準詐欺罪という検挙例が極めて少ない珍しい犯罪【元刑事が解説】

刑法246条で定められているのが、一般的によく知られている詐欺罪です。一方、あまり聞き慣れない犯罪として、刑法248条に**準詐欺罪(じゅんさぎざい)**があります。

「詐欺罪」と名前は似ていますが、両者には明確な違いがあります。

通常の詐欺罪は、正常な判断能力を持つ成人に対して、嘘や偽りの説明をして財物やお金を交付させることで成立します。いわゆる「人を騙してお金をだまし取る犯罪」です。

これに対して準詐欺罪は、未成年の子どもや知的障害のある方など、十分な判断能力がない人の判断力の弱さにつけ込み、金銭や財物を交付させた場合に成立する犯罪です。

準詐欺罪の成立要件

準詐欺罪の大きな特徴は、通常の詐欺罪のように「騙す行為(欺罔行為)」が必ずしも必要ではない点です。

刑法246条(詐欺罪)には「人を欺いて」という文言がありますが、刑法248条(準詐欺罪)にはこの表現がありません。

つまり、明確な嘘をついていなくても、

「○○ちゃん、おじさんにそのお金を少し貸してくれないかな」

このように言って、判断能力が十分でない子どもから現金を受け取れば、準詐欺罪が成立する可能性があります。

窃盗罪との違い

ここで注意したいのが、準詐欺罪と窃盗罪の違いです。

被害者に最低限の意思判断能力があり、自分の意思で財物を渡した場合は準詐欺罪となります。

しかし、会話が成立しないほど判断能力が失われている状態の人から財物を持ち去った場合は、「自由な意思による交付」とは認められません。この場合は準詐欺罪ではなく、窃盗罪として扱われる可能性が高くなります。

準詐欺罪の検挙事例が少ない理由

この準詐欺罪は、実務上ほとんど見かけない珍しい犯罪類型です。

私自身、32年間の警察人生で一度も実際の事件として見聞きしたことがありません。

その理由としては、いくつか考えられます。

1. 被害対象となるケースが少ない

小学生や判断能力に制約のある方が、多額の現金や高価な財物を単独で所持しているケースは多くありません。そのため、そもそも犯罪として成立しやすい場面が限られます。

2. 被害申告や事情説明が難しい

仮に事件が発生しても、被害者本人が警察官に対して状況を正確に説明することが難しい場合があります。

捜査では被害者供述の信用性が重要になるため、証拠関係の立証が難しく、立件のハードルが高い犯罪ともいえます。

3. 他の犯罪として処理される場合がある

ケースによっては準詐欺罪ではなく、窃盗罪や別の財産犯として処理されることもあり、結果として準詐欺罪として表面化しにくい面もあります。

まとめ|準詐欺罪は「判断力の弱さにつけ込む犯罪」

準詐欺罪とは、判断能力が十分でない人の弱みにつけ込んで財物を交付させる犯罪です。

一般の詐欺罪との違いは、「嘘をついて騙すこと」が必須ではない点にあります。

知名度は低いものの、社会的に弱い立場の人を狙う悪質な犯罪類型の一つといえるでしょう。

○警察への告訴状・告発状の作成は元警視庁刑事の行政書士にお任せください。こちら


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。

Profile Picture