「情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」成立よる告訴・告発の電子申請化の未来【元刑事が解説】
2025年5月16日、「情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立し、刑事訴訟法の改正内容が見えてきました。逮捕状、起訴状、供述調書などなど、これまでは紙に印刷していた捜査書類を大幅に改め、電子化してやり取りすることになります。告訴状・告発状も例外ではなく、改正後は電子申告が認められることになります。ただし、従前の「書面」「口頭」での申告も引き続き可能となります。同法の該当部分を記載します。
第241条第1項中「又は口頭で」を「若しくは口頭で、又は主務省令で定めるところにより電磁的方法(電子情報処理組織(検察官又は司法警察員の使用に係る電子計算機と告訴又は告発をする者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)により、」に改め、「これを」を削り。同項の次に次の1項を加える。
告訴又は告発は、犯罪事実、その犯人の処罰を求める旨並びに告訴又は告発する者の氏名及び住居又はこれに代わる連絡先(法人にあっては、その名称又は商号、代表者の氏名及び主たる事務所又は本店の所在地)を明らかにしてしなければならない。
これでは少々わかりにくいため、これを現行の刑訴訴訟法第241条に当てはめて記載します。
1 告訴又は告発は、書面若しくは口頭で、又は主務省令で定めるところにより電磁的方法(電子情報処理組織(検察官又は司法警察員の使用に係る電子計算機と告訴又は告発をする者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)により、検察官又は司法警察員にしなければならない。
2 告訴又は告発は、犯罪事実、その犯人の処罰を求める旨並びに告訴又は告発する者の氏名及び住居又はこれに代わる連絡先(法人にあっては、その名称又は商号、代表者の氏名及び主たる事務所又は本店の所在地)を明らかにしてしなければならない。
このように、ネットによるデータでの告訴・告発が可能になることと、これまで明示されていなかった告訴要件の一部が明記され、さらにこれも明示がなかった法人による告訴・告発が可能であることも明記されました。ネットによる告訴・告発ですが、単にデータを送信するだけで「受理」されるなら、事件性のない告訴や、要件を満たさない告訴も無制限に提出されてしまいますので、当然何らかの対策が行われるでしょう。予想されるのは、告訴人・告発人の身分を明らかにするため、身分証の画像と一緒に個人情報をシステムに登録し、告訴状・告発状データを送信。この時点では「仮預かり」または「審査中」の状態になり、審査の結果受理となれば「受理済み」として受理月日と受理番号が回答されます。問題は不受理の場合です。「不受理」と明示すると何かと問題が生じるので、捜査機関側としては「不受理」とは表示したくないはずです。「撤回」などの言葉が考えられますが、これはちょっと予測できません。
個人的には、どうせ改正するならもう少し踏み込んでほしかったと思います。具体的には、「受理」「不受理」について項を設け、「検察官又は司法警察員において、犯罪ではないことが明らかであると認められる場合には、その告訴・告発を不受理とすることができる」旨を入れてほしかったと思います。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
