告訴事実の書き方17(信用毀損罪)
信用毀損罪は、虚偽の風説(うわさ)を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損した場合に成立します。「人」には自然人のほか法人も含まれます。
名誉毀損罪との区別ですが、名誉毀損罪が「名誉」を保護法益としているのに対し、本罪は人(法人)の「支払能力・支払意思」又は「商品の品質」に対する社会的信頼であり、経済的側面を保護法益とするものであり、名誉毀損罪とは明白に異なります。したがって、「○○社長は人使いが荒くて社員がかわいそうだ。」などの噂を流しても、○○社長の経済的側面について触れたものではないので本罪は成立しません。
また、名誉毀損罪が、真実であれ虚偽であれ事実の摘示が成立条件であるのに対し、本罪は「虚偽」であることを成立条件としています。この虚偽性については、事実無根である場合はもちろん、一部が虚偽であっても成立するとされています。したがって、会社製品の実際の欠点に関する情報を幾ら流しても本罪は成立しません。
本罪は名誉毀損罪、侮辱罪と異なり、非親告罪のため告訴は必須ではありません。また未遂規定はありません。
信用毀損罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第233条 信用毀損
被告訴人は、JR常磐線北松戸駅前においてラーメン店「しむろ」を経営するものであるが、同駅前の近隣に在する告訴人が代表取締役を務める株式会社紅葉「ラーメン店添加一品」が人気であることを妬み、同店の信用を失墜させようと企て、令和5年10月1日頃、株式会社ゼロワンが運営するインターネットサービスである食べマルの前記「添加一品」のクチコミ欄に、「添加一品は出汁に保健所でと殺された犬や猫の肉を使ってます。」などと書き込み、嘘を言って虚偽の風説を流布し、もって、前記「ラーメン店添加一品」の信用を毀損したものである。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。