刑事部の鑑識と交通部の鑑識は別組織です【元警視庁刑事のコラム】

 ニュースや刑事ドラマなどで、刷毛でパタパタアルミ粉末を振って指紋を顕出しているのは、「刑事」の鑑識係員です。一方、重大死亡事故現場やひき逃げ事件の路上で壊れた自動車の破片などを拾い集めているのは「交通」の鑑識係員です。両方共に「鑑識」の名前ですが、大元の組織が「刑事」と「交通」で別なので、全く異なる組織です。
 「刑事」の鑑識係員は、「刑事」になるための講習を終えて、交番勤務員から鑑識係員になった警察官です。都道府県警本部の鑑識課に所属するほか、各警察署にもいます。以前は「鑑識講習」があって、刑事講習とは別でしたが、現在は統一されました。したがって、一度は鑑識になっても、その後刑事になる警察官もいます。逆もまたあります。「刑事」の鑑識は、刑法犯等の犯罪についての鑑識活動(指紋顕出、足跡採取、遺留微物採取、写真撮影、血痕顕出等)を行うほか、変死の取り扱いでも活躍します。また、被疑者の写真撮影、指紋採取、DNA採取も行います。警察犬も鑑識課の担当です。
 「交通」の鑑識係員は、警察署にはいません。各都道府県警察の本部に所属しています。管轄の都道府県内で、重大死亡事故やひき逃げ事件があったときに現場に臨場し、自動車の破片などを採取するなどして、警察署の交通課員を手助けします。講習はないので、警察署で交通捜査を担当していた警察官がなることが多いです。
 まとめ
 このように、刑事の鑑識と交通の鑑識は、同じ鑑識でも扱う事案は全く別です。ですが、元々は同じ交番勤務の「お巡りさん」であり、「警察官」であることに違いはありません。


淺利 大輔

あさり だいすけ

行政書士淺利法務事務所 代表

私は、警視庁警察官として32年間勤務し、そのうち25年間刑事(捜査員)をやってきました。さらにその中でも知能犯捜査関係部署(主として告訴・告発事件を捜査する部署です)の経験が一番長く、数々の告訴・告発事件に携わってきました。刑事部捜査第二課員当時は警視庁本庁舎(霞が関)1階にある聴訴室で、電話帳のように分厚い告訴状や告発状を持参して来られる弁護士先生方を毎日のように相手にし、ここで大いに鍛えられました。
これまでの経験を活かし、告訴事件の相談を受け告訴状をリーズナブルな料金で作成することで、犯罪被害者の方たちを支援できるのではと考えたからです。
「淺利に頼んで良かった」依頼人の方からそう思っていただける行政書士を目指していきます。

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