被告訴人がわからなくても告訴は可能

 犯人がわからなくても告訴(告発)は可能です。その際、告訴状の被告訴人欄には、犯人についてわかる範囲のことを記載してください。一切わからなければ「不詳」でOKです。

 告訴状を受理した警察では、提出された資料や情報から被告訴人がどこの誰であるかを捜査して解明します。詳しい手順について書くと、公務員の守秘義務違反になってしまう(退職後も守らないとなりません)ので書けませんが、一般に知られていて、問題の無い範囲で流れを書きます。

 被告訴人の電話番号がわかっているなら、電話会社に照会して回答を得ます。以前は郵送で文書を送り、郵送で回答をもらっていましたが、現在は警察の専用端末と電話会社の端末がつながっており、全て端末によって照会と回答が可能になっています。特殊詐欺の場合は、電話番号を調べても、ほぼ100%レンタル番号であり、貸主をたどっていっても犯人には到達できません。いい加減な身分確認でレンタルしている悪質業者は嫌がらせの意味も含めてガサをすることがありますが、大した痛手ではないので、そのまま営業を続ける業者が少なくありません。

 被告訴人の名前がわかっていれば、いろいろと調べる方法はありますが、名前がわからなかったり、偽名の場合は何とかして名前(本名)を解明しないとなりません。犯行が特徴的な手口であれば、過去に起きた同様手口の事件を探し出し、その犯人の写真を印刷して告訴人に見せることもあります。同じ犯人が同様の手口を繰り返すことが多い地面師詐欺や取り込み詐欺では有効な手法です。

 被告訴人の名前や生年月日がわかっても居場所がわからないことも多くあります。戸籍謄本は当然取得しますが、悪いことをして逃げ回っている人間はきちんと住民登録なんかしませんので、住民票のある場所に行ってもいないことがほとんどです。銀行口座がわかれば、使用しているATMを調べて住んでいるおおよその場所がわかることもあります。名前から使用車両のナンバーを調べることもできます。ナンバーがわかればその車がどの辺を走っているのかがわかります。

 被告訴人の住居がわかれば、捜索差押許可状と逮捕状を裁判所に請求します。住んでいるかどうかの確認は、昔はひたすら張り込みましたが、最近は遠隔カメラが主流です。朝出勤してきたら、昨日夜からの録画を早回しで見るだけなので楽なものです。出入りの時間もわかりますから、何時頃に行けばいるのかもわかって便利です。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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