告訴事実の書き方22(背任罪)【元刑事が解説】
背任罪とは?横領罪との違いと実務での適用事例
背任罪は、他人のために事務を行う者が、自己または第三者の利益を図り、または被害者に損害を与える目的で、その任務に反する行為をして、被害者に財産上の損害を与える犯罪です。特に、自己の利益を追求する場合、横領罪に似ている部分が多いため、両者の違いを理解することが重要です。
横領罪と背任罪の違い
横領罪と背任罪の違いを見極めるポイントは、事件の内容によって異なります。例えば、組織の金銭を自分のものとして使用し、組織に損害を与えた場合、通常は横領罪が成立します。しかし、例外的なケースもあります。例えば、組織の現金を家に持ち帰り、1円も使わずに捨ててしまった場合、これは横領罪には該当しませんが、背任罪が適用されることになります。
横領罪と背任罪の違い:不法に得た財産の扱い
横領罪や窃盗罪は、財産犯であり、不法に得た財産をどのように扱うかが重要なポイントです。不法に得た金品を破壊または捨てる行為は、窃盗罪ではなく器物損壊罪に該当します。一方、横領罪では、不法に得た財産を捨てる行為が、背任罪における「被害者に損害を与える目的」に該当し、その結果として背任罪が成立することになります。
実務での背任罪の適用
実際の法務で背任罪が適用されるケースは非常に稀です。ほとんどの場合、横領罪が成立します。しかし、背任罪は横領罪が成立しない場合の最後の手段として重要な役割を果たします。特に組織内での財産管理や経営に関わる事案で、横領罪と背任罪の線引きを理解しておくことは、法的な判断を下す上で非常に重要です。
なお特別背任罪は刑法ではなく会社法に規定された犯罪です。会社の取締役が背任罪を行うことで成立します。犯罪の態様自体は刑法の背任罪と全く同じです。
まとめ
実務では背任罪は稀だが、横領罪が成立しない場合に重要となる。
背任罪は横領罪と似ているが、目的が異なる。
横領罪が適用される場合が多いが、特定のケースでは背任罪が成立する。
不法に得た財産を捨てる行為が背任罪につながる場合がある。
銀行員による不正融資背任罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第247条 背任
被告訴人は、東京都稲城市に本店を置く株式会社稲城銀行(告訴人)本店営業部長として、同部の業務全般を統括し、顧客に営業資金を貸し付けるに当たっては、関係法令及び同行定款や規定に基づいて、融資先の経営状態等について厳正に審査し、また確実な担保を設定して、同行のために融資金回収に万全の措置を取るべき任務を有していたものであるが、令和5年4月3日、上記本店営業部において、株式会社印度の利益を図る目的をもって、被告訴人の任務に背き、同社には債務返済能力が無く、さらに担保となるべく資産も無く、近い将来にまとまった資金の入金予定も無いことを知りながら、何の担保も設定せず、同社に対して5億5000万円を貸し付け、もって、同行に同額の財産上の損害を加えたものである。
説明で挙げた現金投棄の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第247条 背任
被告訴人は、東京都品川区大井町1丁目4番6号株式会社アドレ(告訴人)の経理課員として勤務し、同社のため、同社の預貯金及び現金の保管と管理、経費や公租公課の支払、給与計算とその支払などの業務に従事していたものであるが、その任務に背き、同社の資金を投棄して同社に損害を与えようと企て、令和6年4月4日午後2時30分頃、同区大井町1丁目4番18号所在の三井銀行大井町支店において、同支店に開設された同社名義口座(当座1234567)から現金1000万円を引き出した上、これを東京都大田区仲六郷1丁目56番地被告訴人方に持ち帰り、翌4月5日午前6時30分頃、同現金を大田区指定の可燃ゴミ袋に入れた上で、告訴人方前路上に設置されたゴミ集積場にゴミとして投棄して回収不能ならしめ、もって、同社に同額の財産上の損害を与えたものである。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


