起訴も事実上あり得ないということです。「親族」とは民法725条の規定に従い、6親等以内の血族、3親等以内の姻族となっています。同居でない親族間でこれらの犯罪が起きた場合は、告訴があれば罰せられます。名誉毀損や過失傷害などの「絶対的申告罪」に対して、これらは「相対的申告罪」と呼ばれます。夫婦間には、内縁関係や事実婚は含まれません。
この条文が存在する理由については、
親族間の紛争に国家か介入すべきではない
親族間の財産所有関係は明確ではないから法益侵害が小さい
親族関係という誘惑的要因により責任が減少する
などの考え方があります。
なお、この親族相盗例が適用されるのは、先に挙げた財産犯6罪と厳密にきまっており、殺人や傷害、名誉毀損など他の罪名には一切適用がありません。
告訴は、共犯者にも及びます。例えばABという二人の犯人がいた場合、A一人に対する告訴はBにも及びます。これを告訴の不可分といいます。ただし、上記6罪の場合でBが親族だった場合は、告訴の不可分の例外として、告訴の効力はBには及びません。もしもBにも処罰を求めるなら、被告訴人をAとBと記載した告訴状の提出が必要になるということです。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。