告訴事実の書き方20(強盗罪)
一口に強盗罪と言っても、刑法での条文は第236条から第243条まで8つもあり、また罪名も態様によって幾つにも分かれています。主な罪名は、強盗罪、強盗予備罪、事後強盗罪、強盗致傷(傷人)罪、強盗致死(殺人)罪、強盗・不同意性交等罪、強盗・不同意性交等致死傷罪などがあります。
警察内部では強盗罪は指定重点犯罪となっており、いざ発生すると現場には、捜査一課やら機動捜査隊やら現場鑑識やらが来て大騒ぎになり、被害者から状況聴取後はすぐに被害届を取って捜査が進みます。告訴する機会はあまりないかもしれません。
強盗予備罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第237条 強盗予備
被告訴人は、強盗の罪を犯す目的で、令和6年5月7日午後10時30分頃、出刃包丁1本を所持し、東京都杉並区杉並本町2丁目3番5号吉田義男方前路上において、同宅に侵入しようと金品強取の機会をうかがい、もって強盗の予備をしたものである。
屋外強盗罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第236条第1項 強盗
被告訴人は、令和6年7月5日午後11時0分頃、埼玉県志木市本志木5丁目4番先路上において、帰宅中だった告訴人に対し、やにわに両手で告訴人の首を絞め、「金出せよ。声出したら殺すよ。」と申し向けて脅迫し、その反抗を抑圧した上、告訴人所有の手提げバッグ内から現金5万円を強取したものである。
万引き犯人による事後強盗罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第238条、同法第240条 事後強盗致傷
被告訴人は、令和6年5月7日午後2時0分頃、埼玉県吉川市南吉川町4丁目45番地所在のスーパー吉川南吉川店において、ウイスキー1本他2点(販売価格合計5300円)を窃取し、同店正面出入口を出たところで保安員安田加奈子(当時44歳)から「レジを通してない商品がありますよね。」と声をかけられるや、逮捕を免れるため、同人の顔面を両手の手拳で数回殴打し、その場に転倒した同人の背中付近に数回足蹴りするなどの暴行を加え、同人に対し全治約1か月を要する顔面打撲、肋骨骨折、背部打撲傷の傷害を負わせたものである。
はじめから強盗と不同意性交の犯意があって実行してケガを負わせた場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第241条第1項 強盗・不同意性交等致傷 ※240条は付きません。
被告訴人は、告訴人から現金を強奪するとともに告訴人と性交しようと考え、令和6年6月4日午後11時0分頃、神奈川県厚木市厚木町1丁目3番55号告訴人方において、告訴人に対し、両手手拳で告訴人の顔面を数回殴る暴行を加え、その反抗を抑圧して、告訴人所有の財布内から現金4万円を強取するとともに、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせて告訴人と性交し、その際、前記暴行により、告訴人に加療約20日間を要する顔面打撲等の傷害を負わせたものである。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。