公訴時効と告訴期間は違います【元刑事が解説】
【混同しやすい刑事手続の重要ポイント】
告訴事件のご相談をお受けしていると、**「公訴時効」と「告訴期間」**を混同されている方が非常に多くいらっしゃいます。
この二つは名前が似ているものの、意味も性質も全く異なる制度です。誤解したまま行動すると、「本来は処罰できたはずの事件が、二度と告訴できなくなる」という重大な結果を招くこともあります。
この記事では、公訴時効と告訴期間の違いについて、できるだけ専門用語を使わずに解説します。
公訴時効とは?【起訴できる期限】
公訴時効の基本的な意味
「公訴」とは、検察官が裁判所に対して被疑者を処罰するための裁判を求めることをいい、一般的には「起訴」と呼ばれます。
この起訴ができる期限を公訴時効といいます。この期間を過ぎてしまうと、被害者は被害届を出すことも告訴状を出すこともできなくなります。
民事事件の「消滅時効」と区別するため、刑事事件では「公訴時効」という用語が使われます。
公訴時効の起算点
公訴時効は、犯罪行為が完了した日から進行します。
民事のように「被害者が気付いた日」は一切関係ありません。
具体例は以下のとおりです。
- 暴行罪・傷害罪:殴る・蹴るなどの行為が行われた日
- 窃盗罪:財物を盗んだ日
- 詐欺罪:被害者が金銭や財物を渡した日
公訴時効の停止
公訴時効は、次のような場合には進行が停止します。
- 犯人が海外へ逃亡している場合
- 共犯者の裁判が継続している場合
公訴時効の期間
公訴時効の期間は、犯罪の法定刑の重さによって定められています。
- 拘留・科料のみ:1年
- 5年未満の拘禁刑または罰金:3年
- 10年未満の拘禁刑:5年
- それ以上の重い犯罪:さらに長期
なお、殺人罪など一部の重大犯罪については、公訴時効が撤廃されています。
告訴期間とは?【親告罪だけに存在する期限】
告訴期間が存在する犯罪
すべての犯罪に告訴期間があるわけではありません。
告訴期間が存在するのは、**「親告罪」**と呼ばれる一部の犯罪のみです。
親告罪とは、被害者の告訴がなければ起訴できない犯罪をいいます。
代表例は以下のとおりです。
- 名誉毀損罪
- 侮辱罪
- 過失傷害罪
- 器物損壊罪
- 信書開封罪
告訴期間は「犯人を知った日」から6か月
告訴期間とは、被害者が犯人を知った日から6か月以内に告訴しなければならないというルールです。
ここでいう「犯人を知った」とは、
- 氏名や住所が判明した場合
- 後日顔を見て「この人が犯人だ」と断定できるほど明確に認識した場合
も含まれます。
告訴期間は絶対に停止しない
非常に重要な注意点として、告訴期間は一切停止しません。
- 犯人が逃亡していても
- 共犯者の裁判があっても
6か月と1日を経過した時点で、告訴は永久に不可能になります。
その結果、犯人は二度と刑事処罰を受けないことになります。
公訴時効と告訴期間の違い【比較まとめ】
| 項目 | 公訴時効 | 告訴期間 |
|---|---|---|
| 対象 | 原則すべての犯罪 | 親告罪のみ |
| 起算点 | 犯罪が完了した日 | 犯人を知った日 |
| 停止 | あり(逃亡等) | なし |
| 期間 | 犯罪の重さで異なる | 一律6か月 |
| 経過後 | 起訴できない | 告訴自体が不可 |
まとめ|告訴を検討している方は早期相談が必須
「公訴時効はまだ先だから大丈夫」と思っていても、告訴期間がすでに経過していれば告訴はできません。
特に、名誉毀損・侮辱・器物損壊などは、知らないうちに告訴期間が経過してしまうケースが非常に多い犯罪です。
親告罪の被害に遭った可能性がある場合は、できるだけ早く専門家に相談することが重要です。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


