告訴事実の書き方2(侵入窃盗)【元刑事が解説】
基本編に続き、今回は侵入窃盗(空き巣)の場合の告訴事実の書き方をご案内いたします。侵入窃盗とは、屋外で行われる自転車盗や置き引きなどとは違い、他人の住居等入ってはいけない場所に侵入して盗みを行う犯罪手口です。置き引きなど非侵入窃盗の場合、罪名は窃盗罪だけですが、侵入窃盗の場合は、住居侵入罪+窃盗罪と二つの罪に該当することになりますので、告訴事実もそのように作成しないとなりません。
なお、このように二つの罪が「手段」と「目的」の関係にあることを「牽連犯」(けんれんはん)と言います。私文書偽造、同行使罪と詐欺罪の関係も同じです。このような場合、重い方の罪の罰則によって判決が下されます。
告訴事実
刑法第130条、同法第235条 住居侵入罪 窃盗罪
被告訴人は、令和6年8月31日午後4時0分頃から同日午後5時0分頃までの間、現金等窃取の目的で、埼玉県吉川市○○町2丁目200番地所在の告訴人方にベランダの窓ガラスを何らかの方法によって割ってクレセント錠を解錠して侵入し、告訴人の不在中、居間のテーブル上に置いてあった封筒内から、告訴人所有の現金15万円を抜き取り、窃取したものである。
解説
犯行日時については、防犯カメラ等があればそこに記録されている日時、無い場合は、告訴人が出かけてから帰宅したまでの時間とします。侵入場所と侵入方法はわかる範囲で記載し、窓に鍵をかけていなかった場合は、「無施錠のベランダ窓から侵入し」のように記載します。盗まれた物が大量の場合は、「居間のタンス内等から別紙被害品一覧表記載の現金10万円他腕時計等30点(時価合計約40万円相当)を窃取したものである。」などと記載します。別紙の記載方法はこの表を参考にしてください。

被害にあった家に家族と一緒に住んでいて、盗まれた物の所有者が異なる場合には、別表に「所有者」の列を設けてそこに氏名のみを記載します。
侵入窃盗(空き巣)の告訴事実の書き方
侵入窃盗(空き巣)は、住居などの侵入禁止場所に入り込んで財物を盗む犯罪行為です。本記事では、侵入窃盗の告訴事実の正しい書き方を詳しく解説します。窃盗罪単独の非侵入窃盗(置き引きや自転車盗難)とは異なり、侵入窃盗は「住居侵入罪(刑法第130条)」と「窃盗罪(刑法第235条)」の二つの罪に該当します。そのため、告訴状を作成する際には、両方の罪名を適切に記載する必要があります。
告訴事実を作成する際の重要ポイント
① 犯行日時の記載方法
侵入窃盗の発生日時を明確に記載することが重要です。
- 防犯カメラ映像がある場合 → 映像に記録された時間を基に記載
- 証拠がない場合 → 被害者(告訴人)が外出した時間から帰宅までの間を記載
例:
「令和6年8月31日午後4時0分頃から同日午後5時0分頃までの間」
② 侵入経路・方法の詳細記載
侵入窃盗の手口をできる限り詳細に記載します。窓ガラスの破壊や鍵の解錠方法など、判明している事実を具体的に記しましょう。
例:
- 窓ガラスを破壊した場合:
「ベランダの窓ガラスを何らかの方法で割り、クレセント錠を解錠して侵入し…」 - 無施錠だった場合:
「無施錠のベランダ窓から侵入し…」
③ 被害品の具体的な記載
盗まれた財物の詳細をできる限り正確に記載します。被害品が多数ある場合は、別紙「被害品一覧表」を作成し、それを添付するのが望ましいです。
例:
- 単一の被害品:
「居間のテーブル上の封筒内から現金15万円を窃取した。」 - 多数の被害品:
「居間のタンス内等から、別紙被害品一覧表記載の現金10万円、腕時計30点(時価合計約40万円相当)を窃取した。」
告訴事実作成時の注意点
被害品が多い場合は一覧表を別途作成し、告訴状に添付すること
事実を省略せず詳細に記載すること
被害の状況を正確に伝えるため、侵入方法や被害品の記述を明確に
防犯カメラ映像や目撃証言があれば、それを証拠として活用
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淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
