被告訴人・被告発人の住所がわからなくても告訴・告発は可能ですか?【元刑事が解説】

 民事訴訟では、被告(訴えられる側)の住所がわからないと裁判所は訴状を送達することができません。といって裁判所で被告の住所を調べてもくれません。「公示送達」という方法もありますが、判決が出ても被告に知らせる方法がありませんので無意味になってしまいます。
 一方、刑事事件の告訴・告発については、被告訴人・被告発人の住所はおろか、氏名などが一切わからなくても提出は可能です。犯罪被害については、犯人がどこの誰かわからないことは普通のことであり、それを捜査するのが捜査機関として当然の役目だからです。
 したがって、告訴状・告発状を作成する場合、被告訴人欄には、わかる範囲のことだけを記載すれば十分です。例えばよく行く居酒屋で顔なじみの常連客から被害を受けて訴えるなら
被告訴人
 住居 不詳(東京都品川区内)
 職業 自称不動産業
 氏名 自称 やまおか以下不詳
 年齢 50歳前後
 特徴 身長170センチメートルくらい、体格太め、黒縁眼鏡着用
などと記載すればいいでしょう。ネット上の犯罪などで犯人についての情報が一切無ければ「被告訴人不詳」とだけでOKです。
 なお、犯人が実在する他人になりすましていた場合、その他人を被告訴人として訴えると、その相手から「虚偽告訴罪」で訴えられる可能性がありますので、被告訴人の氏名等に確実性がないときは、頭に「自称」を付けるなどしたほうがいいでしょう。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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