告訴・被害届の取消しと示談【元刑事が解説】
告訴は刑事訴訟法に規定があり「犯罪被害者が犯人処罰を捜査機関に求める手続き」のことを言います。被害届は犯罪捜査規範に根拠があり「警察は犯罪による被害の届け出があった場合は被害届に記入を求めるか警察官が代書する」とされています。一方で、示談とは、法律の規定はなく、単なる当事者間の約束事となります。したがって、示談に警察官が直接関与することはなく、示談交渉は当事者同士が直接行うか、委任した弁護士を通じて行うことになります。示談書を交わしても、それは当事者間の契約ですから、原本を警察に提出する必要はありません(コピーの提出を求められることはあります。)
通常、示談は検察官の起訴前に行われることが多く、「告訴または被害届の取消し」若しくは「不提出」が示談金支払いの交換条件となるのが普通です。ここで極めて重要な点が、「絶対に示談金支払い前に告訴・被害届の取消しをしてはならない」ということです。特に親告罪(名誉毀損、侮辱、器物損壊、過失傷害等)の場合は、一度取り消した告訴の再告訴はできないとされていますし、被害届についても、実務上、一度取消願書を提出するとその取消願書を取消することは認められないのが普通です。告訴・被害届を取り消すと、検察官はかなりの高確率でその事件を不起訴とします。ここで、相手側が示談金を払わないからといって示談を取り消しても、不起訴の決定は覆りません。つまり、相手はお金を1円も払わない上に、刑罰も受けないことになり、被害者は完全に泣き寝入りすることになってしまうのです。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
