告訴と告発が混在する場合の告訴状・告発状の書き方【元刑事が解説】
例えば、医師免許のない偽医師が、患者に「医者です」と言って騙し、医業(治療行為)を行い、治療費を受け取った場合、医師法違反と詐欺罪の両方の犯罪が成立します。このように、一つの行為が二つ以上の犯罪(法令違反)に該当することを「観念競合」と言い、重いほうの罰則が適用されます(本件の場合は詐欺罪の10年以下の懲役)。
詐欺罪は被害者のある犯罪ですので、被害者が犯人の処罰を求める場合は「告訴状」を提出することになります。しかし、医師法違反は形式犯であり、被害者不在の犯罪なので、犯人の処罰を求める場合は、「告発状」を提出することになります。このような場合、被害者が訴え出る際、詐欺の告訴状1通と医師法違反の告発状1通と計2通作るのか、両罪をまとめて1通にするかが問題となります。
このようなケースの対応については、刑事訴訟法にも犯罪捜査規範にも記載が無く、2通作るか1通にするかの正解はないと思われます。ですが、2通にするのはあまり現実的ではなく、両方を記載して1通にまとめたほうが合理的だと思われます。書類のタイトルについては「告訴状」だけでよく、当事者欄への記載も「告訴人」「被告訴人」だけでいいでしょう。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
