告訴事実の書き方24(器物損壊罪)
器物損壊罪は、他人の物を壊し、又は他人の飼っている動物を傷害することで成立します。本罪の対象になる「物」とは手で触れる物質のことですので、パソコン内の電磁的データを消去させた場合には、本罪ではなく刑法第234条第2項の「電子計算機損壊等業務妨害罪」になります。
「損壊」の意味については、「物の効用を害する一切の行為」とされていますが、拭けばすぐに落ちるような汚れを付けたり、はめれば容易に元に戻るような分解行為は含まれません。また、絶対に見つからないような場所に隠匿、投棄した場合にも成立します。有名な判例で、食器に放尿した行為が本罪に当たるとされたケースもあります。
動物の「傷害」については、ケガを負わせることは当然、帰巣する習慣のない個体を野に放して逃がす行為も含まれます。
本罪には未遂規定はなく、過失罰もありません。
本罪は、親告罪ですので、公判請求のためには告訴が必要で、犯人を知ってから6か月以内という告訴期間の規定があります。
建物の壁や屋根を壊すと建造物損壊罪になりますが、建造物のうち取り外せて建物と一体でない部分(雨戸、障子、窓ガラス、門など)を壊すと本罪が適用されます。
本罪は、旧来「器物毀棄罪」という罪名でしたが、言葉が古くてわかりにくいという理由で刑法改正の際に罪名変更されました。
器物損壊罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第261条 器物損壊
被告訴人は、令和6年5月9日午後11時0分頃、東京都西東京市本町1丁目5番6号島田屋ビル2階所在の告訴人が経営する居酒屋春店内において、店のサービスが悪いと因縁を付け、店内壁面に設置されていた液晶テレビ(シャープ製、50型、時価約5万円相当)を床に叩きつけて液晶画面を割る等し、もって、告訴人所有の器物を損壊したものである。
動物の傷害については、人間の傷害事実を参考にしてください。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。