準詐欺罪という検挙例が極めて少ない珍しい犯罪【元刑事が解説】
刑法246条は一般の詐欺罪です。刑法248条には「準詐欺罪」があります。あまり聞かない罪名かと思いますが、一般の詐欺罪が健常な成人を騙してお金などを交付させることで成立する犯罪であるのに対し、準詐欺罪は小学生などの子供や、知的障害者などの方にお金などを交付させることで成立する犯罪です。一般の詐欺罪は、正常な判断力を持つ人を言葉巧みに騙すことで成立するのですが、準詐欺罪は判断力に欠ける人に対してそこにつけ込んで財物を交付させることで成立します。準詐欺罪の条文には、一般詐欺罪の条文にある「人を欺いて」の言葉がありません。従って罪名には「詐欺」という言葉が入っているものの、必ずしも嘘を言って被害者を騙す必要はなく、「○○ちゃん、おじちゃんにそのお金ちょっとだけ貸してくれないかな」などと言って現金を受け取った場合でも本罪が成立します。ただし、会話が成立しないような状態の人から受け取った場合には、自由意思による交付とは認められないため、窃盗罪が成立します。
この準詐欺罪ですが、検挙や立件した事例が極めて少ないと言われています。私自身、32年間の警察人生で一度も見たり聞いたりしたことがありません。そもそも、小学生や知的障害のある方がまとまったお金や高価な物品を持っていることがほとんどないでしょうから、被害者になりにくいのです。さらに、万が一発生したとしても、小学生や知的障害者の方が、警察官等に対して事件内容を正確に説明できるかどうか怪しく、その供述にどこまで信憑性があるかが問題になる可能性が高いこともこの罪の検挙事例が少ないことの一因だと思われます。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
