警察内部の不人気部署TOP3【元刑事が解説】

不人気部署第三位:知能犯捜査係
 知能犯捜査係は、詐欺、横領、業務上横領、名誉毀損、公正証書原本不実記録、不動産侵奪、背任、特別背任、贈収賄、偽札などの知能犯罪の他、公職選挙法違反も扱います。またこれらの罪種の告訴・告発事件も多く、以前私が勤務した警視庁麹町警察署知能犯捜査係では、一時期未処理の告訴・告発事件が20件を超えたこともありました。告訴・告発事件は難解で複雑な事件が多く、一つの事件を処理するのに何か月もかかります。それなのに毎週のように新規の告訴・告発事件の相談が来るので、全部受理していたらパンクするのが目に見えています。そのため、受理の審査は極めて厳しいものとなります。これに加えて、特殊詐欺の発生は未だに収まりません。特殊詐欺被害が1件発生すると、被害届を受理して捜査をするのは当然ですが、本部捜査二課への報告、使用された口座の凍結・照会、犯人が使った電話番号の通話明細差し押さえの令状請求等、やることが山盛りです。これもまた毎週のように発生するので、知能犯の仕事は誰もやりたがらないのです。

不人気部署第二位:交通捜査係(通称事故捜)
 交通課内で、交通事故を扱う係です。交通事故は、早朝深夜、雨の日、雪の日、台風の日、いつでもどこでも発生しますが、どんなに悪天候であっても、通報があれば現場に行って実況見分をしないとなりません。しかも交通事故は一つの警察署内で毎日数件は絶対に発生します。管内が広い警察署では、事故現場から事故現場まで行くだけでも大変です。署に帰ってきたら、当事者の調書を作成し、図面を書き、事件を地検交通部に送致しないとなりません。交通捜査係を希望する警察官は極めて希で、希望すると「あいつは頭おかしいんじゃないの?」などと陰口を言われます。

不人気部署第一位:留置係(看守)
 警視庁の警察署の留置施設内には、常時十数人から30人くらいの被疑者が収監されています。全員がおとなしければいいのですが、そうはいきません。ヤクザもいれば、精神的な問題を持った人もいますし、日本語が全く分からない外国人もいます。外で何らかの問題を起こしてきた人たちですから、留置施設の中でも問題を起こしてくれます。言うことを聞いてくれる人もいますが、全く聞いてくれない人もいます。そして、過半数は何らかの持病を持っているため、診療を受けさせたり、薬ももらってこないとなりません。そこまでしても、病死したり、自死する人もいて、そのときの看守は責任を問われることがあります。風呂に入れさせる必要もありますし、洗濯もしないとなりません。メシが不味いという文句はしょっちゅうありますが、予算が絡むことなので、看守にはどうすることもできない相談です。押送といって検察庁に護送に向かうバスは早朝に来るので出勤時間は早く、このバスが帰ってくるのが遅いので帰宅も遅くなります。
 警察署の留置係を希望する人はほぼいません。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

Profile Picture