告訴事実の書き方14(保護責任者遺棄罪)
保護責任者遺棄罪は、高齢者、幼年者、障害者、病人などを「保護すべき責任のある者」が、救護等の義務を果たさずに放置して危険な状態にすることで成立します。その結果、死亡させれば、保護責任者遺棄致死罪になります。ただし、殺意を持って、乳児に長時間ミルクを与えず餓死させれば、本罪ではなく殺人罪が成立します。
「保護すべき責任のある者」とは、親、家族、雇い主、教師などが挙げられます。変わった例としては、某有名俳優がマンション内で女性と一緒に合成麻薬を摂取した後、女性が意識を失いそのまま死亡した事件で、「すぐに119番していれば助かったかもしれない」として保護責任者遺棄罪で有罪の判決を受けています。
道ばたで知らない人が倒れて苦しんでいたり、川で溺れて助けを求めている人がいたとして、偶然通りかかった通行人は「保護すべき責任のある者」ではありませんので、救護も通報もしないで歩き去っても本罪は成立しません。
幼児置き去りの保護責任者遺棄罪の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第218条第1項 保護責任者遺棄
被告訴人は、福島県福島市上総3丁目345番地新上総マンション205号室に居住し、前夫である新田俊郎(告訴人)との間に生まれた長女磯部かおり(当時2歳5か月)を養育していたものであるが、収入がなく、貯金も使い果たしたことから、東京に出て住み込みの風俗店で働こうとしたが、長女は足手まといになることから置き去りにしようと考え、令和6年6月8日午前10時0分頃、長女を保護すべき責任があるのに、長女を前記室内に単独で置き去りにして外出し、もって、幼年者を遺棄したものである。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。