告訴事実の書き方27(不同意わいせつ罪)

 不同意わいせつ罪は、被害者を「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」にさせ、あるいはその状態を利用してわいせつな行為を行うことで成立します。

 「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」というのがわかりにくいのですが、極めて簡単に言えば「抵抗できない又は『嫌だ』と言えない状態」のことです。この状態にする手段又は利用する状態は下記のとおりです。

1 暴行又は脅迫を加える

2 心身の障害を利用する

3 過度のアルコールや薬物を与え抵抗できない状態にする

4 睡眠や昏倒等意識がもうろうとした状態にあることを利用する

5 同意しない意思を形成したり表明したりする時間を与えない

6 恐怖・驚愕などにより抵抗できない状態を利用する

7 過去の暴行・虐待で生じた無力感等により抵抗できない状態を利用する

8 経済的・社会的地位に基づく関係性から不利益が生じることへの不安感から抵抗できない状態にする

 

 電車内での痴漢行為などで、本罪に該当するのか、迷惑防止条例違反になるのかが度々議論になるのですが、明確な基準はなく、個々の事件によって判断するしかありません。警察の現場での判断基準としては下記のようになります。

1 衣服の上からそっとなでる→条例違反

  衣服の上から強くもむ→不同意わいせつ罪

2 スカートの中に手を入れ下着の上から陰部をなでる→条例違反

  下着の中に手を入れて陰部をなでる→不同意わいせつ罪

3 自分の股間を衣服越しに押しつける→条例違反

  自分の陰茎を取り出し被害者に握らせる→不同意わいせつ罪

 なお、犯行態様による区別は上記のとおりですが、迷惑防止条例は公共の場所であることが条件ですので、室内で発生すれば、不同意わいせつ罪の適用を考えるしかありません。

 本罪は、旧来「強制わいせつ罪」という罪名でしたが、令和5年の刑法改正で現在の罪名に変更されています。

 暴行脅迫による不同意わいせつ罪の告訴事実の記載例です。

 心身障害の場合の告訴事実記載例です。

酒を飲ませた犯行の告訴事実記載例です。

睡眠その他意識が明瞭でない場合の告訴事実記載例です。

 電車内犯行(いとまがない場合)の告訴事実記載例です。

恐怖、驚愕させた場合の告訴事実記載例です。

虐待に起因する心理的反応を利用した場合の告訴事実記載例です。

経済的、社会的地位利用の告訴事実記載例です。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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