告訴状に期待できる効果(告訴状作成のメリット)【元刑事が解説】
1.送致率100%、不起訴でも相手は前歴1件に
告訴状が受理されると警察は何があっても事件(被告訴人)を検察庁に送致(マスコミ用語でいう送検)しないとなりません。最終的に検察官が事件を不起訴とした場合であっても、送致前に警察官は被告訴人を呼んで取り調べますし、逃亡や証拠隠滅の可能性があれば逮捕します。これにより警察での前歴1件となるので、相手に対して一定のダメージを与えることができます。一方、被害届では警察には送致義務が生じないため、捜査の結果、事件性が認められなければ、署長までの「不送致決裁」を取って事件は不送致とされます。
2.警察は慎重かつ精密に捜査します
被害届と違い、告訴事件は送致前に検察官による非常に厳しい審査があり、その審査を通過しないと送致させてもらえないため、警察は、通常の事件よりもより緻密に、一層念入りな捜査をします。被告訴人の取調べも、巡査や巡査部長ではなく係長(警部補)が担当することがほとんどです。
3.「被害届」と「告訴」の言葉の重みの違い
被害届と告訴では、警察に受理されたことを知ったときの相手の受けるイメージは全く異なります。当然「告訴」のほうがはるかに大きく重く感じることでしょう。
4.民事上の請求を有利に進められます
手元に完成した告訴状があり、いつでも警察に提出できる状態にあれば、相手に対する被害弁済や示談の交渉を有利に進めることができるでしょう。※重要:「金を払わないと警察に告訴する」は判例上、濫用した場合は脅迫になる可能性が示唆されています。過度な利用にはご注意ください。
5.検察官の対応も慎重
検察官も告訴状作成には、告訴人の手間と費用がかかっていることを十分承知していますので、一般事件よりはずっと慎重に対応・捜査します。起訴・不起訴の決定後、その内容は文書により告訴人に通知されます(刑事訴訟法上の検察官の義務です)。
刑事事件に巻き込まれたとき、「告訴状の提出にはどんなメリットがあるのか?」「被害届との違いは?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、元刑事の視点から告訴状の効果やメリットを具体的に解説します。加えて、被害届との違いや、民事・刑事両面での活用法についても紹介します。
1. 告訴状は送致率100%|不起訴でも「前歴1件」が残る
告訴状が警察に受理されると、原則として事件は必ず検察に送致(送検)されます。これは被害届との最大の違いです。たとえ最終的に不起訴となった場合でも、警察は被告訴人(相手)を取り調べ、逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合は逮捕する可能性もあります。
この一連の流れにより、相手は警察の記録上「前歴1件」として登録され、一定の心理的・社会的ダメージを受けることになります。
✅ ポイント:被害届では警察に送致義務がないため、「不送致」として終わるケースも少なくありません。
2. 告訴事件は警察が慎重かつ丁寧に捜査
告訴状を提出すると、警察はより慎重に捜査を行います。なぜなら、告訴事件は検察官の厳しい審査を経て送致されるためです。
通常の事件に比べて、緻密な捜査や証拠収集が行われ、取り調べも巡査ではなく警部補クラスのベテラン捜査官が担当することが多くなります。
3. 「被害届」と「告訴」では相手に与える心理的プレッシャーが違う
同じように警察に提出する書類でも、「被害届」と「告訴」では重みが全く異なります。
「告訴された」と知った被告訴人にとっては、社会的信用や立場への影響が非常に大きく、強いプレッシャーとなります。この心理的効果も、告訴状提出の大きな利点といえるでしょう。
4. 民事での示談交渉を有利に進められる
手元に作成済みの告訴状があることで、相手との示談や損害賠償の交渉を有利に展開することが可能です。
相手に対し、「いつでも警察に告訴できる」という状況は大きな交渉材料となり、被害弁済を受けやすくなる場合があります。
⚠ 注意:「金を払わなければ告訴する」と過度に主張すると、脅迫に該当する恐れがあります。あくまで合法的な範囲での利用が前提です。
5. 検察官も真剣に対応する|告訴人には正式な通知あり
告訴状の作成には費用と手間がかかるため、検察官も一般事件よりも慎重かつ丁寧に取り扱う傾向があります。
さらに、刑事訴訟法により、起訴・不起訴の結果は文書で告訴人に通知される義務があり、透明性のある対応が期待できます。
まとめ|告訴状は「刑事・民事」両面で有効な武器
告訴状の提出は、単なる書類ではなく、相手に対する強力な法的手段となります。警察や検察の対応を引き出すだけでなく、民事での損害賠償請求を円滑に進めるための交渉ツールとしても活用できます。
**「泣き寝入りしたくない」「相手にきちんと責任を取らせたい」**という方は、専門家のサポートを受けて、告訴状作成を検討してみてはいかがでしょうか。
淺利 大輔
あさり だいすけ
行政書士淺利法務事務所 代表
私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。
