東大卒のノンキャリア警察官の話

「東大卒や京大卒の警察官」と聞くと、多くの人は警察庁採用のキャリア警察官を思い浮かべるでしょう。実際、東京大学・京都大学などの難関大学卒業者が警察庁に入り、将来の幹部候補としてキャリアを歩むケースはよく知られています。

しかし、実は警視庁にも東大卒・京大卒のノンキャリア警察官は存在します。

警視庁は約4万6000人もの職員を抱える日本最大級の警察組織です。そのため、ごく少数ながら難関大学出身のノンキャリア警察官がいるのです。

私が警視庁捜査二課に勤務していた当時、実際に東京大学法学部卒のノンキャリア刑事がいました。

警視庁捜査二課にいた東大卒の巡査部長

そのA刑事は、私と同じ巡査部長でした。

非常に温厚でいつもニコニコしている人物で、周囲からの信頼も厚く、いかにも「できる人」という印象でした。警察学校も優秀な成績で卒業し、巡査部長昇任試験にも一発合格。まさに東大卒らしい優秀さを発揮していました。

さらに、パソコンが趣味で、自ら捜査書類のフォーマットや入力システムを作成し、同僚刑事たちに配布して業務効率化に貢献していました。こうした実務能力の高さから、周囲の評価も非常に高かったのです。

当時、東京地方検察庁の検事の中に、A刑事と東大の同期だった人物がいたそうですが、その検事はこう話していたそうです。

「Aは自分より成績が良かったのに、なぜ警察庁ではなく警視庁に行ったのだろう」

それほど優秀な人物だったのです。

優秀でも昇任したくない警察官はいる

一般の方には意外かもしれませんが、警察官の中には昇任を望まない人が一定数います。

巡査部長までは比較的メリットが大きいポジションです。巡査時代より給与が上がり、雑務も減る一方で、責任の増加はそこまで大きくありません。

しかし、その上の警部補になると状況は大きく変わります。

  • 管理責任が一気に重くなる
  • 幹部からの叱責が増える
  • 部下指導の負担が増える
  • 現場の自由度が減る

そのため、あえて巡査部長で昇任を止める警察官は珍しくありません。

A刑事は優秀すぎるために「警部補になるのは割に合わない」と計算したと思われます。

警部補昇任試験で“わざと不合格”になる東大卒刑事

当時の警視庁では、警部補昇任試験は受けたくなくても事実上強制受験でした。

A刑事は非常に優秀だったため、一次試験の**マークシート式(5択ショートアンサー)**では毎年ほぼ満点レベルで合格していました。

ところが、二次試験の論文になると事情が変わります。

昇任したくないため、わざと内容のひどい論文を書いて不合格になっていたのです。

ところが、ある年に事件が起きます。

いつものように一次試験は高得点で突破。しかし、二次試験の論文を書くこと自体が面倒になったのか、まさかの白紙で提出してしまったのです。

当然ながら、この行為は人事部門から捜査二課幹部に報告され、激怒した捜査二課管理官から厳しく叱責されたそうです。

最終的に“無試験昇任”で警部補へ

この一件以降、A刑事は対策を変えました。

今度は一次試験そのものに通らないよう、わざと間違った回答をマークするようになったのです。

しかし、それでも周囲はA刑事の能力を高く評価していました。

捜査二課幹部としては、

「これほど優秀な人材を巡査部長のままにしておくのはもったいない」

と考えたのでしょう。

結果として、A刑事は**警部補昇任選考選抜(試験ではなく推薦による昇任制度)**に推薦され、本人の意向に反して警部補へ昇任することになりました。

東大卒だからキャリア警察官とは限らない

「東大卒=警察庁キャリア」というイメージを持つ方は多いですが、実際にはそうとは限りません。

  • 東大卒でも警視庁のノンキャリア警察官になる人はいる
  • 優秀でも昇任を望まない警察官はいる
  • 警察組織では能力だけでなく本人の価値観もキャリアに影響する

警察官のキャリアパスは、外から見るほど単純ではありません。

東大卒の超優秀刑事が、昇任したくなくて試験でわざと落ちる。

そんな意外な実話も、警視庁という巨大組織では実際に起こるのです。

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淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、2024年6月までの32年間、警視庁警察官として勤務し、そのうち25年間を刑事として告訴・告発事件の捜査に携わってきました
中でも、告訴・告発を中心に扱う知能犯捜査の経験が最も長く、数多くの事件で、実際に告訴状・告発状を受理し、捜査を進めてきました。
刑事部捜査第二課在籍時には、警視庁本庁舎(霞が関)の聴訴室において、告訴状を持参される弁護士の先生方と日々向き合い、
「事件として受理すべきか」「問題点は何か」
その現場の判断基準を、実務の中で徹底的に学び、鍛えられてきました。
だからこそ私は、警察が何を重視し、どこを見て告訴状を判断するのかを、初期段階から具体的に想定しながら作成することができます。
告訴・告発事件については、刑事の中でも専門性を持って取り組んできた分野であり、強い自負があります。
現在は、千葉県犯罪被害者支援センター会員として、
「費用面で弁護士への依頼をためらっている方」
「警察に何度も相談したが、前に進めずにいる方」
そうした犯罪被害者の力になりたいとの思いから、行政書士として告訴状・告発状の作成支援を行っています。
実際に、
「告訴、受理されました。淺利さんにお願いして本当に良かったです」
というご連絡をいただく瞬間が、何よりの喜びであり、この仕事を選んで良かったと心から思う瞬間です。
警察の内側を知る行政書士として、
“受理される可能性を高める告訴状・告発状”を、本気でサポートします。

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