告訴事実の書き方22(背任罪)

 背任罪は、他人のために事務をする者が、自己又は第三者の利益を図り、あるいは被害者に損害を与える目的で、自己の任務に背く行為をして、被害者に財産上の損害を与えるという犯罪です。自己の利益で考えた場合、限りなく(業務上)横領罪に近いのがわかると思います。では、どうやって横領罪と背任罪を見極めるかと言いますと、事務員が組織の金を自分のものにして組織に損害を与えたという事件であれば、通常横領罪が成立するはずです。しかし、滅多にありませんが、横領罪に馴染まないケースがあります。例えば、組織の現金を家に持ち帰ったが、1円も使わずにゴミとして捨ててしまったような場合です。窃盗罪も横領罪も財産犯なので、不法に得た財産は、その経済的な用法によって費消するとの目的が必要です。窃盗罪の場合、不法に得た金品を破壊又は投棄すれば窃盗罪ではなく、器物損壊罪になります。横領罪で考えれば、不法に得た金品の投棄は、背任罪で言う「被害者に損害を与える目的」に該当しますので、背任罪で処理するという選択になるのです。よって、背任罪というのは、横領罪が成り立たないときの最後の頼み綱のような側面を持った珍しい罪種とも言えます。なお、実務で背任罪を事件化する機会はそうそうありません。先ほども説明したとおり、通常は横領罪が成り立つことがほとんどだからです。

 銀行員による不正融資背任罪の告訴事実記載例です。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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