警察が被害届・告訴状・告発状を受理してくれない場合の理由別対応方法【元刑事が解説】
1.「事件にならない」「犯罪が成立しない」と言われた場合
こう言われた場合は、「なぜ犯罪が成立しないのか」について掘り下げて質問してください。納得いけばあきらめるしかありませんが、納得できないときは、弁護士に相談する方法があります。弁護士にもよりますが、30分以内なら5000円程度で相談を聞いてくれるところがあります。お金をかけたくなければ、ChatGPTなどのAIに聞く方法もあります。
2.「(公訴)時効が成立している」と言われた場合
民事(民法)の時効と異なり、刑事事件の時効は、犯罪行為が終了した日から時効時計の針が動き出します。傷害事件なら犯人が暴行を行った日、窃盗事件なら被害品が盗まれた日、詐欺事件なら騙された被害者が金品を犯人に交付した日となります。ネット上の名誉毀損・侮辱については、書き込みや画像がネット上に残っている限りは犯行継続中と見なされるため、時効時計の針は動きません。ネット上から削除されるか、犯人がその要請をした日から動き出します。
原則として、時効が過ぎてしまった場合は、どう頑張っても事件は受理されません。例外としては、犯人が海外に逃亡している場合や、共犯者の刑事裁判が継続中の場合で、このようなときは時効が停止します。
3.「(犯人が)返金しているから事件じゃない」と言われた場合
経験の浅い警察官の中にはこのような言葉で受理を断る人がたまにいます。これはもちろん間違いです。犯罪は、犯罪行為が終わった時点で成立し、事後行為によって消滅することは絶対ありません。その点を主張して受理するように要望してください。ただし、財産犯(窃盗、横領、詐欺など)で、被害金が全額以上返金されている場合、起訴される可能性は限りなくゼロに近いため、告訴する意味はほとんどないとも言えます。
4.「忙しくて捜査できない」と言われた場合
これも若い警察官が言いがちな逃げ台詞です。もちろん、多忙を理由に事件受理を断ることはできません。「順番は待つので受理だけはしてほしい」旨を主張して受理してもらってください。
5.「証拠がない」と言われた場合
書類や画像、録音がなくても、メール、目撃者や参考人の証言、電話の着信歴、自分の日記や書き置き、店のレシート、銀行取引明細なども立派な証拠になります。これらの証拠がない場合でも、警察によって収集できる可能性がある証拠(防犯カメラ画像、Nシステム車両走行状況、(犯人の)銀行口座明細、交通系カードによる電車等利用情報など)があるかもしれません。「証拠がない」と言われたら「受理して探してください」と言って、これらを例示してください。
6.「犯人が見つかりそうにない」と言われた場合
逃亡したり隠れたりしている犯人を捜し出すのは警察の重要な仕事のうちの一つです。事件を受理しない理由にすることはできません。現役時代に長期間居場所のわからない犯人の事件を扱ったことがありました。条件不足により指名手配ができなかったのですが、粘り強くその犯人の犯歴照会を続けた結果、別件で他署に逮捕されたことがわかり、本件で再逮捕したことがあります。「犯人がみつかりそうにない」と言われたら、この話をしてみてください。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
