社員・従業員の使い込み・横領が判明したときの対応方法【元刑事が解説】
企業経営者や店舗オーナーにとって、社員や従業員による横領・使い込みの発覚は大きなリスクです。実際、従業員が30人もいれば、そのうち1人くらいが何らかの形で会社の資産や商品、備品に手を付けている可能性があると考えておくべきです。
深川警察署に勤務していた当時、ある新聞販売店の店長が「配達員に売上金を横領された」といって相談に来たので、その配達員を逮捕したことがありました。それから1年半ほど経ち、その新聞配売店のオーナーが相談に来て、その店長が店の売上金を持ち逃げしたということでした。
1.まずは証拠資料の確保が最優先
従業員の横領が判明した際に最初に行うべき対応は、証拠の収集です。
もし社員本人が不正を認めた場合は、次の内容をできるだけ早く聴取・記録してください:
- 横領の期間
- 横領した総額
- 手口・手段(振込・現金持ち出しなど)
- 偽装工作や隠蔽の方法
- 横領金の使途先
- 共犯者の有無
これらを基に、「自認書(自白文書)」を本人に自筆で書かせることが重要です。自認書には、「私は○年○月から○月まで、○○○円を○○の方法で横領しました」など、具体的な内容を明記させましょう。署名と作成日も必ず記載させてください。
※なぜ早急に対応する必要があるかというと、多くのケースで社員は解雇が決定した途端、連絡が取れなくなるためです。
2.解雇か継続雇用か、判断のポイント
不正が明らかになった後、**「解雇」「辞職扱い」「継続雇用」**のいずれとするかは、会社側の判断になります。
私の経験では、一度でも会社の金銭に手を付けた社員を継続雇用するのは非常にリスクが高いです。再犯の可能性も高く、他の従業員への悪影響も避けられません。
金額の大きさ、回数、これまでの勤務態度などにより判断は変わるかもしれませんが、横領が事実である場合は、基本的に退職・解雇とするべきと考えます。
3.示談交渉か刑事告訴かの選択
次に問題となるのが、「被害弁済を求める示談」か「警察への告訴」かの選択です。
示談にする場合
- 被害者(会社)は、加害者(社員)に分割での返済を求めることが可能です。
- この際、返済能力の有無(定職についているか)を見極める必要があります。
- また、書面で返済契約を結び、親族(両親・兄弟など)を連帯保証人とすることが重要です。
告訴する場合
- 警察への被害申告を行う場合、自認書の有無が重要なポイントになります。
- 自認書があると警察が告訴を受理しやすくなります。
なお、示談にして処罰を求めない選択をすると、他の社員に「この会社は甘い」と思われ、組織風土に悪影響を与える可能性が高いため、経営判断として慎重に行う必要があります。
社員・従業員の横領が発覚したら、専門家への相談を
社内不正への対応を誤ると、企業の信頼や組織の秩序が大きく損なわれます。使い込みや横領などの不祥事が発覚した場合は、速やかに専門家(弁護士や元警察官など)に相談し、適切な証拠保全と対応を行うことが重要です。
社員・従業員が30人もいれば、そのうちの一人くらいは何らかの形で会社(店舗)の資産や商品、備品に手を付けていると考えていいと思います。現役刑事時代、それほどに社内不正(横領)の訴え出や相談は多かったです。深川警察署に勤務していた当時、ある新聞販売店の店長が「配達員に売上金を横領された」といって相談に来たので、その配達員を逮捕したことがありました。それから1年半ほど経ち、その新聞配売店のオーナーが相談に来て、その店長が店の売上金を持ち逃げしたということでした。
1.証拠資料を収集する
社員が犯行を認めたなら、できるだけ早く、横領期間、横領総額、横領方法、偽装工作(穴埋め)内容、横領金の使途先、共犯者の有無などを聞き出し、本人に自認書(私は、いつからいつまで、○○○金を○○○して自分の口座に振り込む方法で横領しました等)を自筆で書かせてください。本人の署名と作成日を忘れずに記載させてください。なぜ「できるだけ早く」としたかというと、ほとんどの場合、こうした社員は自分の解雇が決定すると二度と出社せず、電話にも一切出なくなることが多いからです。
2.解雇判断
本人を解雇するか、辞職扱いとするか、継続雇用とするかは経営者の判断になります。私の経験では、継続雇用とした場合、再度同様のことをする可能性がかなり高いです。横領の金額や回数、これまでの会社への貢献度などにより個別判断にはなるかと思いますが、現金に手を付けた場合は、辞めさせるべきだと考えます。
3.示談か告訴か
被害金を分割弁済させるか、警察に届け出るかを選ばないとなりません。返済させる場合は、相手に定職に就く意欲・能力の有無が問題となります。警察に被害申告した場合は、逮捕されて懲役に行くことになり、本人は働けませんから必然的に返済はゼロということになります。
分割返済させる場合は、書類を交わすのは当然のこと、必ず親や兄弟などの保証人を求めて下さい。
警察に告訴する場合は、1で挙げた「自認書」の有無が重要となります。これがあるとないとで警察の受理可能性が全然違います。
なお、示談にして刑事罰を求めなかった場合、残った社員たちには「この会社は会社の金に手を付けても甘い処分をする組織なんだ」と思われ、その話は長らく伝えられていきます。会社経営上、非常に良くないことです。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました。
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。


