告訴事実の書き方3(暴行罪・傷害罪)

 今回は、暴行罪と傷害罪の告訴事実をご案内します。態様にもよりますが、一般的には詐欺罪などと比べてとても簡単な部類の事実だと思います。まず、暴行罪ですが、よくある態様としては、手拳(握りこぶし)で殴る、足で蹴る、手で押し倒す、水をかける、物を投げつけるなどが挙げられます。その結果としてケガ(内出血含む)を生じると傷害罪になりますので、加えられた攻撃が比較的軽く、暴行の瞬間には痛みを感じてもすぐに引いたような場合が該当します。回数的には、何十発も殴られれば普通はどこかケガをしますので、暴行罪の場合は2、3回程度がほとんどでしょう。暴行罪の告訴事実記載例です。

解説

 日時は、暴行罪の場合、○○分頃から○○分頃までの間とせず、○○分頃とするのが一般的です。2、3回殴る程度であれば、せいぜい2、3分程度でしょうから、あえて「4時0分頃から4時3分頃までの間」とする必要もないからです。ただし、最初の攻撃から最後の攻撃までが明らかに10分以上あったと見なされる場合には「0分頃から10分頃までの間」としても構いません。

 発生場所については、道路上であれば事例のように記載します。目の前が店舗等であれば「○丁目○○番地セブンイレブン○○駅前店前路上」と記載する方法もあります。建物内であれば「株式会社山田商事1階エレベーターホール前」のように記載します。

 暴行時の文言については、だらだら長く記載する必要はなく、事例くらいの長さで十分です。無言だった場合は何も記載しないか、前後関係から理由が明白な場合は「○○先路上において、告訴人とすれ違う際に傘と傘がぶつかったことに激高し、右手拳で・・・」などと記載してもいいでしょう。

 攻撃の態様については、被告訴人が何(右手なのか左手なのか、それとも物なのか)で、告訴人のどこ(左頬なのか右頬なのか、右足なのか左足なのか)を何回攻撃したかを記載します。被告訴人が左右どちらの手で殴ったか思い出せない場合は「左右いずれかの手拳で・・・」と記載します。攻撃回数も同様に、思い出せない場合は「4、5回程度」などと記載します。

 次は傷害罪の告訴事実記載例です。

解説

 先の暴行罪の告訴事実と比べていただいてわかるように、結語部分以外は全く同じです。というのも、傷害罪は暴行罪の結果的加重犯であり、ケガがあれば傷害罪、無ければ暴行罪という違いでしかありません。ケガの負傷名や全治期間などは医師の診断書によります。何らかの理由で診断書が無い場合には「全治不明の左頬打撲傷等の傷害を・・・」などと記載します。注意しないといけないのは、診断書の期間が「全治」とある場合と「加療」とある場合がありますので、正しく記載します。診断書は無いけれど、診察した医師の口頭説明だけあった場合は「全治10日間を要する見込みの・・・」などと記載します。

 PTSDの場合

 傷害致死

 同時傷害


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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