親告罪の告訴期間とは何か
刑事訴訟法235条により、親告罪の告訴は「犯人を知った日から6か月以内にしなければならない」ことになっています。
親告罪とは、過失傷害罪、名誉毀損罪、侮辱罪、器物損壊罪、親族間の窃盗罪・詐欺罪・横領罪・背任罪などがあります(他にもあります)。親告罪の罪は、刑法のその条文の後ろに「告訴がなければ公訴を提起することができない」との一文があります。親告罪ではない犯罪(窃盗、詐欺、横領、暴行、傷害、性犯罪等)には、告訴期間の適用がないので、公訴時効期間内であれば、いつでも告訴することができます。
「犯人を知った日」とは、犯人の氏名や住所などがわかればその時点、これらがわからなくても顔をはっきり見て記憶しており、後で本人又は写真等を見れば特定・抽出できるような場合でも「知った日」になります。暗闇の中での犯行で、犯人の顔は輪郭しかわからない程度であれば「知った日」にはなりません。なお、刑事訴訟法第55条の規定により、知った日の数え方は初日を算入せず、知った日の翌日が1日目となります。末日が土曜日、日曜日、祝日の場合はこれを算入せず、これらの日の翌日が末日となります。これらの数え方は公訴時効の数え方と異なりますので注意が必要です。
ネット上の書き込みによる名誉毀損罪や侮辱罪の場合、その書き込みが放置されたまま誰でも見られる状態が続いていると、犯行は継続しているものとして公訴時効は進みません。告訴期間もその適用を受けますので、書き込みが消えない限りは告訴期間の時計の針も進みません。つまり、1年前に書かれた書き込みで、その時点で犯人が誰かわかっていたとしても、現在書き込みが残っていればいまだ告訴ができるということです。
非常にレアケースではあると思いますが、未成年者が親告罪の被害にあい、犯人を知った日から6か月を超過して告訴できなくなったとしても、親権者である両親がその後に事件と犯人を認知した場合、両親の告訴期間はその時点から開始されるので、法定代理人として告訴が可能です。(最高裁、昭和28.5.29)
告訴期間は、外国の代表、外国の施設には適用されません。
共犯事件で被告訴人が2人以上いる場合、犯人のうち一人を知れば、他の被告訴人を含めた事件全体の告訴期間が始まります。よって、告訴期間が超過すれば、誰かわからない共犯者についても告訴することができなくなります。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。