告訴事実の書き方4(脅迫罪)

 脅迫罪は、他人又はその親族の「生命、身体、自由、名誉、財産」に対して害を加えることを告知した場合に成立します。具体的に例を挙げます。

「生命」~殺すぞ。

「身体」~殴るぞ。ケガさせるぞ。

「自由」~拉致するぞ。ここに閉じ込めるぞ。

「名誉」~裸の写真をネットに公開するぞ。

「財産」~有り金持って行くぞ。車を燃やすぞ。

などになります。よく問題になるのが、「謝罪しなかったら、警察に言うぞ。」「金返さなかった裁判するぞ。」などと、「害悪」とは言えない社会的に正当な行為の告知が脅迫罪になるかどうかという点です。これについて古い裁判例では「害悪の告知は必ずしも違法である必要はない。」としています。しかし、実際には、一定の約束事やルールに反した者に対し、期限を設けて是正を求め、履行されなかった場合に関係官公庁に届け出等する旨の警告や通知は広く行われていることであり、これを脅迫罪として問擬するのは適当ではなく、濫用されない限り違法性は阻却されるとされています。

 脅迫罪の告訴事実の記載例です。

解説

 「語気鋭く申し向け」の部分は「怒号し」「怒鳴りつけ」「大声で叫び」などでもいいでしょう。

メールによる脅迫の記載例

解説

 被告訴人の送信場所についてはわからない場合が多いでしょうから、「住居地又はその周辺」と記載すればいいでしょう。

 裸の画像をメールで送信した場合の記載例

告訴事実

刑法第222条 脅迫

 被告訴人は、令和6年7月下旬まで告訴人と交際してものであるが、その頃、告訴人から別れを告げられたことを恨み、告訴人を脅迫しようと企て、令和6年9月7日午後5時0分頃、東京都府中市又はその周辺から、被告訴人所有のスマートフォンを使用して、「お前が俺をバカにするから制裁を加えることにしました。この画像を地球上全てのSNSに実名入りで貼りまくります。」との内容のメールに告訴人の裸体画像データを添付したメールを、東京都三鷹市下連雀9丁目5番4号告訴人方にいた告訴人のスマートフォンに送信して受信、閲覧させ、もって告訴人の名誉等に害を加える旨を告知して脅迫したものである。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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