告訴事実の書き方12 (虚偽告訴罪)
虚偽告訴罪は、特定の人物に刑事上の処罰を受けさせる目的で、捜査機関(警察、検察等)に対して、虚偽の申告をすることで成立します。犯人の人物を特定せず、単に「駅前で人が包丁で刺されています。」と嘘の通報を警察官にした場合は、軽犯罪法の虚偽申告にしかなりません。
虚偽告訴罪は「告訴」が罪名に入っているので、「告訴」しなければ成立しないと思われがちですが、実際は警察官等に対して口頭申告でも、被害届の提出であっても成立します。この点、罪名が紛らわしいので、「虚偽処罰申告罪」のような罪名への変更があってもいいかなと思います。なお、本条に未遂規定はなく、捜査機関に申告した時点で着手があり同時に既遂になります。よって申告や被害届が受理されたかどうかは本罪の成立に影響しません。
嘘の虚偽告訴罪で人を訴え出た場合、当然にこれも虚偽告訴罪が成立します。
口頭で虚偽告訴を行った場合の告訴事実記載例です。
告訴事実
刑法第172条 虚偽告訴
被告訴人は、告訴人が詐欺の犯罪を犯したことがないのに、告訴人に刑事上の処分を受けさせる目的で、令和6年7月7日午後1時0分頃、東京都葛飾区東葛飾1丁目2番5号所在の警視庁堀切警察署堀切東交番において、同交番で勤務中であった同署地域課司法警察員巡査部長山本大悟に対し、「私の中学校時代の同級生である吉岡洋介(告訴人)が、北千住駅近くのマンションで振り込め詐欺のかけ子をやって年寄りを騙して大金を受け取っています。お年寄りを騙すなんて許せないので逮捕して刑務所に送ってください。」などと虚偽の申告をしたものである。
郵送で告発状を送付した場合の告訴事実例です。
告訴事実
刑法第172条 虚偽告訴
被告訴人は、告訴人が覚醒剤を所持したことも使用したこともないのに、告訴人に刑事上の処分を受けさせる目的で、令和6年5月7日頃、東京都墨田区又はその周辺において、警視庁新宿警察署長宛てに、告訴人が1年以上前から告訴人自宅内等で常習的に覚醒剤を吸引等している旨の虚偽の事実を記載した告発状を作成した上、同日頃、これを同都墨田区内から同都新宿区新宿4丁目55番78号警視庁新宿警察署長宛てに郵送して、同月9日午前10時10分頃、同署長に到達させて虚偽の申告をしたものである。
淺利 大輔
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。