告訴・告発事件の罪名変更送致【元刑事が解説】
例えば業務上横領の罪で警察が告訴状を受理し捜査を開始したとします。しかし、よくよく調べたら被告訴人には会社資金の管理権も占有権も無かったことが判明し、担当者を騙して送金させていたことがわかった場合、罪名が詐欺に変わることがあります。同様に業務上横領罪が背任罪になることもあります。このような場合、告訴状自体を訂正したり、差し替えたりは絶対にしません。一度受理されて警察の受領印が押された告訴状原本は絶対的なものなので、そのままの状態で検察庁に送致しないとなららないからです。
ではどうするかと言えば、告訴人から「告訴状罪名変更願(届)」を作成して(通常警察側で作成します)提出してもらい、既に告訴人供述調書が作成済みの場合は、新たに詐欺罪の内容で告訴人調書を作成します。警察側では、罪名を変更して送致することになった経緯を記載した「送致罪名変更捜査報告書」を作成します。
注意しないといけないのは、公訴時効期間が同じ罪から罪への変更なら良いのですが、業務上横領→背任、業務上横領→(単純)横領などの場合は、公訴時効期間がそれぞれ2年短くなるので、罪名変更した瞬間に公訴時効完成なんていうことになると大変なことになります。もしもそのような事態になったら、検察官に土下座してでも、元々の罪名で送致させてもらうしかありません。当然、真実とは異なる罪名で送致するのですから100%不起訴になるでしょう。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
